目次

  1. 1. 自己信託とは
    1. <自己信託の具体的な利用例>

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 自己信託とは、委託者が自ら受託者となり、受益者(他人)のために自己の財産を管理・処分等する信託の形態をいいます(信託法3条3項)。信託契約と遺言信託が、自分以外の者を受託者として財産管理を託す形態であるのに対し、自己信託は、自己に託す信託の形で自分一人で発動できるので、「信託宣言」ともいわれます。旧信託法においては、受託者は委託者以外の者であることが必要でしたが、平成19年の法改正で新たな信託の方法として認められたもので、改正信託法の目玉の一つです。

 自己信託は、「委託者=受託者」であり、自分一人で特定の財産を信託財産とすることを宣言するだけで信託を成立させるため、要件を厳格化し公正証書等により作成しなければ効力が発生しないとされています(信託法4条3項)。したがって、自己信託を設定するには、公証役場で「自己信託設定公正証書」を作成することが一般的です。

 なお、公正証書によらないやり方としては、受益者として指定された第三者に対して、確定日付のある書面により信託内容を通知することで自己信託を設定することも可能です(信託法4条3項2号)。

 自己信託は、これまでの財産の持ち主とは異なる者が受益者になるため、設定した時点で他者に財産が移転したことになります。そこで税務上は、生前における財産の移動、つまり“みなし贈与”として贈与税の課税対象になるので注意が必要です。たとえば、親が特定の財産を子に贈与しつつも、子がすぐに浪費しないように、贈与後も引続き親の手元で財産を管理できるので、いわば「親から子への贈与+子から親への信託」を一度に実行するようなイメージです。

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 自己信託の特徴として、財産をもらった者(受益者)自身の手元にその財産がないため、浪費癖のある子を受益者にするケース、認知症により自分で財産管理能力のない配偶者を受益者にするケース、障害を持つ子を受益者にするケースなどで活用されています。

次回の記事では、信託財産にできる「3つの財産」について解説します。

この記事は、「相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本」(近代セールス社)から転載しました。

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