目次

  1. 2. 非嫡出子に相続権はある? 相続分は?
    1. 2-1. 母親に関する相続権|出生により当然に持つ
    2. 2-2. 父親に関する相続権|認知されている場合に限り持つ
    3. 2-3. 非嫡出子の相続分は嫡出子と同じ
    4. 2-4. 遺留分を請求する権利もある
    5. 2-5. 相続税における非嫡出子の取り扱い
  2. 3. 父親の相続権を得るための「認知」の方法
    1. 3-1. 任意認知|届け出による認知と遺言による認知がある
    2. 3-2. 裁判による認知|裁判所の判断により父子関係を認めてもらう
    3. 3-3. 認知の方法はどれが適切か
  3. 4. 非嫡出子も含む相続の進め方
  4. 5. 非嫡出子をめぐって相続でよくあるトラブルと対処法
    1. 5-1. 嫡出子側が遺産分割協議に応じない
    2. 5-2. 嫡出子側から不当に少ない相続分を提示される
    3. 5-3. 預貯金などの遺産を隠される
  5. 6. 相続手続きの完了後に、非嫡出子がいることが判明した場合、どうなる?
  6. 7. 非嫡出子の相続について、弁護士に相談または依頼するメリット
    1. 7-1. 認知されていない非嫡出子にとって最善の方法を検討してもらえる
    2. 7-2. 非嫡出子の相続に関する注意点のアドバイスを受けられる
    3. 7-3. 煩雑な戸籍収集や死後認知の手続きを任せられる
    4. 7-4. 感情的な対立を防ぎ、スムーズに交渉が進められる
    5. 7-5. 遺産分割調停や審判などの裁判手続きを任せられる
  7. 8. 非嫡出子に関してよくある質問
  8. 9. まとめ 非嫡出子(婚外子)が正当な相続権を行使したい場合は弁護士に相談を

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1. 非嫡出子(婚外子)とは?

法律上の「非嫡出子」の定義に加え、嫡出子との違いについて解説します。

1-1. 非嫡出子の定義|嫡出子との違い

「非嫡出子」は「ひちゃくしゅつし」と読み、婚姻関係にない男女から生まれた子を指します(「婚外子」とも言われます)。これに対し、法律上の婚姻関係にある男女間に生まれた子は「嫡出子」と言います。

つまり、非嫡出子と嫡出子の違いは、婚姻関係のある夫婦間に生まれた子どもかどうかという点です。

非嫡出子と嫡出子との違いを図解。婚姻関係の有無が判断基準となる
非嫡出子と嫡出子との違いを図解。婚姻関係の有無が判断基準となる

1-2. 民法上の「嫡出推定」の判断基準

嫡出子として扱われるかどうかは、婚姻関係の有無が判断基準となります。父子関係については、民法は「嫡出推定」という制度を設けています。

嫡出推定とは、結婚している男女から生まれた子について、法律上の父子関係を推定する制度です。民法772条1項に基づき、妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子であると基本的に推定されます。

また、期間による推定が行われます。婚姻の成立の日から200日経過後に生まれた子について夫の子と推定することとし、婚姻の解消の日から300日以内に生まれた子についても、母が前夫以外の男性と再婚したあとに生まれた場合には、再婚後の夫の子と推定されます。

このような民法上の推定を受ける子は、「推定を受ける嫡出子」として扱われます。その父子関係を否定するには、厳格な要件のもとで「嫡出否認の訴え」を家庭裁判所に提起しなければなりません。

なお、妊娠時期に夫婦が事実上の離婚状態であった場合や、遠隔地に居住しており性的関係をもつ機会がなかったことが客観的に明白な場合など、個別の状況に応じて「嫡出推定は及ばない」と判断された裁判例があります

【関連】内縁の相手と子どもは相続人になる? 嫡出子と非嫡出子の相続分についても解説

非嫡出子が持つ相続権および相続分、相続税についての取り扱いについて解説します。

母親との親子関係は、分娩の事実によって当然に発生します。そのため、非嫡出子は、母親の相続において特別な手続きを要することなく、当然に第1順位の相続人としての地位を取得します。

一方、父親との親子関係は父子間に法律上の親子関係が成立している必要があり、民法779条に定められた父親による認知を要します。認知の方法には「任意認知」と「裁判による認知」の2種類があります。それぞれについては後述します。

非嫡出子の法定相続分は、現在では嫡出子と同等です。

かつては非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とされていました。しかし、取り扱いに差を設ける合理的根拠がなく、違憲であるとする2013年の最高裁判所の判断を受け、同年に民法が改正されています。

