遺言書がなければ遺産分割協議をする

相続手続きは、遺言の有無によって大きく異なります。遺言書がないケースでは、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。そして、遺産分割協議を相続人間で行ったものの協議がまとまらない場合には、家庭裁判所における「遺産分割調停」を行うことになります。ここでは、調停委員が中立的な立場で協議内容を整理しながら、相続人間の合意を促します。

「遺産分割調停」は、調停委員の関与はあるものの、あくまで、相続人全員が合意をしなければなりません。「遺産分割調停」でも、合意が成立しない場合には、「遺産分割審判」という手続きに移行します。同じ家庭裁判所の手続きですが、最終的には裁判官が分割方法を決定することになります。

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遺産分割で検討すべきこととは

遺産分割では、どのような点が問題になるのでしょうか?遺産分割で検討すべきことは大きく分けて以下の5つです。
① 法定相続人を確定する
② 遺産の内容を確定させる
③ 遺産の評価額を算定する
④ 特別受益・寄与分の有無を確認する
⑤ 具体的な財産の分割方法を決める

1、法定相続人を確定する

まずは、法定相続人を確定する必要があります。法定相続人を確定するためには、被相続人(亡くなった方)の現在戸籍から出生するまでの戸籍を全て過去に遡って取得し、親族関係を確定させることになります。

特別な事情がなければ、法定相続人の確定は戸籍を取得すれば確定します。戸籍の収集には数週間から、親族関係が複雑な場合には、3カ月程度かかる場合もあります。法定相続人が確定すれば、同時に各相続人の法定相続分も確定することになります。

2、遺産の内容を確定させる

次に、遺産を確定させる必要があります。不動産・預貯金・株式などの有価証券・動産に至るまで、被相続人(亡くなった方)が相続開始時点で所有していた全ての財産や権利を確定させる必要があります。もちろん、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も確定させておく必要があります。遺産の範囲については、被相続人(亡くなった方)の遺産なのか、別の者の財産なのかが揉め事になることがあります。

3、遺産の評価額を算定する

遺産が確定した後は、それぞれの遺産の評価額を確定させる必要があります。預貯金や金融資産は評価額がほぼ明確なのですが、不動産や非上場会社の株式などといった財産の評価については、相続人間で評価額を巡って揉めてしまうことがあります。

例えば、不動産でいえば、同一の不動産でも「固定資産税評価額」、相続税を計算するための「相続税評価額」、不動産会社が算出する「取引査定金額」、不動産鑑定士が算出する「鑑定評価額」など、様々な評価額が存在します。全ての相続人が合意すれば、どのような評価額を前提としても問題ありません。

例えば、相続税申告が必要な場合には、相続税を計算するため、税理士が各財産の相続税評価額を算出してくれますので、その評価額をそのまま遺産分割に利用することも実務上は多いです。しかし、仮に、その不動産を取得する希望を有している相続人がその不動産の評価額について低い評価額を主張し(取得する財産の評価額が低ければ、その分他の財産も多く取得できます)、逆にその不動産を取得する希望がない人はその不動産の評価額について高い評価額を主張し、評価額の合意ができない場合には、最終的には、家庭裁判所の遺産部分割調停又は遺産分割審判で確定することになります。

遺産分割の遺産の評価額は、時価で評価することとされていますので、最終的には不動産鑑定士が算出する鑑定評価額で決することになります。ただ、その不動産鑑定士の鑑定評価書も各相続人から複数出てきて、時価が争われるなど、遺産の評価額を巡っては相続人間で激しい争いになってしまうこともあります。

4、特別受益・寄与分の有無を確認する

更に、遺産分割の手続きが長期化しやすいのが、特別受益と寄与分です。
特別受益とは、相続人が被相続人(亡くなった方)から生前に贈与を受けていたり、相続開始後に遺贈を受けていたり特別に被相続人から利益を受けていること言います。

例えば、一部の相続人だけが被相続人から生前に贈与を受けているなど何らかの利益を受けている場合、形式的に相続開始時点に被相続人が所有している遺産を法定相続分で分割してしまうと、生前に利益を受けていなかった相続人が不利になってしまいます。そのため、特別受益を受けている相続人がいる場合には、その分、その相続人の相続分を減少させることによって、相続分を調整することになります。

他方で、寄与分とは、被相続人(亡くなった人)の生前に、相続人の生前に、その財産の維持や増加に影響するような貢献をした相続人がいる場合、他の相続人との間の不公平を是正するために設けられた制度です。一部の相続人だけが生前に、被相続人の介護をするなどして、被相続人の財産の維持に寄与している場合、形式的に法定相続分で遺産を分割してしまうと、生前に被相続人の財産の維持に寄与をしている相続人が不利となってしまいます。

そのため、寄与分がある相続人がいる場合には、その分、その相続人の相続分を増加させることで、相続分を調整することになります。この特別受益と寄与分を考慮した各相続人の相続分を、具体的相続分といい、この具体的相続分によって遺産の取得割合が確定することになります。

5、具体的な財産の分割方法を決める

最終的には、遺産の分割方法を決めていきます。相続人それぞれの相続分に従って、取得割合を決めることになります。どの財産を、どの程度取得したいのか、相続人間で意見が対立してしまうことがあります。もちろん、相続人が全員合意すれば、上記で確定した具体的相続分に従わず、「全ての遺産を配偶者が取得する」といった分割も可能です。

まとめ 遺言が相続人の負担を軽減できる

上記のように、遺言がない場合には、全ての相続人の合意によって分割方法が決まることになります。そして、協議内容も多岐にわたるため、生前に遺言を作成しておくことで、相続人がもめてしまう可能性を減少させることができます。事前にしっかり準備をするために、将来の相続について一度考えてみるのはいかがでしょうか。

(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)