9.不動産を信託したときの登記手続は?
高齢化や家族の多様化が進み、財産管理の手段として注目が集まる「家族信託」。その活用を訴えコンサルティングに力をいれる司法書士の宮田浩志さんが、信託不動産の登記手続きについて説明します。
高齢化や家族の多様化が進み、財産管理の手段として注目が集まる「家族信託」。その活用を訴えコンサルティングに力をいれる司法書士の宮田浩志さんが、信託不動産の登記手続きについて説明します。
目次
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信託契約において不動産を信託財産に入れた場合、分別管理義務の一環として、その旨を登記簿に反映させることが必要となります(信託法34条1項)。
その登記としては、所有権移転登記手続きという形をとり、受託者は登記簿上、甲区所有者欄に「受託者」という肩書付で住所・氏名が記載されることになります。言い替えれば受託者が信託不動産についての登記名義人になる(形式的な所有者として取り扱われる)のです。
信託契約期間中は、登記名義人が受託者になっているので、受益者に相続が発生しても、一般的な相続による所有権移転登記(相続登記)という概念はなくなります。そして、最終的に信託契約が終了した際に、登記簿上の名義を受託者から残余財産の帰属権利者(最終的な所有者)へ、所有権移転登記をすることになります。
注意すべきは、受託者となる長男が、信託契約終了後に残余財産を受け取るとしても、「受託者 長男」から「所有者 長男」へ、所有権移転登記手続きが必要となることです。
登記の目的 : 所有権移転及び信託
原 因 : 年月日 信託
登録免許税 : 所有権移転分…非課税
信託分…土地は固定資産税評価額の3/1000
(租税特別措置法72条(~平成29年3月31日))
…建物は、固定資産税評価額の4/1000(原則)
(登録免許税法第9条別表第一.1(十)イ)
登記の目的 : 受益者変更
原 因 : 年月日 相続(贈与・売買)
登録免許税 : 不動産1個につき 金1,000円
(登録免許税法第9条別表第一.1(十四))
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相続の相談が出来る司法書士を探す 登記の目的 : 所有権移転
原 因 : 年月日 受託者〇〇死亡による変更
登録免許税 : 非課税(登録免許税法7条1項3号)
登記の目的 : 所有権移転及び信託登記抹消
原 因 : 所有権移転 年月日 信託財産引継
信託登記抹消 信託財産引継
登録免許税 : 所有権移転分…固定資産評価額の20/1000( 注2、3)
信託抹消分…不動産1個につき 金1,000円
(注2 )信託の効力発生(設定)時から「委託者A=元本の受益者」であって、信託終了に伴って委託者Aの相続人を権利帰属者として所有権を移転する場合
には、相続登記の税率(=4/1000)を適用する(登録免許税法7条2項)。
(注3 )「委託者Ⓐ=受益者」であり、信託期間中において委託者および受益者に変更がなく、信託終了時に当該委託者Ⓐ(=受益者)に所有権を移転する(元の所有者に戻す)場合には、所有権移転登記にかかる登録免許税は非課税(登録免許税法7条1項2号)。ただし、抹消登記分(不動産1個につき金1,000円)は必要。
次回の記事では、信託不動産が実際どのように登記簿に記載されるか、について解説します。
この記事は、「相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本」(近代セールス社)から転載しました。