そのため、子が複数いる場合、それぞれの法定相続分は、嫡出子であろうと非嫡出子であろうと同等とされており、嫡出子か非嫡出子かによる区別はありません。具体的には、相続人が「配偶者と嫡出子1人と非嫡出子1人」の場合、配偶者の相続分が2分の1、嫡出子が4分の1、非嫡出子が4分の1となります。

遺留分とは、相続人の生活保障や共同相続人間の公平の確保などを目的として、被相続人(以下、亡くなった人)の財産から法律上取得することが保障されている最低限の相続分です。

この遺留分を行使できる遺留分権利者は、亡くなった人の配偶者と子、父母や祖父母などの直系尊属です。子については嫡出子か非嫡出子かの区別なく遺留分を請求する権利が認められます。もっとも、非嫡出子は父親からの「認知」が法的にされていなければ遺留分は認められません。

相続税の計算においても、非嫡出子は嫡出子と同じ扱いを受けます。つまり、相続税の基礎控除額である「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の計算では、非嫡出子も法定相続人の数に含まれます

なお、財産を取得した人が亡くなった人の一親等の血族および配偶者以外である場合に、その人の相続税額に2割を加算される、いわゆる「2割加算」もありません。

また、仮に非嫡出子が母親や父親より先に亡くなった場合、非嫡出子に子がいれば、子が相続権を引き継ぐ「代襲相続」のルールが適用されます。つまり、母親や父親の相続分は、嫡出子の場合と同じように非嫡出子の子または孫に相続されます。

認知とは、非嫡出子と父親の間に法律上の父子関係を成立させる制度です。認知の方法としては、次の2種類があります。

任意認知は、父自らが非嫡出子を自分の子であると自発的に認める行為です。この任意認知には、届け出による認知と遺言による認知があります。

【届出による認知】
まず、届出による認知は、戸籍法の定めに従って届け出ることにより、効力が生じます。父が非嫡出子を養育していても、届出がなければ法律上の認知とは認められない点に注意が必要です。

また、父が認知届ではなく、非嫡出子を自分の「嫡出子」として出生届を出し、受理された場合、その届け出には子を自己の子として承認する意思が含まれているとみなされます。そのため、認知届としての効力があると解釈されています。

【遺言による認知】
一方、遺言による認知は、遺言者の死亡時に認知の効力が生じ、原則として認知した子の出生時にさかのぼって親子関係が発生します

ただし、遺言による認知の手続きには、遺言の内容を実現する「遺言執行者」の存在が不可欠です。遺言執行者は、就任後10日以内に市区町村長へ認知の届出を行う必要があります。

なお、成年の子や胎児を認知する場合には、本人または認知される子の母親の承諾が必要です。これらが得られない場合は遺言執行者による認知は完了できません。

裁判による認知とは、父が任意に認知しない場合に、裁判所の判断によって法律上の父子関係を発生させる制度です。この訴えを提起できる者は、子やその孫、ひ孫などの直系卑属、またはその法定代理人です。

法定代理人は、子に意思能力がある場合でも代理して訴えを提起でき、子も意思能力があれば法定代理人の同意なしに自ら訴えることも可能です。認知を求める訴えの場合、父の生存中は父が被告となり、父の死後に認知を求める「死後認知」のケースでは、検察官が被告となります。

裁判による認知は、父の生存中は、子の年齢を問わずいつでも提起できます。しかし、父の死後に認知を受けたい場合は、原則として死亡の日から3年以内に訴えを提起する必要があります。

裁判所が原告の訴えを認め、要求どおりの判決を下す「認容判決」により認知が確定すると、法律上の父子関係が子の出生時にさかのぼって発生します。この効力は第三者にも及ぶため、たとえばほかの子などが認知無効の訴えを提起することはできなくなります。

認知には、父親の自発的な意思に任せる方法と、裁判という強制力をもって行う方法が考えられます。どちらの方法を選択するかは父親の考えや個別の状況によるものの、父親が亡くなる前に認知されれば、子には養育費を請求できるというメリットがあります。

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非嫡出子がいる場合の相続では、認知の有無が非常に重要になります。

相続手続きにおいては、まずは亡くなった人の遺言書の有無を確認したうえで、戸籍を調査し、相続人を確定しなければなりません。特に、離婚歴がある場合などは必ず戸籍を丁寧にさかのぼる必要があります。なぜなら、前妻との間に認知された子がいるかもしれないからです。

