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1. 司法書士と税理士の業務範囲の違い
司法書士と税理士は、いずれも専門的な知識を生かして活動する国家資格者です。不動産経営、会社経営、相続などの場面では、司法書士や税理士のサポートを要するケースがよくあります。
司法書士と税理士は、依頼できる業務の内容が異なります。相談したい内容に応じて、司法書士と税理士を適切に使い分けましょう。
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司法書士 |
税理士 |
依頼できる 業務の内容 |
・登記に関する業務 ・供託に関する業務 ・裁判所や検察庁に提出する書類の作成 ・簡易裁判所における手続きの代理(認定司法書士のみ) ・140万円以下の紛争案件の代理(認定司法書士のみ) |
・税務代理 ・税務書類、財務書類の作成 ・税務相談 ・会計帳簿の記帳の代行 ・財務に関する事務 |
1-1. 司法書士の主な業務
司法書士が主に取り扱うのは、登記と供託に関する業務です。特に登記は、不動産売買や会社経営と密接に関係しているため、不動産オーナーや会社経営者は司法書士と関わる機会がしばしばあります。不動産を相続した場合も、司法書士に登記申請を依頼するのが一般的です。
また司法書士は、法務大臣所定の研修を修了して考査に合格し、法務大臣の認定を受けると、140万円以下の紛争案件の代理業務を行うことができます。紛争案件は原則として弁護士しか取り扱うことができないところ、その例外として認められているものです。こうした代理業務を行うことができる司法書士は「認定司法書士」と呼ばれています。
1-2. 税理士の主な業務
税理士が主に取り扱うのは、税務申告の代理や税務書類の作成、節税対策に関するアドバイスなどです。税理士が取り扱う税務申告は、個人の確定申告、法人の確定申告、相続税や贈与税の申告など多岐にわたります。税理士によって専門としている税目が異なるため、申告が必要な税目に詳しい税理士を選ぶことが大切です。
節税対策に関しては、税理士は事業・不動産に関するアドバイスのほか、将来の相続に備えたアドバイスも行っています。特に多額の財産を所有している場合は、相続税が多額になることが想定されるため、税理士に相談して相続税対策を行う必要性が高いと考えられます。
2. 司法書士に相談・依頼できること一覧
司法書士に相談・依頼できる主な業務としては、次の例が挙げられます。
- 不動産登記の申請|所有権移転、抵当権設定、住所変更など
- 商業登記の申請|会社の設立、登記事項の変更など
- 供託の申請
- 認知症対策|後見等の申立てなど
- 生前の相続対策|遺言書の作成、家族信託など
- 相続手続き|相続登記、預貯金の相続など
- 債務整理(借金問題の解決)|1社当たり140万円以下の任意整理など
- 訴額140万円以下の紛争の代理|簡易裁判所での訴訟など
2-1. 不動産登記の申請|所有権移転、抵当権設定、住所変更など
不動産に関する登記の申請は、司法書士が主に取り扱う業務の一つです。たとえば次のような場合には、司法書士に登記申請を依頼することができます。
- 不動産を購入する場合
- ローンを利用するに当たって、不動産に抵当権を設定する場合
- 不動産所有者の住所や氏名が変わった場合
2-2. 商業登記の申請|会社の設立、登記事項の変更など
司法書士は、会社などの法人に関する商業登記の申請も取り扱っています。会社を経営する人は、次のようなケースで司法書士に登記申請を依頼することができます。
- 会社を設立する場合
- 会社の登記事項を変更した場合
- 会社を解散・清算する場合
2-3. 供託の申請
登記と並んで「供託」の申請も、司法書士が中心的に取り扱う業務の一つです。「供託」とは、金銭や有価証券などを供託所に提出して管理を委ねることをいいます。供託は、法令上認められている場合に限って行うことができます。
たとえば、借金などの債務を負っているものの債権者(お金を貸した側)が誰か分からない場合に行う「弁済供託」などは、司法書士に申請を依頼することができます。
2-4. 認知症対策|後見等の申立てなど
認知症などによって判断能力が低下すると、契約などの法律行為について適切な判断ができなくなるおそれがあります。そのような状態の本人をサポートするために「成年後見制度」が設けられています。成年後見制度には、すでに判断能力が不十分な場合に家庭裁判所が後見人等を選任する「法定後見制度」と、将来の判断能力低下に備えて本人が後見人と契約を締結しておく「任意後見制度」の2種類があります。家庭裁判所での手続き、またはあらかじめ締結した任意後見契約に基づいて後見人等が就任し、本人の代わりに契約を締結するなどのサポートを行います。
司法書士は、成年後見制度に関する相談・依頼を受け付けていることがあります。たとえば、家庭裁判所に提出する申立書類の作成を依頼できるほか、後見人等の候補者として司法書士を挙げることも可能です。
