公正証書遺言の「証人」は誰に頼むべき? 資格や費用、役割を解説
公正証書遺言を作成するときには「2人の証人」が必要です。自分で用意できない場合には公証役場などで紹介してもらうこともできますが、その分費用がかかります。また「証人になれない人」もいます。今回は、公正証書遺言の証人を誰に頼むべきなのか、必要な資格や欠格事由、証人になったときの役割や注意点を専門家がわかりやすく解説します。これから遺言書を作成したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
公正証書遺言を作成するときには「2人の証人」が必要です。自分で用意できない場合には公証役場などで紹介してもらうこともできますが、その分費用がかかります。また「証人になれない人」もいます。今回は、公正証書遺言の証人を誰に頼むべきなのか、必要な資格や欠格事由、証人になったときの役割や注意点を専門家がわかりやすく解説します。これから遺言書を作成したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
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「公正証書遺言」とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。公証人は法律実務の経験がある準国家公務員です。遺言者が自分で作成する「自筆証書遺言」よりも形式不備などで無効になるリスクが低く、原本を公証役場で保管してもらえるので紛失や偽造、変造などのリスクがありません。
ただし、公正証書遺言を作成する際には2人の証人の立会が必要です。証人を要するのは、遺言内容が本当に本人の意思を反映しているか、第三者の視点からチェックするためです。
つまり公正証書遺言を作成するときには、以下の合計4名が関わることになります。
なお「自筆証書遺言」の場合には証人は必要ありません。
証人は、基本的に遺言者が自分で用意する必要があります。公正証書遺言の作成を申し込んだら、公証人から「証人を2名用意してください」といわれるケースが多数です。
では、誰に証人を依頼すればよいのでしょうか?
実は公正証書遺言の証人になるために、特別な資格は不要です。おじやおば、いとこなどの親戚に依頼できるケースもあります。
ただし以下の人は遺言書の証人になれないので、注意しましょう。
未成年者
未成年者には充分な判断能力がないので、証人になれません。
推定相続人
将来相続人になる予定の人が遺言書作成にかかわると公正さを保てないので、証人になれません。
受遺者
遺言によって遺産を引き継ぐ受遺者本人も、相続人と同様の理由で証人になれません。
推定相続人、受遺者の配偶者や直系血族
推定相続人や受遺者の配偶者、親や祖父母などの直系尊属、子どもや孫などの直系卑属がかかわると遺言内容の公正さを保てないので、証人になれません。
公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人
公証人に近しい人がかかわるとチェック機能がはたらきづらくなるので、証人になれません。
証人になれない人を「欠格者」といいます。欠落社が証人になった場合、公正証書遺言は全体が無効になってしまいます。せっかく遺言書を作成しても意味がなくなるので、くれぐれも注意しましょう。
内容を秘密にしたまま、存在だけを公証役場で証明してもらう「秘密証書遺言」の場合にも、公正証書遺言と同様2名の証人が必要です。欠格事由も同じになので、参考にしてください。
上述したように、公正証書遺言の証人は基本的に遺言者自身で用意する必要があります。しかし、証人になってくれる人がみつからないといった場合には、公証役場や士業事務所に紹介を依頼することもできます。依頼先ごとに費用の相場をみていきましょう。
公証役場で証人を紹介してもらえます。証人として紹介してもらえる人がどういう人か、特に明確な決まりはなく、有資格者(専門家)に限られているわけではありませんが、自分で利害関係のない人を見つけられない場合には便利なサービスといえるでしょう。
ただしその場合、1人につき6000~7000円程度の費用がかかります。具体的な費用は公証役場によって異なるので、個別に確認してみてください。
公正証書の証人を弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することもできます。一般的には遺言書作成サービスとセットになっており、遺言書の作成サポートを依頼すると証人になってもらえるケースが多数です。
遺言書作成にかかる費用は行政書士の場合に5~10万円程度、司法書士の場合に5~20万円程度、弁護士の場合に20~30万円程度となるでしょう。
公正証書遺言の証人になれるのは相続に利害関係のない人なので、親族から選ぶのが難しいケースがよくあります。そんなときには信頼できる知人に依頼する方法もあります。知人であれば通常費用はかかりません。ただしお礼の気持ちで数千円や数万円程度払ってもかまいません。ケースバイケースで対応しましょう。
なお知人に依頼する場合には欠格事由にあてはまらないように注意してください。欠格事由のある人が証人になると公正証書遺言が無効になってしまいます。
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相続の相談が出来る弁護士を探す公正証書遺言の証人になったら、どのような対応が必要となるのでしょうか?
公正証書遺言の証人は、遺言書を作成する当日に公証役場へ行って、立ち会わねばなりません。親族や第三者へ証人をお願いするときには、あらかじめ公証役場へ来てもらう必要があることを伝えて了承をとりましょう。公正証書遺言の作成にかかる時間は30分~1時間程度です。
証人として公証役場へ行くときには、本人確認書類と印鑑が必要です。忘れないようにしましょう。
また、遺言者が入院中だったり、体が不自由で公証役場に行くことができなかったりする場合は、公証人が出張して公正証書遺言を作成しますが、その際には証人も出張することになります。
当日の流れは、以下のようになります。
公証人が公正証書遺言の内容を読み上げる
遺言書を作成する当日までに、公証人が遺言者本人から遺言内容についての希望を聞いて遺言書を用意しています。当日は、遺言者、証人2名、公証人が一堂に会する中で公証人が遺言内容を読み上げ、本人に伝えて意思確認をします。
間違いがなければ署名押印
公証人が読み聞かせた内容に間違いがなければ、被相続人と証人2名、そして公証人がそれぞれ遺言書に署名押印します。これで公正証書遺言が完成します。
完成した遺言書は公証役場で保管
公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、遺言者には写し(正本や謄本)が交付されます。
公正証書遺言の証人になった場合、後日トラブルに巻き込まれる可能性があるので、注意しましょう。
たとえば相続開始後、ある相続人が「公正証書遺言は本人の意思に反して無効」などと言い出したケースを考えてみてください。当事者間の話し合いで解決できなければ訴訟になる可能性もあります。すると、かつて遺言書の証人となった人が裁判所へ呼ばれて「どのようなかたちで本人の意思確認が行われたのか?」「本人の意識ははっきりしていたか?(認知症にかかっていなかったか)」などと質問されることもあります。
また、証人が故意や過失によって遺言書の問題点を見過ごしたまま署名捺印をしてしまうと、証人自身に責任が発生する可能性があります。つまり後に損害を被った人から損害賠償を請求されるリスクがあるので、そういったことのないよう十分に注意して遺言書に署名押印しましょう。
このように公正証書遺言の証人になった際は、遺言書トラブルに巻き込まれるリスクが0とはいえません。知識として知っておきましょう。
公正証書遺言の証人に欠格者を選んでしまったら、せっかく作成した遺言書が無効になってしまいます。また将来遺言書トラブルが発生したとき、証人が巻き込まれる可能性もあります。
自分で適切な証人を見つけられないときには、弁護士などの専門家に依頼する方法を検討しましょう。弁護士には守秘義務があるので、遺言内容が外に漏れる心配は不要です。後日、遺言書の有効性が問題となって裁判所への出頭が求められた際にも、適切に対応してもらえるでしょう。
遺言書作成の段階から専門家に相談していれば、適切なアドバイスを受けられてトラブルの芽をつむことも可能です。遺言書を作成するときには、まずは遺言内容や作成方法について弁護士に相談してみてください。
(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)
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