相続放棄した家はどうなる? 残された家の保存義務・費用・対処法を解説
相続放棄をすると、家を含む遺産を原則として一切引き継がない扱いになります。ただし、家が残っていると、放棄後でも管理や費用の問題が生じることがあり、老朽化や空き家化を放置した場合には、事故や行政措置につながる可能性もあります。
相続放棄した家がどう扱われるのか、保存義務の範囲、発生し得る費用、清算人の手続き、トラブルを避けるための対処法をわかりやすく整理します。
相続放棄をすると、家を含む遺産を原則として一切引き継がない扱いになります。ただし、家が残っていると、放棄後でも管理や費用の問題が生じることがあり、老朽化や空き家化を放置した場合には、事故や行政措置につながる可能性もあります。
相続放棄した家がどう扱われるのか、保存義務の範囲、発生し得る費用、清算人の手続き、トラブルを避けるための対処法をわかりやすく整理します。
目次
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相続放棄をすると「家は自分とは無関係になる」と考えがちですが、実際にはいくつか注意点があります。家の扱いは、ほかの相続人の有無や相続順位によって変わります。さらに、相続人が誰もいない場合は国庫に移る流れもあります。まずは、基本的な仕組みを整理しましょう。
自分が相続放棄をしても、家の権利が消えるわけではありません。放棄をした人は「初めから相続人でなかった」とみなされます。そのため、次の順位の相続人に権利が移ります。
たとえば、配偶者や子が相続を承認すれば、その人たちが家を相続します。子がいない場合は父母や兄弟姉妹など、法律で定められた相続順位に沿って権利が移ります。
全員が相続放棄した場合や、もともと相続人がいない場合は、家は「誰も相続しない財産」になります。このようなときは、相続財産清算人を選任し、家を含む財産を整理します。
手続きが終わり、債務の支払いなどを済ませても財産が残っていれば、その残余分は国庫に帰属します。相続放棄をした家が最終的に国のものとなるのは、このような流れによるものです。
相続放棄をすると家の所有権や相続人としての地位は失われます。しかし、家に住み続けていたり、鍵を持って管理していたりする人には、一定の「保存義務」が残る場合があります。保存義務は相続放棄の有無に関係なく、第三者へ危険が及ぶのを防ぐために課されるものです。
ここでは、義務が残るケースと具体的な内容を整理します。
相続放棄後の保存義務は、2023年4月の民法改正(新940条) により範囲が見直されました。
【旧民法940条(2023年3月まで)】
相続放棄をした人にも、次の相続人が財産を引き継ぐまで管理義務が残っており、家に住んでいなくても、鍵を持っているだけで「財産を管理すべき立場」と解釈されることがありました。
【新民法940条(2023年4月〜)】
相続放棄をした人のうち、以下の場合にのみ管理義務が残る仕組みに変わりました。
・その家に住んでいる
・実際に利用している(実質的な占有)
つまり、相続放棄をしたあとも家に住んでいる人は、その家が第三者に被害を与えないよう最低限の管理をする必要があります。一方、家に住んでおらず、占有もしていない人は保存義務を負いません。
【具体例(外壁が壊れたケース)】
・あなたが相続放棄後も家に住んでいる
外壁が落下して通行人にケガをさせた場合、「管理を怠った」と判断され、損害賠償を請求される可能性があります。
・あなたが家に住んでおらず、鍵も管理していない
占有も管理もしていない場合は、通常、保存義務の対象にはなりません。ただし、名義が被相続人のままで倒壊の危険があると判断されれば、行政が状況を調査することがあります。
このように、相続放棄後の「占有の有無」が義務を分ける重要なポイントです。
保存義務とは、家を「現状維持するための最低限の管理」 のことを指します。占有している人には、以下のような対応が求められます。
これらを放置した結果、家が崩落したり外壁が飛散したりして第三者に被害が出れば、占有者が損害賠償責任を負う可能性があります。
相続放棄をしても「占有している状態である限り、管理を怠れば責任を負う」という点を押さえておきましょう。
相続放棄をすると、原則として固定資産税を支払う義務はありません。しかし、実際には以下のケースで負担が発生する可能性があります。
実際の課税はケースによって異なり、自治体の判断が関わることもありますが、「占有している者が事実上の管理者」とみなされると、一定の負担が生じる可能性があります。
相続放棄をしても「占有している状況を続けるかどうか」で、負担の有無が大きく変わる点に注意が必要です。
相続放棄をする前後には、保存義務の範囲を超える行為を行うと、法律上「財産を処分した」とみなされ、相続放棄が認められない可能性があります。
とくに次のような行為は、処分行為として判断されるおそれがあります。
【避けるべき行為の例】
【高額な家財道具や遺品の処分・形見分】
これらは、建物や財産の価値を変動させる行為と判断されやすく、「保存」ではなく「処分」と評価される可能性があります。
