相続で必要となる残高証明書とは 取得方法や必要書類、発行日数、注意点を解説
遺産分割協議をするときや相続税の申告を行うとき、亡くなった人の預貯金の「残高証明書」が必要になります。残高証明書を取得するために必要な書類や手続きについて、ファイナンシャル・プランナーが解説します。
遺産分割協議をするときや相続税の申告を行うとき、亡くなった人の預貯金の「残高証明書」が必要になります。残高証明書を取得するために必要な書類や手続きについて、ファイナンシャル・プランナーが解説します。
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残高証明書とは、特定の日付の預貯金や有価証券、投資信託などがいくらあるのか金融機関が証明してくれる書類です。相続手続きでは、相続発生日(被相続人が亡くなった日)の残高を証明したものが必要となります。
なお、残高証明書には金融資産の残高が記載されていますが、預貯金の出入金の履歴まで記載はありません。そのため亡くなった人のお金を管理していた相続人が、他の相続人から預貯金の使い道に疑念をもたれたくないときは、履歴が分かる通帳も合わせて準備しておくとよいでしょう。
銀行の預貯金の残高証明書の見本は以下の通りです。請求者が指定した日(相続の場合は、相続発生日)における普通預金口座や定期預金口座の預貯金残高が記載されます。もしローンなどの債務があれば、その借入残高金額も記載されます。
亡くなった人(被相続人)の遺産を相続人が引き継ぐに当たり、最初にすべきなのは、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産をすべて洗い出し、その価値(評価額)を調べることです。それがわからないと、被相続人の遺産を相続人がどのように分けるかを話し合う遺産分割協議ができません。
その点、残高証明書があれば、どのくらいの金融資産があるのか正確に把握できるため、相続人同士の話し合いもスムーズに進めることができます。
遺産の総額が相続税の非課税枠(基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人の数」)を超えていたら、相続税の申告と納税が必要になるので、遺産の評価額を調べて、相続税がかかるかどうかを確認しなければなりません。相続税の申告時には、金融資産の正確な残高を税務署に示す必要があり、残高証明書を添付することで証明できます。
残高証明書を発行してもらうには、預貯金口座のある金融機関の窓口へ出向いて手続きを行います。同じ金融機関であれば、口座のある支店でなくても手続きが可能です。1つの支店に普通預金と定期預金がある場合は、残高証明書に両方の残高が記載されます。複数の支店に口座がある場合でも、1カ所で手続きできるのが一般的です。
残高証明書の請求は、相続人であれば単独で行うことができます。ほかの相続人の合意が必要なわけでもありません。また委任状があれば代理人でも申請することが可能で、弁護士などの士業や遺言執行者、相続財産管理人(相続人が誰もいないときに家庭裁判所が選任する)も発行の請求が可能です。
残高証明書を取得するには以下のような書類が必要です。
多くの金融機関で、被相続人・相続人の戸籍謄本の代わりに、法務局が発行した登記官の認証付き「法定相続情報一覧図の写し」で手続きすることもできます。また、相続人本人でない人が請求する場合は、相続人の委任状も必要です。
上記書類を窓口に提出すると、1~2週間くらいで手続き時に記入した依頼者の住所へ残高証明書が送られてきます。金融機関によっては窓口で受け取れるところもあります。
残高証明書の発行には手数料がかかります。主要銀行での2023年5月時点の金額は以下の通りです(いずれも税込み価格)。
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相続の相談が出来る司法書士を探す金融機関によっては、電話で被相続人が亡くなったことを伝えてからでないと窓口での手続きができないところがあります。手続き方法や必要書類なども金融機関によって異なることがあるので、まず口座のある支店に電話で問い合わせて書類や手順を確認してから窓口へ出向くのがよいでしょう。
相続の際、被相続人が保有していた預貯金は、亡くなった日の残高が評価額となるので、残高証明書には亡くなった日の残高を記載してもらいます。
定期預金の場合、残高証明書には元金の額が記載されますが、実際には被相続人が亡くなった日までの利息がつきます。現在のような低金利でも、預け入れた金額が大きい場合は利息額も多くなるので、残高証明書と同時に「経過利息計算書」も発行してもらいます。
残高証明書の請求をすると、金融機関は預金者の死亡を知ることになります。そうすると金融機関は亡くなった人の口座を凍結します。それを解除するには、遺言書あるいは遺産分割協議書、被相続人と相続人の戸籍謄本などが必要で、手続きに時間がかかります。その間に亡くなった人の葬儀費用や遺族の当面の生活費が不足するような場合は、相続人単独で一定額まで引き出せる「相続預金仮払い制度」の利用も考えられます。
口座が凍結されると、公共料金などの引き落としもできなくなるため、すみやかに引き落とし口座の変更をしなければなりません。
Q.相続税申告時、残高証明書の代わりに通帳を添付してもよいですか?
確かに預貯金の残高は、通帳に記帳されていればわかります。しかし、通帳のコピーでは、「他にも口座があるのでは?」と税務署に疑われてしまう恐れがありますので、残高証明書を取得しておく方がよいでしょう。一方で、残高証明書を発行すれば、その銀行・支店でのすべての口座をリストアップしてくれるため、税務署が疑う余地を減らすことができます。また、最近は通帳のないネット銀行を利用する人も多く、一般の銀行でも通帳を発行しないケースが出てきているため、残高証明書の必要性は高くなると思われます。
Q.どこの銀行に預金があるか分からないときはどうすればよい?
亡くなった人の生前の生活様式や行動パターンから推測して、金融機関に問い合わせするしかありません。公共料金や携帯電話料金の引き落とし先として、口座が分かることもあります。一方、同一の金融機関でどこの支店にいくつ口座を持っていたか不明である場合は、その金融機関の残高証明書を取得すればすべて把握することができます。なお、相続財産の調査は、弁護士や司法書士など専門家に依頼することもできます。
残高証明書の取得は、口座のある金融機関を相続人が把握していることが大前提です。亡くなった人の口座がどこにあるかわからないと、残高証明書を発行してもらうこともできません。また、遺産分割や相続税の申告・納税が終わったあとに預金が見つかると、手続きをやり直す必要も出てきます。ですから、どの金融機関に口座があるかということは、家族に伝えておく、あるいは親から聞いておくことが大切です。
相続手続きの第一歩ともいえる相続財産の調査は煩雑で手間がかかります。弁護士や司法書士、税理士など専門家に依頼をすれば、正確な調査を効率よく進めてもらえますので、相談してみるとよいでしょう。
(記事は2023年5月1日時点の情報に基づいています)
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