目次

  1. 1. 未分割のままでは、税金の特例が使えない
  2. 2. 遺産分割が間に合わないときは救済措置あり
  3. 3. ひとまずのめどは「3年以内の遺産分割」で更正の請求
  4. 4. 3年に間に合わない場合も申請すれば猶予あり

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相続税の申告をスムーズに済ませ、税額を抑える一つのコツが、遺産分割です。遺産分割が整った上で申告をするのと、未分割で申告をする場合では、税額が大きく変わる可能性があります。

なぜなら、相続税を軽減する効果のあるいくつかの特例が、未分割のままでは使えないからです。その特例の代表的なものが、「配偶者の税額軽減」(以下「配偶者控除」)、「小規模宅地等の課税価格の特例」(以下「小規模宅地の特例)」です。

配偶者控除は、配偶者が遺産を相続した際に使える特例で、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までの遺産については相続税がかからないという制度です。

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一方、小規模宅地の特例は、被相続人が居住していた土地や、事業に用いていた土地などについて評価額を下げられるというものです。たとえば、被相続人が居住していた土地の場合、一定の条件を満たせば330㎡まで80%も評価を減額させることができます。

被相続人の住んでいる場所にもよりますが、たとえば都内の一等地に住んでいる場合、自宅の土地だけで億単位の評価額がつくこともありえます。これを80%減額できれば、大きな節税につながるでしょう。

遺産が未分割のままで相続税の申告をするということは、配偶者控除や小規模宅地の特例のような、極めて有効な特例が使えなくなることを意味するのです。

相続税の期限は、被相続人の相続があったことを知った日(相続開始日)から10カ月です。この10カ月以内に遺産分割がととのえば、遺産分割協議書の写しを添付することで、配偶者控除や小規模宅地の特例を受けることができます。

しかし、10カ月の期限内に遺産分割が整わなかった場合、これらの特例を使うことができないため、特例を使わずに相続税の申告を行うこととなります。つまり、特例を使っていた場合と比べ高い税額で申告をし、その金額を納税しなくてはならないのです。

ですから、まずは遺産分割が期限内に終わるように、財産や債務の整理を早くから進めておくことが大切なのですが、どうしても間に合わない場合の救済措置が設けられています。この点について、詳しく説明しましょう。

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらなかったとしても、その後、遺産分割が整った場合、後から配偶者控除などの特例を使って相続税の申告をやり直すことができます。この手続きを更正の請求といいます。

ただし、この救済措置を受けるには、相続税の申告書を提出する際に「申告期限後3年以内の分割見込書」という書面を添付しておかなくてはいけません。この書面に、遺産が分割されていない理由や、今後の分割の見込み、適用を受けたい特例を記載して所轄の税務署に提出します。

この書面を提出して、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が整った場合、更正の請求を行えるようになるわけですが、期限は分割が行われた日の翌日から4カ月以内に限られています。この期限内に提出した更正の請求の内容が認められれば当初申告・納税した相続税額との差額が還付金として戻ってくることになります。

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相続税の申告期限の翌日から3年が経ってもまだ遺産分割が整わない場合も、まだ救済措置は用意されています。「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認書」を提出し、税務署長から承認を受けた場合は、その後遺産分割が整ってから更正の請求を提出することができます。

たとえば、遺産分割について相続人の間で争いがあり、裁判が長引くなど、遺産分割を終えられない事情は誰しも起こり得るため、こうした取り扱いがあることは覚えておくといいでしょう。

余談になりますが、私が税務署に勤務していた頃、遺産が未分割の状態で申告をされた方の資料が数多く倉庫に保管されていたことを記憶しています。遺産分割が整わず、多めに相続税を申告・納税している人は決して少なくないのです。

特例を使い、相続税の負担を抑えるためにも、スムーズに遺産分割が整うよう、早くから財産を整理して相続人同士で話し合うことをお勧めします。また、早いうちに相続税に詳しい税理士に相談することも検討してみてください。

(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)

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