ただし弁護士とは異なり、司法書士が後見等の申立てを代理することはできません。司法書士に申立書類の作成を依頼した場合でも、申立ては申立人本人の名義で行います。
2-5. 生前の相続対策|遺言書の作成、家族信託など
家族が亡くなって相続が発生した場合、相続人同士でトラブルが生じたり、本人から財産などに関する情報を聞いていなかったりして、相続手続きに苦労することがあります。こうした事態を防ぐためには、生前の段階で相続対策を進めておくことが効果的です。
司法書士は、生前の相続対策に関する相談を受け付けていることがあります。代表的な対策としては、遺言書の作成や家族信託などが挙げられます。家族信託は財産管理の方法の一つで、あらかじめ信頼できる家族に自分の財産の管理や処分を任せる仕組みです。将来、本人の判断能力が低下した場合でも、不動産の売却や口座からの引き出しなどが制限されるリスクを防げる点がメリットです。
2-6. 相続手続き|相続登記、預貯金の相続など
実際に相続が発生した際の手続きも、司法書士に相談・依頼できることがあります。たとえば、司法書士は次の相続手続きなどに対応しています。
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 不動産の相続登記の申請
- 金融機関(銀行など)の相続手続きの申請
- 相続放棄に関する書類の作成
特に不動産の相続登記は2024年4月から義務化され、相続人は原則として「不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内」に登記申請をする必要があります。司法書士に相続登記を依頼することで、期限内に適切な申請が可能になります。
ただし、相続人同士が遺産の分け方を巡って争っているなど、相続トラブルが生じている場合には、原則として司法書士がその解決を取り扱うことはできません。
2-7. 債務整理(借金問題の解決)|1社当たり140万円以下の任意整理など
借金などの債務を支払えなくなったときは「債務整理」が有力な解決策となります。債務整理が成功すれば、債務の負担が軽減または免除されます。
債務整理の主な種類は、債権者との交渉を通じて行う「任意整理」や、裁判所を通じて行う「個人再生」「自己破産」などです。司法書士には、1社あたり140万円以下の任意整理や、個人再生・自己破産で裁判所に提出する書類の作成などを依頼できます。
なお、1社あたり140万円以下の任意整理を取り扱うことができるのは、法務大臣の認定を受けた認定司法書士に限られています。
2-8. 140万円以下の紛争の代理|簡易裁判所での訴訟など
契約違反や不法行為などを巡って生じる紛争の解決は、原則として弁護士しか取り扱うことができません。しかし例外的に、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事事件などについては、認定司法書士が代理人として対応できる場合があります。
たとえば次のようなトラブルを抱えていて、その係争額が140万円以下であれば、認定司法書士に対応を依頼できることがあります。
- 知人との借金トラブル
- 家賃の滞納、敷金の返還に関するトラブル
- 近隣トラブル
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3. 税理士に相談・依頼できること一覧
税理士に相談・依頼できる主な業務としては、次のものが挙げられます。
・税務申告|所得税、贈与税、相続税、法人税など
・事業者の記帳代行
・節税対策|生前贈与、不動産の活用など
・経営・財務に関するコンサルティング
・企業間取引に関する税務のアドバイス|M&Aなど
・税務調査への対応(立会い)
3-1. 税務申告|所得税、贈与税、相続税、法人税など
税理士が取り扱う業務のうち、中心的なものの一つが「税務申告」です。個人や法人に対して課されるさまざまな税金について、必要な申告を税理士が代理人として行います。
たとえば、次のような税金について申告が必要となる場合があります。これらの税金の申告は、税理士に依頼することが可能です。
【個人】
所得税:1年間の所得に課される
贈与税:1年間に受けた贈与に課される
相続税:相続や遺贈などによって財産を取得した場合に課される
消費税・地方消費税:個人事業者の売上等に対して課される(免税事業者を除く)
【法人】
法人税・地方法人税・法人事業税・特別法人事業税・法人住民税:法人の所得に対して課される
消費税・地方消費税:売上等に対して課される(免税事業者を除く)
3-2. 事業者の記帳代行
事業者は、事業活動上の収支を帳簿に記録(=記帳)する必要があります。適切に税務申告を行うためには正しい記帳が欠かせませんが、会計や税務に関する知識がないと適切に記帳することが難しい場合があり、手間もかかります。
