目次

  1. 1. エンディングノートと遺言では法的な意味が全く違う
    1. 1-1. 終活とエンディングノート
    2. 1-2. エンディングノートと遺言の法的な効力の違い
    3. 1-3. 法的に有効な遺言とは
  2. 2. エンディングノートの内容は自由だが、法的な効力はない
  3. 3. 遺言書に書いておくべきこと
    1. 3-1. 推定相続人の廃除
    2. 3-2. 相続分の指定
    3. 3-3. 遺産分割方法の指定
    4. 3-4. 遺贈
    5. 3-5. 遺言執行者の指定
    6. 3-6. 祭祀承継者の指定
  4. 4. まとめ

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近年、人生の終わりに向けての活動、いわゆる「終活」が社会の大きな潮流となっており、エンディングノートに関心を持つ方が増えています。

エンディングノートとは、もしもの時に備え、自分自身や家族のために、自分の情報を一冊にまとめておけるノートのことです。複数の出版社から多種多様なエンディングノートが販売されています。自分が入院した時や他界した時には、ご家族がこのエンディングノートを参考にして行動することができますので、書いておくととても安心です。ただし、エンディングノートを書く前に知っておきたいことがあります。

それは、作成の仕方にもよりますが、エンディングノートには基本的に法的効力がないということです。そのため、エンディングノートに書かれた内容は、あくまでも家族や相続人に対する「お願い」にすぎません。これに対して、遺言書には基本的に法的効力があります。

エンディングノートと遺言書では、このような違いがあることは知っておいてください。法的に有効な形で自分の遺志を示したい場合には、エンディングノートとは別に、遺言書を作成しておく必要があります。

もっとも、いかなる遺言書であっても法的に有効というわけではなく、民法上で定められた方式に従って作成された遺言書に限られます。遺言書の方式は民法上多数規定されていますが、自筆証書遺言か公正証書遺言のいずれかの方式をとることがほとんどです。遺言書を作成する際は、いずれかの方式に従って作成すると良いでしょう。

自筆証書遺言とは、遺言者が手書き(自署)する遺言です。作成した遺言書は法務局で預かってもらうことが可能です。公正証書遺言とは、公証人が遺言書から聞いた内容を文章にまとめ、公正証書として作成する遺言です。基本的に公証役場に行って作成しますが、病院などに出張してもらうことも可能です。病気などで手書きが難しい場合でも、公正証書遺言なら作成できます。

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エンディングノートに書ける内容には制限がなく、何でも自由に書くことができます。例えば、コクヨのエンディングノート(「もしもの時に役立つノート」)では、資産(預貯金や保険など)、気になること(携帯やWebサイトのID、ペットなど)、家族・親族、友人・知人、医療介護(延命処置など)、葬儀・お墓、その他の事項(写真や大切な人へのメッセージなど)が目次として挙げられており、幅広い事項について記載することができます。

もちろんすべての事項を記載する必要はなく、家族に知っておいて欲しい事項だけをピックアップして記載することもできます。ただし、冒頭で書いたとおり、エンディングノートには法的な効力はありませんので、注意が必要です。

例えば、ある男性が世話になっている甥にすべての財産を残したいと考えているケースを考えます。その男性の法定相続人としては、その甥の他に、疎遠になっている妹がいました。この場合、その男性がエンディングノートに「甥にすべての財産を残したい」と書いていても、法的な効力がない以上、妹が相続分を主張すれば、甥と妹で遺産を2分の1ずつ分け合う形になります。遺言書に書いておけば、妹に遺留分はありませんので、その男性の希望どおり、甥がすべての遺産を取得することができます。

このように、エンディングノートだけを作成しておけば安心、というわけではありません。エンディングノートと遺言書は役割が違うので、上手く使い分けることが大切です。では、遺言書にはどのようなことを書けばいいのでしょうか。

遺言書は、記載しておけばいかなる事項であっても法的な効力が認められるわけではありません。そのため、法的な効力が認められる事項を踏まえつつ、書く内容を決めることが大切です。

法的な効力が認められるものとしては、例えば、推定相続人の廃除、相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈、遺言執行者の指定、祭祀承継者の指定などです。なお、法的な効力はないものの、家族への感謝や遺産の分け方を指定した理由などを書くこともできます。

推定相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人から虐待や侮辱等を受けたことを理由に、その人の相続権をなくす制度のことです。ただし、遺言書に書いておけば当然に相続権をなくすことができるわけではなく、家庭裁判所にこれを認めてもらう必要があります。相続権をなくすという強い効力があることから、裁判所も慎重に判断する傾向があり、認められるケースは決して多くはありません。

遺言がなければ民法上で定められた相続分(法定相続分)に従って遺産を分割することになりますが、法定相続分と異なる割合を指定することができます。例えば、相続人が子2人(長男と次男)の場合、法定相続分は2分の1ずつになります。しかし、例えば、同居して介護をしてくれたお礼として長男に多めに遺産を渡したい場合などは、長男に3分の2、次男に3分の1というように割合を指定することができます。

指定の方法には、いくつか種類がありますが、一般的なのは、特定の財産を特定の相続人に取得させることを指定するものです。

例えば、子が2人(長女と次女)で、遺産が自宅不動産と預貯金の場合を考えます。この場合、遺言がなければ、別段の遺産分割協議をしない限り、不動産も預貯金も子2人が2分の1ずつの割合で共有することになります。しかし、例えば、長女が自宅不動産に同居していたことを理由に長女に自宅不動産を残したい場合などに、長女に不動産、次女に預貯金を相続させるというように、分割方法を指定することができます。

遺言によって財産を譲り渡すことを遺贈といいます。相続人に限らず、第三者に遺贈することもできます。例えば、法定相続人ではない親族や友人・知人に財産を譲り渡すケースや公益的な活動をする法人などに財産を寄付するケースなどがあります。

遺言の内容を実現することを遺言の執行といいます。遺言書で、遺言の執行を任せる人物を指定することができます。

祖先の祭祀を主宰すべき者を指定することが可能です。指定を受けた者は系譜(家系図)や祭具(神棚や位牌、仏壇など)、墳墓(墓石や墓地)などの祭祀財産の所有権を取得することになります。祭祀承継者を巡る紛争は良くありますので、指定しておくことが望ましいでしょう。

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以上のとおり、自分の財産をどのように相続してほしいかについては、法的な効力のある遺言書に記載しておきたいものです。そして、せっかく遺言書を作成するのであれば、多少の費用はかかっても、トラブルを防止し、自分の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成することを第一に考えましょう。遺言書の作成を思い立ったら、まずは一度、弁護士に相談してください。依頼した方が良いと思ったら、早めに正式に依頼することをおすすめします。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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