相続税の申告期限は10ヶ月以内

相続税の申告と納税の期限は、原則として「相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に定められています。例えば2020年2月5日に相続があったことを知った場合、2020年12月5日までに相続税の申告書を税務署に提出し、納税も済ませなくてはなりません。

被相続人の生前の収入などの状況によっては、相続税とは別に「準確定申告」という所得税の申告・納税が必要になる可能性もあります。こちらは「相続開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」が期限です。準確定申告については、前年分の確定申告書などを参考にしながら、死亡した年の1月1日から死亡日までの所得などを把握すれば申告できますので、4ヶ月以内という期限はハードルとしてそこまで高くないと考えられます。

しかし、相続税の場合は、被相続人が死亡日時点で保有していた財産や債務を全て確認した上で、相続人同士で遺産分割協議を進める必要があります。しかも、土地家屋の評価など、複雑な計算が必要となるので、時間がかかることが予想されます。税理士などの専門家に依頼をすれば、手続きをスピーディーに進めやすくなりますが、相続税の場合は相続人の動きに依存する部分が多くあります。相続人自身が相続財産をきちんと確認して遺産分割協議をしないと、税理士でも相続税の計算ができず、結果的に期限に間に合わなくなる恐れがあるのです。

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期限を過ぎた場合のペナルティー

それでは、10ヶ月という期限内に相続税の申告・納税が間に合わなかった場合はどうなるのでしょうか? ペナルティーとしてまず挙げられるのが、「加算税」「延滞税」という2種類の追徴税です。申告が遅れると、まずは本来納めるべきだった税額に対して原則15〜20%の割合で無申告加算税が課されます。さらに、納税が遅れたペナルティーとして日割計算で課されるのが、延滞税です。

これらのペナルティーだけでも避けたいところですが、他にも注意すべき点があります。それは、相続税の特例への影響です。相続税を軽減させる特例措置は複数存在しますが、「遺産分割協議書の写しを添付すること」が条件になっているものがあります。代表的なものが、「配偶者控除の特例」と「小規模宅地等の特例」です。

配偶者控除の特例は、1億6千万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までを配偶者が遺産相続すると非課税となる特例です。小規模宅地等の特例は、被相続人が居住または事業に使っていた宅地を相続したとき、その宅地の評価額を最大80%減額します。いずれも大きな節税効果を期待できる特例ですが、相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらなければ、特例を使うことはできません。結果的に、本来の税額よりも多い金額を納税することになるのです。

申告期限に間に合わなさそうな場合の対処法

期限内に遺産分割協議を終え、相続税の申告・納税も済ませるのが一番ですが、思うように進まないこともあるでしょう。そのような場合の対策について、ここから説明をします。もし10ヶ月以内に財産の確認や遺産分割協議が終わらなかったとしても、「期限内に相続税の申告書を出す」「申告した相続税を期限内に納める」ことは徹底してください。この場合、概算の申告・納税にはなりますが、加算税・延滞税のリスクを避けることができます。

相続税の計算は、遺産分割協議の内容に基づき行うのが基本ですが、未分割の状態で申告をするときは、法定相続分の割合による仮計算を行います。この時、配偶者控除の特例や小規模宅地等の特例は未分割では適用できないため、本来の税額よりは高く申告・納税をするケースが一般的です。そうすると、申告内容に誤りがあったとしても、期限内に申告・納税すべき税額に”不足”があったわけではないので、追徴税はかからないのです。

こうした時に覚えておきたいのは、一旦は概算で相続税申告をした場合、後から申告のやり直しができるという点です。しかも、当初の申告では使えなかった配偶者控除の特例や小規模宅地等の特例などを、申告のやり直しの際に適用できる可能性があります。そのためには、概算で期限内に相続税の申告をするときに「申告期限後3年以内の分割見込み書」という書面を出すことが条件です。この書面に、現時点で遺産が分割されていない理由や、分割が行われる見込みなどを記載して提出しておけば、その後3年以内に遺産分割協議が整った際に、特例を適用して相続税の申告をやり直すことができます。

なお、当初の申告税額よりも、再計算した税額が少なくなる場合は「更正の請求」という手続きにより申告のやり直しを行いますが、更正の請求にも期限が設けられてる点に注意しましょう。計算誤りなど、一般的な理由により申告税額が過大だった場合には、更正の請求の期限は「法定申告期限から5年以内」と定められています。ところが、未分割の財産が分割され、配偶者控除の特例や小規模宅地等の特例などを適用して更正の請求を行うには、「分割された日から4ヶ月以内」に行わなくてはなりません。この期限を過ぎると、特例を使えなくなってしまいますので、ご注意ください。

新型コロナによる期限延長措置はあるが、対応は早めに

今回の記事でお伝えした通り、相続税の申告・納税期限は原則として相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。ただし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、相続税について、個別の期限延長手続きが設けられています。

個別延長を受けられるのは、新型コロナウイルス感染症の影響により、相続人等が期限までに申告・納税ができないやむを得ない理由がある場合で、その事情を管轄の税務署に申請すると、延長が認められます。ここでいう「やむを得ない事情」とは、国税庁のホームページでは以下のように例示されています。

〈このやむを得ない理由については、新型コロナウイルス感染症に感染した方はもとより、体調不良により外出を控えている方や、平日の在宅勤務を要請している自治体にお住まいの方、感染拡大により外出を控えている方など、新型コロナウイルス感染症の影響により、申告書を作成することが困難なケースなどが該当することになります。〉

なお、相続税の期限延長が認められた場合、「申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から2ヶ月以内」の日が改めて期限として設定されます。この期限までに申告・納税ができなければ、やはり追徴税や特例の不適用といった問題が生じます。いずれにしても、相続税の申告期限までの時間は意外とあっという間に過ぎるものです。できる限り、相続人同士で連携をとりながら、スムーズに期限内申告をできる体制を作っておきたいところです。また、相続税の申告を税理士に依頼するのであれば、なるべく早めに相続に強い税理士を探し、相談しておくといいでしょう。

(記事は2020年11月1日時点の情報に基づいています)