相続が発生すると、相続開始時点で被相続人が有していた財産及び権利義務(「相続財産」または「遺産」)は、原則としてすべて相続の対象となり、相続人に承継されます。そして、被相続人が所有していた不動産(土地・建物・マンション)や自社株(被相続人やその一族が所有する同族会社の株式)は「遺産」にあたるので、遺産分割の対象財産となります。しかしながら、不動産や自社株の評価額は、現金や預貯金のように一律に定まるものではありません。そのため、その評価額を巡って相続人間で争いになることが少なくありません。今回は、遺産に不動産や自社株がある場合の遺産分割における遺産の評価方法について、弁護士が解説します。

不動産の評価方法

不動産は、現金のように簡単に分割できないので、多くの場合、相続人のうち1人が単独で取得することになります。

ところで、各不動産には固定資産税評価額が設定されていますが、この金額と不動産の時価(実勢価格)は異なることがほとんどです。例えば、首都圏では時価が評価額を上回ることが多いですし、反対に地方では、時価が評価額を下回ることが少なくありません。

遺産分割にあたり不動産をいくらと評価すべきかについては、不動産を取得する側と取得しない側で考え方が異なります。例えば、取得する側は、遺産の既取得額を減らすために不動産の評価額を低くしたいというインセンティブが働きます。これに対し、取得しない側は、取得する側の遺産の既取得額を増やす(未取得額を減らす)ことで自身の取得額を増やしたいと考えるため、不動産の評価額を高くしたいというインセンティブが働きます。

このように、相続人それぞれの立場によって不動産の評価額に対する考え方は異なるため、遺産に不動産が含まれる場合、不動産の評価をめぐり相続人間で争いになってしまうケースが少なくないのです。

実務上、不動産については遺産分割時を評価時点としています。そのため、相続発生後に時価の上昇が認められる場合であっても、原則は、上昇後の現在の時価で評価することになります。

その評価方法については、公示価格、固定資産税評価額、相続税評価額(いわゆる路線価)、実勢価格等の各金額が参考になりますが、遺産分割では、基本的には実勢価格で評価します。具体的な評価額については、相続人間で合意ができれば合意した金額が評価額となりますが、相続人間で合意ができない場合は、最終的に裁判所で不動産鑑定を行って不動産の評価額を決定する必要があります。

自社株の評価方法

株式市場で取引されている株式については、原則として遺産分割時の直近の最終価格(終値)によって評価されます。そのため、評価額は客観的に定まります。
しかし、自社株については市場価格がないのが通常であり、そうすると、評価額が客観的に定まりません。その場合、一般的には、国税庁の財産評価基本通達において定められた方法や、会社法上の株式買取請求における株価算定方法を参考に、自社株の評価を行います。

具体的には、

  1. 純資産価額方式(会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法)
  2. 配当還元方式(その株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を、一定の利率で還元して元本である株式の価額を評価する方法)
  3. 類似業種比準方式(事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準する方法)

のいずれかの方法により自社株の評価を行い、これらにより算定された金額をもとに、当事者間で自社株の評価額の合意を目指して協議します。
それでも当事者間で自社株の評価について合意できない場合、不動産の場合と同様、最終的には裁判手続上で、公認会計士等の鑑定により自社株の評価額を定めることになります。

まとめ「相続人間で評価額の合意が必要」

以上のとおり、不動産や自社株などの遺産については、まずは相続人間で一定の評価方法をもとに計算した金額で評価額の合意を目指して交渉し、それでも評価額の合意ができない場合には、最終的には裁判手続上の鑑定により評価額を定めることになります。

もっとも、裁判手続上で鑑定を行う場合、不動産鑑定士や公認会計士等の鑑定費用が必要になりますので、双方主張の評価額にそれほど開きがない場合であれば、経済合理性の観点から、多少の譲歩をしてでも合意により評価額を定めておいた方がよいケースもあるでしょう。いずれにしても、遺産の評価に争いがあり遺産分割協議が進まないという場合には、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

(記事は2019年10月1日時点の情報に基づいています)