土地の維持費はいくら? 内訳から計算事例、維持費を減らす方法を解説
土地や建物は所有しているだけで維持費がかかります。代表的な維持費には、固定資産税や管理費用などがあります。土地に建物があると、固定資産税が安くなりますが、老朽化によって修繕が必要になったり、空き家から火災などが起き近隣トラブルに発展したりするケースがあるので注意が必要です。不動産コンサルティングマスターが土地の維持費の計算方法や負担を軽減する方法などを紹介します。
土地や建物は所有しているだけで維持費がかかります。代表的な維持費には、固定資産税や管理費用などがあります。土地に建物があると、固定資産税が安くなりますが、老朽化によって修繕が必要になったり、空き家から火災などが起き近隣トラブルに発展したりするケースがあるので注意が必要です。不動産コンサルティングマスターが土地の維持費の計算方法や負担を軽減する方法などを紹介します。
目次
私のもとを訪れるお客様の中にも、相続などで保有することとなった土地をどうして良いのかわからない、維持費ばかりかかって困っているなどの悩みを抱えた方は少なくありません。有効な活用策を考える前に、土地を維持しているだけでどのくらいの費用がかかるのか、理解しておきましょう。
土地を維持するには主に下記のようなコストがかかります。
それぞれの注意点を詳しく確認していきます。
毎年1月1日時点で土地を所有している個人及び法人に対して、固定資産税と都市計画税がかかります。土地所有者は、6月頃に届く納税通知書に従って税金を支払う必要があります。納税通知書には、固定資産税と都市計画税の評価額からどのように税額が計算されたのかが記載されています。
これらは地方税と呼ばれ、市町村(東京23区は東京都)などの自治体に支払う税金となります。3年ごとに固定資産の評価額(課税標準額)が算出され、その数字に税率をかけて計算されます。計算式は下記のとおりです。
固定資産の評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)
なお、住宅が建っている場合には税額の軽減措置が設けられています。小規模住宅用地(敷地面積が200㎡以下)の場合は固定資産税が6分の1に、都市計画税が3分の1になります。一般住宅用地(敷地面積が200㎡を超える部分)の場合は固定資産税が3分の1に、都市計画税が3分の2になります。
新築住宅の場合は、さらに固定資産税を3年間(マンションの場合は5年間)2分の1に減額されます。
遠隔地に所有していて管理が行き届かない土地の場合、草が生い茂って近隣に迷惑をかけてしまうことがあります。特に住宅地であれば景観が悪くなったり、不法投棄の温床となったりといったトラブルも懸念されます。そのため、年に何度か草刈りをする必要があります。放置すると自治体から整備の要請を受けてしまうこともあります。
面積によりますが、草刈りは業者に依頼すると坪単価で500円~1500円程度はかかると言われています。大きな木が生えている場合は、伐採、伐根、剪定などでさらに追加費用がかかる可能性があります。
土地だけを所有しているぶんには水道料金はかかりませんが、建物が残っている場合は水漏れに注意が必要です。給湯器や配管が壊れて、水が漏れ続けることがあります。水道の使用契約をしていなくても、漏れ出た水道代は所有者が負担しないといけません。使用していない建物があれば、水道の元栓を閉めておきましょう。
建物を利用する場合、清掃時や賃貸内見時のために電気契約を残しておく必要があります。もし建物を利用する予定がないのであれば、漏電による火災の可能性を考え、電気契約は解約したほうが良いでしょう。契約が残っていると基本料金が請求されるので、費用削減のためにも早めの解約がお勧めです。
所有しているのが土地だけであれば火災保険は不要ですが、古家(空き家)が残っている場合は火災保険に加入したほうが良いでしょう。空き家は放火などによる火災リスクが高く、不法侵入者による盗難などのリスクもあります。万が一空き家で火災が起き、失火責任法によって所有者に重大な過失があるとみなされた場合、損害賠償責任が生じます。なお、損害保険会社によっては空き家が補償対象外なこともあるため、注意してください。
すでに述べたとおり、地方税は「固定資産の評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)」で算出されます。住宅が建っているケースでは税額の軽減措置があり、小規模住宅用地(敷地面積が200㎡以下)の場合は固定資産税が6分の1になります。
固定資産税評価額が500万円と1000万円の土地の場合、以下のようになります。
固定資産税評価額が500万円の土地
500万円×1.4%=7万円
※住宅が建っている場合|200㎡以下の場合:7万円×1/6=1万1667円