亡くなった人も生前は過去のことをなかなか言い出しづらく、近しい家族に対して内緒にしておくケースはよくあります。相続の際は、必ず亡くなった人の出生から死亡時までの戸籍の調査を行うようにしましょう。

また、遺産の分割について相続人間で合意が得られたら、相続人全員で遺産の分け方を合意したことを証明する「遺産分割協議書」を作成することが大切です。

合意が得られなかった場合には、裁判所での調停や訴訟に進むことになります。

相続人を確定し、いざ相続手続きを進めようとしても、非嫡出子と嫡出子の関係性が希薄であったり、すでに対立関係が生じていたりするケースが多くあります。そのような場合、相続の際に次のようなトラブルが生じる可能性があります。

  • 嫡出子側が遺産分割協議に応じない
  • 嫡出子側から不当に少ない相続分を提示される
  • 預貯金などの遺産を隠される

亡くなった人が遺言書を残していない場合、相続財産をどのように分けるかという遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議では、相続人全員の同意が必要です。嫡出子側が感情的になっているケースでは、非嫡出子との話し合いを拒み、遺産分割協議が一向に進まない事態が生じる可能性があります。

遺産分割協議のテーブルについたとしても、嫡出子側が非嫡出子に不当な相続分を提示する可能性があります。たとえば、亡くなった人と生前付き合いがなかった非嫡出子に対して、嫡出子側が「自分は父と生活をともにしていた」などと主張し、法定相続分より少ない相続分を提示するケースが考えられます。

父親と生活をともにしていなかった非嫡出子にとっては、亡くなった人の相続財産を把握することが難しい場合があります。亡くなった人がどの金融機関に口座を保有しているかや有価証券を保有していないか、所有している不動産があるかを把握していない場合、正確な財産額の把握が難しくなります。

情報を持っている相続人に適切な開示を求めつつ、自身も金融機関に相続人として取引履歴の開示を求めるなどして、遺産分割協議で開示された財産に漏れがないかを確認する必要があります。

遺産分割協議は共同相続人全員で行う必要があるため、相続人の一部を除外してなされた協議は原則として無効となります。そのため、相続手続きの完了後に非嫡出子の存在が判明した場合、除外された相続人を含めた再協議が必要です。

もっとも、遺産分割後に認知された非嫡出子が現れた場合、遺産分割協議は有効なまま、法定相続分に相当する金銭の支払いを請求できる「価格請求権」のみが認められるという例外があります(民法910条)。つまり、新たに相続人となった非嫡出子は、ほかの共同相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払いを請求することによって、自身の相続分を確保することとなります。

ただし、先順位の相続人がいない場合にのみ相続権を得られる親や兄弟姉妹など、本来は相続人になり得ない者が遺産を取得していた場合には、すでに成立した遺産分割は例外的に無効となります。

非嫡出子が相続手続きで正当な相続権を行使するのは、簡単なことではありません。このような場合に弁護士に相談や依頼をする主なメリットとして、次の5つが挙げられます。

  • 認知されていない非嫡出子にとって最善の方法を検討してもらえる
  • 非嫡出子の相続に関する注意点のアドバイスを受けられる
  • 煩雑な戸籍収集や死後認知の手続きを任せられる
  • 感情的な対立を防ぎ、スムーズに交渉が進められる
  • 遺産分割調停や審判などの裁判手続きを任せられる

非嫡出子は、父による認知がなされない限り、父との間に法律上の親子関係が成立しないため、父に関する相続権は認められません。

この場合、父の意思による任意認知だけでなく、裁判によって、あるいは死後の訴えによって認知を受けることが可能です。その結果、認知が成立すれば出生の時にさかのぼって相続権が発生します。

そのため、相続権を確保するためには個別の状況に応じて、どのような認知の方法によるのが適切かを判断する必要があります。弁護士に相談のうえ、最善の方法をとることが望ましいでしょう。

遺産分割協議は、共同相続人全員の同意が必要です。そのため、ほかの相続人との感情的な対立などの影響により、非嫡出子にとって本来の相続分より少ない相続分が提示される可能性があります。

そのような場合、自身の相続分を守るためにどういった交渉上の戦略を立て、どのようなかたちで財産取得を希望するのが交渉を有利に進められるかなどを検討することが重要です。調停や訴訟でトラブルとなりやすいポイントを熟知している弁護士に相談すれば、適切なアドバイスを受けられます。

