放置すると難航も 不動産の「相続登記」に必要な書類と入手方法を徹底解説
不動産の相続登記は、煩雑な手続きと各種書類申請が必要です。法定相続か遺産分割協議後の登記かによっても、必要書類が違ってきます。事前の準備から申請方法まで、相続登記の基本を司法書士がわかりやすく解説します。
不動産の相続登記は、煩雑な手続きと各種書類申請が必要です。法定相続か遺産分割協議後の登記かによっても、必要書類が違ってきます。事前の準備から申請方法まで、相続登記の基本を司法書士がわかりやすく解説します。
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不動産を相続する時、新たに登記を済ませる必要があります。自分で手続きを終えようとすると、多くの書類を集めないといけません。多くの人にとって、なじみのない書類の入手方法などから解説していきます。
「相続登記」は不動産登記簿に記録された所有者などが亡くなった場合に、権利を取得した人に名義を変更する手続きです。
所有者などが亡くなった場合、自動的に不動産登記簿も変更されるわけではなく、手続きをしないと亡くなった人が所有者としていつまでも記録に残ります。
相続登記の手続きに期限はなく、手続きをしなかった場合の罰則もありません。
とはいえ、放置することはおすすめしません。
相続放棄をしていない相続人については、一般的に、相続登記の前提として遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
例えば、所有者とその配偶者が亡くなっていて子が3人おり、相続放棄や遺産分割協議などが行われていなければ、すべての子に相続権があります。
所有者の子が死亡していれば、さらにその下の代に相続権がありますから、次々に相続人が増えてしまいます。当事者の数が多いほど、遺産分割協議は難航するでしょう。
また、相続が発生した時点から時間が経過すると、一部の相続人が認知症になる可能性があります。意思表示ができない場合、原則として代理人がいなければ遺産分割協議などの法的手続きを行うことができなくなります。
以上より、早めに相続登記の手続きを行うことを勧めます。
相続登記手続きは一般的に、法定相続分で申請する場合、遺産分割協議で決まった割合に従って申請する場合のどちらかが多いです。
それぞれの場合について、必要な書類を説明します。
法定相続分で相続登記を申請する場合、一般的に必要な書類は以下のとおりです。
被相続人の出生から死亡までの戸籍等
被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
相続人全員の現在戸籍等
相続人の住所証明書(住民票など)
固定資産評価証明書
遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
相続登記は、原則として被相続人の戸籍等を現在のものだけでなく、出生までさかのぼって集めます。戸籍は法律が変わった場合に改正され、新しいものが作られてきました。その際、古い戸籍で除籍されている人は新しい戸籍に記載されません。例えば、改正前に生まれ、結婚して除籍になった子がいた場合、新たな戸籍にはその子が記載されません。
従って、現在戸籍だけでは相続関係を調べられないため、出生から死亡までのすべての戸籍謄本などを取得して、相続人を確定させる必要があります。
戸籍は市町村が管理しており、戸籍謄本は戸籍のある自治体でしか取得できません。市役所などの窓口のほか、郵送でも取得することができます。
住民票の除票は、戸籍等に記録されている被相続人と、相続登記の対象となる不動産の所有者が同一であることを証明するために取得します。
登記事項証明書には、所有者などの住所と氏名が記載されていますが、戸籍謄本等には本籍地と氏名が記載されており、住所は記載されていないためです。
戸籍附票にも住所が記載されているため、住民票の除票に代えて戸籍の附票を使用することも可能です。
住民票は住民登録のある自治体で、戸籍の附票は対象の戸籍がある自治体で取得できます。窓口と郵送のどちらでも取得が可能です。相続人の住民票、戸籍等についても同様です。
固定資産評価証明書は、不動産の所在地にある自治体で取得できます。こちらも郵送で取得が可能です。
なお、法定相続情報証明制度を利用し、法定相続情報一覧図の写しを添付する場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍等など、一部の書類については添付を省略できます。
複数の法務局に相続登記を申請する場合や、不動産登記のほかに相続税の申告を行う場合などは、利用を検討してもよいでしょう。
続いて、遺産分割協議後に相続登記を申請する場合に必要な書類は以下のとおりです。
被相続人の出生から死亡までの戸籍等
被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
相続人全員の現在戸籍等
相続人の住所証明書(住民票など)
固定資産評価証明書
遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
相続人全員で話し合い、決まった割合で相続登記をする方法です。
遺言書がなく、法定相続分と異なる内容で登記を行う場合には、この方法で手続きします。
法定相続分で登記を申請する場合と比較すると、遺産分割協議書と印鑑証明書が追加されています。遺産分割協議書は相続人が協議して決めた財産配分の割合などを記載します。相続人全員が実印で押印する必要があるため、印鑑証明書の添付が求められます。
添付書類を揃えたら、登記申請書を作成し、対象不動産のある地域を管轄する法務局に相続登記を申請します。法務局では事前の登記相談を受け付けているため、司法書士に依頼せずに自分で登記を申請する場合は、依頼してもよいでしょう。
専門家に依頼する場合は、司法書士に相談するとよいでしょう。
相続登記の申請は主に司法書士が行います。弁護士も行うことができます。
行政書士は相続登記を含む不動産登記を申請することができません。
登記申請の代理人は大半が司法書士です。
報酬は自由化されており、事務所によって異なります。
案件の内容にもよりますが、複雑な事案でなければ、司法書士報酬は遺産分割協議書の作成を含めて、7~15万円の範囲になるケースが多いと思います。
このほか、登録免許税として固定資産評価額の0.4%を納める必要があります。
評価額が100万円であれば4千円になります。
自分で相続登記を申請する場合は手間と時間がかかりますので、費用を勘案して、司法書士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。
(記事は2020年6月1日現在の情報に基づきます)
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