固定資産税評価額が1000万円の土地
1,000万円×1.4%=14万円
※住宅が建っている場合|200㎡以下の場合:14万円×1/6=2万3333円
所有している土地を放置すると、維持費がかかる以外に下記のようなリスクとデメリットがあります。
居住者がおらず、草刈りや柵の設置など適切な管理をしていない土地は荒れ放題となり、不法投棄がされやすくなってしまいます。粗大ごみや危険物などを捨てられると、土地の所有者が自ら処分せざるを得ない場合もあります。ゴミが腐敗し異臭を放っている、見た目がひどく景観を損なっている場合、近隣よりクレームが入って大きなトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
土地が荒れてしまったり、建物が老朽化したりすると、不動産価値が低下するデメリットがあります。
空き家になって時間が経っていない場合、建物を利用する前提で売却をすることも可能です。しかし長く放置された建物は、腐食や設備の故障などによってそのまま利用できないことが多いため、建物の価値がない前提で、解体費などを差し引いた価格でしか売却できなくなります。不法投棄されていた土地は、大量のゴミから出た油の処分や、ゴミ自体の撤去費用がかかることなどから、不動産価値が低下する恐れがあります。
また、倒壊しそうな空き家の場合、建物として再利用することが難しく、近隣の住民に危険が及ぶ可能性もあるため、速やかな解体が必要です。後述する特定空き家に指定されてしまうと様々なデメリットが発生するため、注意しましょう。
国土交通省が示す「衛生上有害となる」「倒壊などの保安上の危険がある」「放置することが不適切である」「著しく景観を損なっている」のいずれかに該当している場合、特定空き家に指定される可能性があります。
特定空き家になると住宅用地の特例措置の対象から外れるため、固定資産税は更地と同じ金額となります。また、自治体から解体や修繕などの措置をとるように指導、勧告、命令が出され、改善をしない場合は50万円以下の過料の対象となります。
土地の維持費を減らすには、「土地活用する」「売却する」「相続土地国庫帰属制度を活用する」といった選択肢が考えられます。
土地をうまく活用することで、維持費以上の利益が得られる可能性があります。土地のみの不動産と建物付きの土地に分けて、具体例を紹介します。
土地の場合
建物の場合
土地活用が難しい場合や、活用のための初期費用を捻出できない場合、売却も選択肢に入れると良いでしょう。土地の価格査定は不動産会社によって異なるため、売却を検討する場合は、1社だけでなく複数の不動産会社に査定してもらうことが大切です。
土地活用も売却も難しい場合、相続土地国庫帰属制度を利用する方法もあります。2023年4月に開始された制度で、不要な土地を国に引き取ってもらうことが可能です。価値の低い土地は売却が難しく、不動産会社に買取や仲介をしてもらえないケースも多々ありますが、そんなときに使える制度です。ただし、相続で引き継いだ土地のみが対象で、建物が建っていると利用できません。
土地の維持費は地域によって異なります。一般的に、田舎は都心部よりも固定資産税評価額は低くなりますが、実際の取引価格に比べると割高になる可能性があります。これは周辺の評価事例が少なく、広い範囲で鑑定されたものが採用されているためです。
山林の固定資産税は非常に低く、課税標準額が30万円に満たずに支払いが発生しないケースがほとんどです。ただし、都市部に近い山林や建物が建っている場合は宅地として評価され、固定資産税が発生するケースもあります。
火災保険料は、災害の発生しやすさや火災発生率などによって異なります。台風や豪雨などの災害が多い九州・沖縄地区はほかの地方と比べて火災保険料が高く、首都圏は比較的低い傾向にあります。
土地は更地の状態だと、固定資産税の優遇を受けられません。そのため固定資産税においては、建物付き土地のほうが維持費を抑えられます。ただし、建物付き土地の場合は火災保険をかけるのが一般的であるため、火災保険料と固定資産税の額を比較することが重要です。
また、建物が特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇を受けられない、自治体から修繕勧告を受ける、といったことがあります。建物の状態を見て、更地にすべきか建物付きの状態で維持するか判断しましょう。
相続した土地を何もせずに放置してしまうと、固定資産税や草刈り費用、建物がある場合は火災保険料などが発生します。もとからある建物を有効活用するのも良いですし、更地にして新しい活用法を見いだすことも一つの手段です。どのように活用するか迷っている場合は、相続会議の土地活用サービスをぜひご利用ください。
(記事は2023年4月1日時点の情報に基づいています)