事業者の記帳は、税理士に依頼すると代行してもらえることがあります。売上台帳や領収書などの資料を定期的に税理士へ共有し、その内容に基づいて税理士に記帳を代行してもらいます。
3-3. 節税対策|生前贈与、不動産の活用など
所得税や相続税などの税負担は、税法のルールに沿った対策を行うことで軽減できることがあります。たとえば、生前贈与を計画的に行って相続税の負担を抑える方法や、不動産の経費計上や適切な評価によって相続対策を行ったりする方法などが挙げられます。
多くの税理士は、節税対策に関する相談を受け付けています。税理士に相談すれば、税法のルールを踏まえつつ、相談者の状況に応じた適法な節税対策についてアドバイスを受けられます。
3-4. 経営・財務に関するコンサルティング
税理士の業務は、企業の経営や財務との関連性が高いため、これらの事項についてコンサルティングを行う税理士が多く見られます。具体的には、決算書や試算表などを分析して経営状況を把握し、資金繰り・収益改善・経費削減・事業計画の策定などをサポートします。
3-5. 企業間取引に関する税務のアドバイス|M&Aなど
M&Aなどの企業間取引については、税務上の取扱いが問題となることがあります。
誰に対してどのような税金が課されるのか、税負担の額はどの程度かといった事項を事前に検討しておくことは、M&Aなどを行う際には重要です。税務上の取扱いや税負担については、税理士に相談することで専門的なアドバイスを受けられます。
3-6. 税務調査への対応(立会い)
所得税・贈与税・相続税などの申告内容が正しいかどうか、必要な申告がきちんと行われているかなどを確認するため、税務署などが税務調査を行うことがあります。
税務調査では、税務署の調査官が対象者に対してさまざまな質問を行います。調査官の質問に対して適切に回答ができないと、申告内容について十分な説明ができず、追加の資料提出や確認を求められる可能性があります。また、加算税や延滞税などの追徴課税を受けるリスクも高まります。税務調査は数日にわたって行われることもあるため、対象者自身がすべて対応するのは大きな負担です。
調査の対象となる申告を代行した税理士に税務調査の立ち会いをお願いすれば、調査官に対して申告の内容や根拠について説明してもらえます。また、申告に関与していない税理士でも、税務調査への立会いの依頼を受けてもらえることがあります。
4. 相続手続きは司法書士と税理士、どちらに依頼すべき?
相続手続きについては、司法書士と税理士では取り扱える業務の範囲が異なります。また、相続手続きの依頼先としては弁護士も候補となります。依頼したい業務の内容に応じて、司法書士・税理士・弁護士を適切に使い分けましょう。
4-1. 不動産の相続登記は司法書士、相続税申告は税理士
相続ではさまざまな手続きが必要になります。その中でも不動産の相続登記については司法書士、相続税申告については税理士に相談するのが一般的です。
相続手続き全体のサポートを行う司法書士や税理士もいますが、どちらが適任であるかは一概にいえません。司法書士・税理士のいずれも、すべての相続手続きを代行できるわけではないため、必要に応じて他の士業との連携が必要になります。対応の丁寧さや費用に加えて、他の士業と連携して相続手続きをサポートしてもらえるかどうかも依頼前に確認しましょう。
4-2. 相続トラブルが発生している場合は弁護士
相続に関する業務を最も幅広く取り扱うことができるのは、司法書士や税理士ではなく、弁護士です。弁護士は、遺産分割協議や遺産分割調停・審判など、相続に関するさまざまな手続きに対応できます。ただし実務上は、不動産の相続登記については司法書士、相続税申告については税理士を紹介する例が多く見られます。
相続について発生したトラブルの解決を取り扱うことができるのは、原則として弁護士のみです。すでに相続人同士がもめている場合や、将来的にもめる可能性がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
相続の相談先フローチャート。内容によって依頼先が変わる
4-3. どの専門家に依頼するか迷ったら無料相談を
司法書士・税理士・弁護士の専門家事務所では、相続について無料相談を受け付けていることがあります。
無料相談を利用しても、その後正式に依頼するかどうかは相談者が自由に決めることができます。どの専門家に相談すればよいか分からないときは、まずは司法書士・税理士・弁護士のうちいずれかに無料相談をして、その際にどの専門家が適しているかを確認するのがよいでしょう。
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5. 相続手続きを司法書士・税理士に依頼した場合の費用相場
司法書士や税理士に相続手続きを依頼した場合に、かかる費用の目安を紹介します。実際の費用は依頼先や内容によって異なるため、依頼する前に見積もりを提示してもらい、費用の内訳を確認しましょう。