相続手続きでは、まずは相続人を正確に把握することが重要です。相続人を把握するためには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を漏れなく取得する必要があり、場合によっては集めるべき戸籍が膨大な数となります。

そのような戸籍の取得を漏れなく行いつつ、相続税の納付の期限も見据え、場合によっては死後認知など必要な手続きを進める作業は簡単ではありません。こうした場合、早めに弁護士にに相談や依頼をすることで、スムーズな相続手続きが期待できます。

実際の相続手続きにおいて、嫡出子側と非嫡出側の関係性が希薄であったり、すでに対立関係が生じていたりするケースも多いです。相続手続きで嫡出子と非嫡出子が初めてコンタクトをとることになるパターンも少なくありません。

そのような関係性においては、誰が亡くなった人の面倒を見てきたかなど、感情的な面が先立つこともあり、財産分割という経済的かつセンシティブな交渉を進めることのハードルが高くなりがちです。

一方で、相続税申告を見据えながら、遺産分割協議を進めるという目的は、嫡出子、非嫡出子に共通するのが一般的です。そのため、早めに弁護士に代理人として間に入ってもらうことが重要です。その結果、どこに感情的な対立があり、具体的にどの財産をどのように分けるのが現実的な解決なのかについて検討を進めることができます。

当事者の意思による話し合いで遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所での遺産分割調停や遺産分割審判手続きで解決を図ることとなります。

調停手続きは、調停委員の力を借りながら交渉による相手方との合意が必要であり、どのように交渉を進めるかが重要です。そのため、遺産分割調停などのポイントを熟知している弁護士に手続きを任せることで、自身の相続分を確保できる可能性が高まります。

Q. 認知されると戸籍にはどう記載される?

認知された場合、戸籍には認知された子の身分事項欄や、父の身分事項欄に認知に関する事項が記載されます。また、認知によって父子関係が成立すると、氏名や出生年月日、実父母の氏名および実父母との続柄、当該戸籍に入った原因やその年月日などが記載されます。

Q. 非嫡出子と再婚禁止期間の関係は?

女性のみに課されていた100日の再婚禁止期間は、現在は撤廃されています。 女性の再婚禁止期間は、かつて前夫と後夫の嫡出推定の重複を回避することを目的として、100日間と定められていました。

しかし、2024年4月1日施行された民法では、女性が懐胎から出生までの間に2つ以上の婚姻をしていた場合、その子は「出生の直近の婚姻における夫の子」と推定する規定設けられました(民法772条3項)。この規定の新設により、前婚の解消から300日以内であっても、再婚後に生まれた子は後夫の子と推定されるため、父性が重複する事態が生じなくなりました。

Q. 非嫡出子に遺産を相続させたくない場合は、どうすればいい?

非嫡出子に限らず、特定の相続人に相続をさせたくない場合、遺言により「相続分の指定」を行うことで、その相続人に関する相続分をゼロ、あるいは法定相続分より少ない割合に定めることが可能です。

ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」が認められており、遺言のなかで相続させないと定められていても、遺留分に対して不足している分の金額である「遺留分侵害額」に相当する金銭の支払いを請求される可能性があります。

また、法定相続人が相続に関して重大な非行や犯罪行為を行った場合、相続人資格を失う「相続欠格」や、家庭裁判所によって相続権を剥奪される「相続廃除」の処分を受けることがあります。この場合、非嫡出子は相続する権利を持たないことになります。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子を非嫡出子(婚外子)と言います。非嫡出子であっても、認知されている場合は父親の財産を相続する権利を持ち、相続分は嫡出子と同じです。被相続人の死後であっても、裁判所に訴えを起こすことで認知を受けられる可能性もあります。

しかし、実際の相続の場面では非嫡出子と嫡出子が感情的に対立するケースや、嫡出子側から不当な相続分を提示されるケースなどが見受けられます。このように非嫡出子に関する問題は認知の問題に限られず、さまざまな法的、経済的な問題と関係してきます。

また近年、相続に関する法改正が進んでおり、インターネットに掲載されている情報が古くなっているケースも多いです。正しい知識のもとで手続きを進めないと、相続人間でのトラブルが激しくなるおそれもあります。

自身が非嫡出子であり、相続問題について不安を感じている場合や、実際に生じた相続で共同相続人に非嫡出子がいるなど、交渉をスムーズに進められるか不透明な場合は、トラブルを避けるためにも早めに弁護士に相談することをお勧めします。

(記事は2026年8月1日時点の情報に基づいています)

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