前回の記事「家族信託の契約書は公正証書で作成を 私文書は親族トラブルの原因に」では、もめ事の可能性を防ぐ意味から公正証書での契約書作成をおすすめしました。今回は、「受益者」(=受託者の財産から経済的な利益を受ける人)をめぐる契約手続きや、贈与と信託の違いについて解説します。

受益者の「承諾」は不要

信託契約や遺言の中で「受益者」として指定された者は、原則として当然に受益権という権利を取得します。つまり、委託者と受益者が異なる信託の場合、受益者が「受益権」という財産を持つことについての承諾は必要ありません。

この点、よく「贈与」と比較されますが(下記表参照)、贈与は「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾すること」によって成立する契約のため、もらう側(受贈者)のもらう意思表示が必要です。たとえば、もらう側が幼児や障がい者、認知症高齢者の場合は、法定代理人(親権者や後見人)が本人に代わって贈与契約を交わさない限り、財産を有効に受け取ることができません。
一方、信託は、もらう側の受諾の意思表示は必要ないため、幼児や認知症高齢者等に財産を渡したい場合でも、一方的に「受益者」に指定すれば、財産を渡すことが可能です。

贈与は「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾すること」によって成立する契約のため、もらう側(受贈者)のもらう意思表示が必要です。たとえば、もらう側が幼児や障がい者、認知症高齢者の場合は、法定代理人(親権者や後見人)が本人に代わって贈与契約を交わさない限り、財産を有効に受け取ることができません。
 一方、信託は、もらう側の受諾の意思表示は必要ないため、幼児や認知症高齢者等に財産を渡したい場合でも、一方的に「受益者」に指定すれば、財産を渡すことが可能です。

でも、「通知」は必要

財産を管理する受託者は、受益者として指定された者が受益権を取得したことを知らないときは、原則その者に対し、遅滞なく受益者となった旨の通知をしなければならないと定められています。一方で、信託契約書や遺言の中で、通知をする義務を免除する旨の規定を置くこともできます。たとえば「受託者は、受益者○○に対し、受益者となった旨の通知をしないものとする」という条項を設けておけば、受益者に内緒で受益者のために財産を管理していくことも理論上可能となります。

実務上は、「委託者=受益者」(自益信託)以外のケースでは、受益者となったタイミング・原因により、“みなし相続”又は“みなし贈与”として相続税や贈与税の課税対象になります。その場合、受益者に税務申告義務・納税義務が発生しますのでご注意ください。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)