目次

  1. 1. 遺言を残すメリットとは
  2. 2. 遺言書の種類
  3. 3. 専門家に依頼する

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遺言とは、被相続人(亡くなった人)が、自己の財産の処分方法などについて、最終的な意思を書面にして残したものを指します。遺言を残すメリットはいくつかあります。

一つは、遺産分割協議を行わなくてもよいことです。

遺言書がなく、法定相続分以外の割合で財産を分配する場合は、原則として遺産分割協議を相続人全員で行わなければなりません。協議がうまく進まず、調停や裁判に発展すると、相当な時間と費用がかかります。それまで円満であったとしても、家族関係も崩壊します。
また、相続人に連絡の取れない人がいる場合は、そのままでは協議を行うことができません。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるなど、対応する必要があります。

また、遺産の内容によっても協議が難航することが考えられます。遺産が金融資産だけの場合は平等に分けることが可能です。一方で、不動産については、持分を共有するより一人に相続させるケースが多いです。地方の不動産は、地域によっては需要が低くなり、買い手が見つからない物件が増えています。
現行の法制度では所有権の放棄は認められていないため、そのような物件であっても相続人のうち誰かが引き継ぐことになります。
使用しない土地や建物を取得すると、管理する義務が生まれるほか、固定資産税などの費用も負担することになるため、誰が取得するかを決めるのに時間がかかることがあります。

もう一点は、自分の意思で財産を分配できることです。

相続人の範囲や法定相続分は、民法で定められています。
まず、被相続人の配偶者は常に相続人となります。
配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第1順位は被相続人の子など直系卑属で、第2順位は被相続人の親など直系尊属です。第3順位は被相続人の兄弟姉妹です。
第2順位の相続人は、第1順位の相続人がいないとき相続人になり、第3順位の相続人は、第1順位の相続人も第2順位の相続人もいないとき相続人になります。なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。

また、法定相続分は以下のとおりです。
配偶者と第1順位の子などが相続人である場合は、配偶者1/2、直系卑属全員で1/2です。配偶者と第2順位の親など直系尊属が相続人である場合は、配偶者2/3、直系尊属全員で1/3です。配偶者と第3順位の兄弟姉妹が相続人である場合は、配偶者3/4、兄弟姉妹全員で1/4です。

遺言がなく、遺産分割協議をしない場合は、各相続人は法定相続分で遺産を取得します。私の経験では、遺産分割協議を行うにあたっては、法定相続分を前提として各相続人が財産取得を主張するケースが多いです。

遺産分割協議がうまくいかない原因に、相続人が不公平感を持つことが挙げられます。

「兄は大学に行かせてもらったのに自分は我慢させられた」
「他のきょうだいに比べて介護の負担が多かった」

考えていたよりも取得できる遺産が少なかったことをきっかけに、たまっていた不満が噴出することがあります。そうなると、円満な協議は難しくなります。

その点、遺言を残していれば、それまでの事情を考慮して、思い通りに遺産を分配することができます。また、家族への感謝などを付言事項として記すことができます。遺言の背景にある思いを伝えることで、遺族の気持ちも和らぐでしょう。以上のように、遺言を残すことで、「争続」を避けられる可能性が高くなります。

遺言はまず、大きく普通方式と特別方式に分かれます。特別方式は、病気や船舶遭難など、死亡の危険が急に迫っている場合に用いられる例外的な方法です。本記事では一般的に利用される普通方式の遺言を前提に説明します。

普通方式の遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言は、遺言者がその全文と日付及び氏名を自書し、印を押すことが必要です。代筆したものや、パソコンで作成した文書を印刷したものは無効です。

公正証書遺言を除く遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、「検認」を請求する必要があります。また、封印してある遺言書は、家庭裁判所で相続人などが立会ったうえで、開封しなければならないと定められています。

秘密証書遺言とは、内容を明かさず、公証人によって遺言の存在を確認してもらう方式です。こちらも検認が必要で、利用は限定的です。

検認とは、相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状や日付、署名の有無など、検認時点における遺言書の内容を明確にすることで、遺言書の偽造や変造を防止する手続きです。2020年7月からは、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。法務局で保管する自筆証書遺言は、検認は不要です。

状況に合わせて、どの形式で遺言を残すかを選ぶとよいでしょう。

遺言作成について弁護士や司法書士などの専門家に相談するメリットは、形式の不備を避けられることです。

遺言作成の報酬は、司法書士は5万円ほどから、弁護士は10万円ほどからを基本報酬とすることが多い印象です。報酬体系は事務所によって異なりますので、内容によって報酬が増減することもあるでしょう。

相続人の仲が悪かったり、特定の相続人に相続させたい財産があったりする場合は、紛争処理を多く取り扱っている弁護士に依頼したほうがよいかもしれません。

状況に合わせて、専門家への依頼を検討してみてください。

(記事は2020年12月1日時点の情報に基づいています)

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