目次

  1. 1. 信託契約とは

「相続会議」の司法書士検索サービス

 財産を持つ者が信頼できる相手と、特定の目的のために、財産の管理や処分等を任せる内容の契約を「信託契約」と呼びます(信託法3条1項)。親が委託者、子が受託者として、子に財産管理を託すというのが最も典型的な家族信託契約の形です。あくまで契約なので、親が元気で契約できる判断能力がないと有効にできないことになります。

 信託を組む目的は様々ですが、受託者は「信託目的」を実現をすべく、受益者のために財産の管理や処分の業務を担うことになります。老後における賃貸物件の管理・建替え・処分、生活費等の給付、資産の円満円滑な承継などが典型的な「信託目的」といえます。

 信託契約で老親の存命中の管理を託した財産については、そのまま相続発生後の承継者を指定できるので、改めて遺言書を作成しないケースが多いです。この、信託契約に「遺言」の機能(自分の死後の財産の承継者指定など)を持たせたものを、「遺言代用信託」といいます。実務上は「信託契約」と同じ意味合いで使われることも多いですが、厳密には遺言の機能を持たない信託契約(注1)もあります。

 なお、信託契約に遺言の機能を持たせる典型的パターンとしては、次の2通りが想定されます。

 ①委託者兼受益者でスタートし、その者の死亡で信託契約を終了させ、「残余財産の帰属権利者」を指定する形
 ②委託者兼当初受益者でスタートし、その者が死亡しても信託は終了させず、第二受益者等の指定で信託財産(信託受益権)のまま後継者に資産を遺す形(受益者連続信託)

 (注1 )たとえば、委託者兼受益者の死亡により信託契約が終了する契約において、残余財産の帰属先については、あえて具体的な記載をせず、法定相続人全員の協議に委ねる旨の条項を設ける信託契約もあります。

次回の記事では、遺言形式で財産管理まで指定する「遺言信託」について解説します。

この記事は、「相続・認知症で困らない 家族信託まるわかり読本」(近代セールス社)から転載しました。

「相続会議」の司法書士検索サービス