相続した実家をアパート・マンションに建て替える メリット・デメリットは
空き家になった実家の活用方法のひとつに、アパートやマンションなどに建て替えて賃貸するという手法があります。建物も新しくなり、入居率が維持できれば安定した家賃収入を得ることができるので、家計に余裕ができたり、将来の自分年金としても役立てられます。 今回は、実家を建て替えて賃貸する場合のメリットとリスクや具体的な手法について解説をします。
空き家になった実家の活用方法のひとつに、アパートやマンションなどに建て替えて賃貸するという手法があります。建物も新しくなり、入居率が維持できれば安定した家賃収入を得ることができるので、家計に余裕ができたり、将来の自分年金としても役立てられます。 今回は、実家を建て替えて賃貸する場合のメリットとリスクや具体的な手法について解説をします。
相続した実家は、誰も住む予定がなくても愛着があるので売りたくはない、そんなときに活用が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
空き家になった実家の活用方法で最初に思いつくのは、そのまま貸家として賃貸するという方法です。
新しくきれいな家であれば、ほとんど手をかけずにそのまま賃貸できる可能性がありますが、実家の空き家の場合、すでに相当な築年数が経ち老朽化しているも建物も少なくありません。
そのような建物を賃貸するためには、内外装や設備のリフォームをしなければならないことも多く、リフォーム費用が負担になります。
特に、1981年5月31日以前に建築された住宅の場合、現行の耐震基準を満たしていない可能性が高く、耐震診断をした上で、耐震改修を行うこともあります。
また、リフォームや耐震改修をしても、元々建物が古いため、今後どれくらいの期間、賃貸経営が続けられるかも分かりません。リフォームの内容によっては、かけた費用の元が取れないという心配もあります。
このような場合、立地の良さや土地の広さなどの条件が整っていれば、建物を取り壊して新しくアパートやマンションなどの賃貸住宅を建築するという選択肢もあります。
新しく賃貸住宅に建て替えた場合のメリットには次のようなものがあります。
①土地利用の最適化…専用住宅は敷地にゆったりと建てていることも多いですが、賃貸住宅を建築する場合は、敷地の広さや形状、接道などの状況に合わせて設計・建築をするので、空間に無駄が少なく土地の有効活用ができます。
②キャッシュフローの確保…賃貸経営の一番の魅力は、安定した賃料収入が得られることです。経費を差し引いた後のキャッシュフローは、副収入や、自分年金として老後の生活費の足しにもなります。
③レバレッジ効果…アパート・マンションローン(以下、ローン)が利用できれば、少ない自己資金で賃貸経営を始めることが可能です。
④土地を残せる…心理的に効果が高いのは、やはり土地を残せることです。しかも建物が新しくなり、管理も不動産会社が行うので、維持管理の手間ひまを大幅に減らせます。
⑤相続税の節税効果がある…賃貸住宅が建っている土地は「貸家建付地」として土地の相続税評価額が低くなります。また、建物も「貸家」の評価となるので自家用建物よりも評価額が3割下がります。
メリットの多い賃貸経営ですが、当然ながら賃貸経営特有のリスク・デメリットもあります。
①入居率リスク…新築のうちは満室でも、古くなってくると入居率が落ちることもあります。空室が続くとローンの返済に支障をきたしかねません。
②賃料下落リスク…入居率が維持できていても、経年に伴い家賃は下落する傾向があります。
③滞納リスク…入居者の経済状態が悪化すると家賃を滞納するケースがあります。なかには、家賃滞納のまま夜逃げをされる恐れもあります。
④金利上昇リスク…現在は金利水準が低いため、低い金利でローンの借入れができますが、
今後金利水準が上昇すると、金利の見直し時には金利が高くなり、毎月返済額が増額になる可能性があります。
⑤災害・事故リスク…最近は大きな災害も多く、所有物件が被災する可能性もあります。
⑥入居トラブル…入居者同士のトラブルにより苦情があったり、退室が発生することもあります。
⑦事業承継者の問題…一般的にローンを借入れする際には、配偶者や子が事業承継者として連帯保証人になります。そのため、家族の理解と協力は必ず必要になります。
⑧流動性の低さ…更地などと比べて、賃貸住宅が建っている土地は将来売りづらかったり、予想以上に安くしか売却できない可能性があります。長期保有を前提としない場合は、賃貸住宅建築の選択は避けるべきです。
賃貸経営のリスクに対しては、対策を講じられるものもあります。入居リスクに対してはサブリースの利用、滞納リスクに対しては家賃保証会社などの利用、災害・事故リスクに対しては保険の付保、などが効果的です。
想定されるリスクを把握し、事前の対応(リスクコントロール)ができるかを検討しましょう。
具体的な空き家の活用事例を紹介します。
【家族構成】Aさん(50代男性会社員) 妻(50代)子(2人・大学生、高校生) 持ち家
【空き家の状況】父は20年前、母も7年前に他界。実家の土地建物はAさんが相続したが、相続以来空き家である。Aさんは月に1回のペースで実家の見回りに行くが、片道1.5時間かかり最近は疲れている。毎年の固定資産税等の支払い(約15万円)も負担になっていました。
【計画】アパート(メゾネットタイプ)3戸を建築
・建物:軽量鉄骨造2階建 メゾネットタイプ 2LDK2戸+1LDK1戸 駐車スペース3台分
・総事業費:4,500万円
・資金計画:アパートローン4,300万円と自己資金200万円
ローンは25年返済 10年固定特約型 当初10年の金利1.0% 11年目以降は2.5%で計算
・賃料:住戸部分 毎月34万円(3戸分) 駐車場 毎月4.5万円(3台分)
・その他:サブリースを活用(住戸は賃料の90%を受取り。駐車場は管理費5%(税別)を管理会社に支払い
【活用後】(概算)
・年間賃料 462万円(11年目以降は10%ダウンの415万円と仮定)
・ローン返済 ▲195万円(11年目以降は2.5%で計算 ▲216万円)
・維持管理費 ▲80万円(11年目以降 ▲75万円)
(維持管理費には固定資産税等、サブリース費用、管理費、修繕積立金を含む)
・差引収支 187万円(11年目以降119万円)
この事例のポイントは、いかに安全な経営ができるかという点です。
Aさんは会社員のため、当面はアパートのキャッシュフローを使う必要がありません。年間のキャッシュフローを使わずに積み立てた場合、13年後にはアパートローンを繰上げ完済することができます。ちょうどその頃年金生活に入る予定のAさん夫婦の自分年金としても利用ができます。ローン完済後は、仮に賃料が30%ダウンしても、経費差引後の純収益は約250万円確保できるという計画になっています。何よりも建替え前は定期的に実家に帰っていたAさんは、維持管理の時間コストがなくなったことについて喜んでいます。
賃貸経営には、メリット、デメリット(リスク)があります。
そのため、賃貸需要についての事前の調査と、賃料下落や金利上昇などを見込んだ厳しい事業計画の作成をした上での検討が必要です。
また、さまざまなリスクに対して、きちんと対策を打てるかは重要です。
そのうえで、リスクコントロールとリスクマネジメントがしっかりとできるのであれば、賃貸住宅への建替えは空き家活用の有力な手段のひとつになるでしょう。
(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)