5-1. 司法書士費用の相場
日本司法書士会連合会が2024年3月に行ったアンケート調査の結果によれば、不動産の相続登記と遺言書の作成サポートに関する司法書士費用の平均額は次のとおりです。
|
実施する業務 |
司法書士費用(平均) |
| 相続登記 |
①土地1筆・建物1棟(固定資産評価額の合計1000万円) の所有権移転登記の申請 ②戸籍謄本等5通の交付請求 ③遺産分割協議書・相続関係説明図の作成 ※法定相続人は3名で、うち1名が単独相続した場合 |
7万4888円 |
遺言書作成 サポート |
①遺言公正証書の原案の起案 ②公証役場への同行 ③証人としての立会い ④公正証書遺言作成嘱託のサポート |
6万2193円 |
実際の司法書士費用の額は、相続財産の状況や実施する業務の範囲、依頼先などによって異なります。また、登録免許税などの実費は上記の費用に含まれていないため、別途負担する必要があります。
5-2. 税理士費用の相場
2002年3月まで適用されていた税理士会の報酬規定によれば、相続税に関する税務代理および税務書類の作成に関する税理士報酬の目安額は次のとおりです。
| 税務代理報酬 |
基本報酬額10万円に、遺産の総額に応じて以下の金額を加算
5000万円未満:22万円 7000万円未満:38万5000円 1億円未満:66万円 3億円未満:93万5000円 5億円未満:121万円 7億円未満:148万5000円 10億円未満:187万円 10億円以上:198万円 1億円増すごとに11万円を加算 |
| 税務書類の作成報酬 |
税務代理報酬の50%相当額 |
| ※税込表示(消費税10%)に換算 |
ただし、税理士会の報酬規定はすでに廃止されており、現在は税理士報酬について一律の基準はありません。上記の金額は過去の報酬規定に基づく参考額であり、実際の税理士費用は各税理士が自由に定めています。
6. 司法書士・税理士・弁護士以外に相続の相談や依頼ができる専門家
相続について相談できる専門家としては、司法書士・税理士・弁護士のほかに次のような専門家が挙げられます。
| 専門家の種類 |
相続に関する主な取扱業務 |
| 行政書士 |
・相続人、相続財産の調査 ・自動車の名義変更 ・遺言書の作成 |
| 社会保険労務士 |
・社会保険、年金に関する手続き |
| 不動産鑑定士 |
・相続した不動産の評価 |
| 土地家屋調査士 |
・相続した土地の分筆、境界確定 ・未登記建物の表題登記の申請 ・建物を取り壊した際の滅失登記の申請 |
| 宅地建物取引士(不動産会社など) |
・相続した不動産の売却や賃貸の仲介 |
| ファイナンシャルプランナー |
・相続した財産の運用に関する一般的なアドバイス |
これらの専門家が相続について取り扱う業務は、それぞれ一定の範囲に限られています。依頼したい内容に合致する専門家がいる場合は、その専門家に相談するとよいでしょう。
一方、どのように相続手続きを進めればよいか分からない、幅広い手続きを依頼したいという場合は、司法書士・税理士・弁護士のいずれかに依頼することをおすすめします。
相続において各専門家が対応できる業務の表。弁護士は幅広い業務に対応できる
7. 司法書士と税理士の違いについてよくある質問
Q. 相続は司法書士と税理士、どちらへ先に相談すべき?
どちらに相談しても構いませんが、不動産を相続した場合は司法書士、多額の遺産を相続した場合は税理士への相談を要するケースが多いです。遺産分割など相続人同士でトラブルが発生している場合は、弁護士への相談も必要になります。
隣接士業との連携が充実している専門家に相談すると、必要に応じて別の種類の専門家を紹介してもらえることがあります。
Q. 遺産分割協議書の作成は、司法書士と税理士のどちらに依頼すべき?
遺産分割協議書を作成する目的によって、依頼すべき専門家が異なります。不動産の相続登記を申請するためであれば司法書士、相続税申告を行うためであれば税理士に依頼しましょう。
相続登記や相続税申告とは関係なく遺産分割協議書を作成する場合は、弁護士または行政書士に依頼できます。特に、相続人同士で遺産の分け方に関する意見が異なっている場合は、弁護士への依頼をおすすめします。
8. まとめ 司法書士と税理士は依頼したい業務に応じて使い分けよう
司法書士と税理士では、相談・依頼できる業務の範囲が異なります。司法書士は不動産登記や商業登記、供託など、税理士は税務申告や記帳代行、節税対策などを主に取り扱っています。
相続では、不動産の相続登記は司法書士、相続税申告は税理士への依頼が一般的です。一方、相続人同士でトラブルが生じている場合は、弁護士への相談が適しています。それぞれの専門分野を理解し、相談したい内容に応じて適切な専門家を選びましょう。
(記事は2026年10月1日時点の情報に基づいています)
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