一方で、日常生活レベルの小規模な処分(例:腐敗した食品の廃棄や破損した雑品の整理など)であれば、保存行為の範囲内として認められる余地もあります。ただし、金銭的価値が高い物の処分や、建物の構造・価値に影響を与える行為は避けるべきです。
相続放棄を検討している段階では、財産の現状を維持する「保存行為」にとどめることが原則です。次の相続人が決まるか、相続財産清算人が選任されるまでは、慎重な対応を心がけましょう。
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相続の相談が出来る弁護士を探す相続放棄をすると家の所有権は失われるため、家に関わる費用を負担しないのが原則です。ただし、「家を占有しているかどうか」「相続財産清算人が選任されているか」によって例外が生じることがあります。家にどのような費用がかかり、誰が負担するのかを整理します。
固定資産税は、毎年1月1日時点で課税台帳に登録されている名義人に対して課されるのが原則です。相続放棄をしても、名義変更が済んでいなければ、引き続き被相続人名義のまま納税通知書が届いてしまうことになりますが、実際の納税義務は相続放棄をしていない他の相続人が負います。
相続放棄をした人が家に住み続けていたり、実質的に管理しているような場合でも、その人個人に固定資産税が課されるわけではありません。ただし、こうした占有者に対して、自治体が相続人代表者の指定や相続財産清算人の選任などの管理責任を促す通知を送るなど、対応を求めるケースはあります。
また、相続人全員が相続放棄をして相続財産清算人が選任されている場合には、固定資産税は相続財産の中から支払われることになります。
家が倒壊しそうな状態で、占有者がそのまま放置すると危険がある場合、保存義務の一環として解体費用を求められる可能性があります。この場合、相続放棄をしていても、占有者である限り第三者に危害が及ばないよう最低限の安全確保が求められます。
一方、相続財産清算人がいるときは、建物の解体が必要であれば相続財産から解体費用を支出します。占有していない人に個人的な負担が生じることは通常ありません。
家が「特定空き家」と判断され行政が取り壊しを行った場合でも、相続放棄した人は法律上の所有者ではありません。
一般的には、行政代執行費の請求対象は所有者とされるため、相続放棄者が直接費用を負担する場面は多くないでしょう。もっとも、管理状況や自治体の運用によって扱いが異なる可能性もあるため、具体的な事案では専門家に確認する必要があります。
相続財産清算人が選任されると、報酬や手続きにかかる費用は相続財産から支払われるのが原則です。
ただし、家を含む相続財産が不足している場合、申立人が予納金として費用を負担することがある 点には注意が必要です。特に、不動産以外の資産がほとんど残っていないケースでは、申立人が一定額を用意しなければならない場合があります。
相続放棄をすると家の所有権を失います。そのため、「家だけを残してほかの財産を放棄する」という選択はできません。相続放棄後に家をどう扱うかは、引き継ぐ人の有無や、相続財産清算人が選任されているかどうかで対応が変わります。
相続放棄をすると、家を含むすべての相続財産との関係が法律上切れます。相続放棄をした人がそのまま家に住み続けても、法的には「他人の家に住んでいる状態」 になります。
家に住み続けたい場合は以下の方法が必要です。
・家を相続した別の相続人から買い戻す
・相続財産清算人が選任された場合は、清算人から購入する
また、「限定承認」を用いてプラス財産を残す方法もありますが、相続人全員の同意が必要で、実務では手続きが複雑になりがちです。
相続放棄を検討している段階で、家を勝手に売却・解体することは絶対に避けなければいけません。これらの行為は「財産の処分」にあたり、相続放棄が認められなくなる、または放棄の効果が否定されるおそれがあるためです。
解体や売却をしたい場合は、まず家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申立てる必要があります。清算人が選任されると、その人が家の売却や解体、債務の支払いなどの清算を進めます。
最終的に財産が残った場合は国庫に帰属しますが、放置しているだけでは国が自動的に引き取るわけではありません。さらに、家を長期間放置すると「特定空き家」と判断され、行政から解体費を請求される可能性もあります。
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相続の相談が出来る弁護士を探す相続放棄によって相続人がいなくなると、家を含む相続財産を管理する人が存在しない状態になります。実際に家を利用する人もいなければ、適切な管理が行われず、老朽化や周辺への危険が問題となることもあるでしょう。このような場合には、相続財産清算人を選任し、財産を整理する手続きへ進むことが求められます。
相続人全員が相続放棄した場合、家を含む相続財産を管理する主体が存在しなくなります。誰も占有していなければ、建物の維持や安全確保を担う人がいないため、放置されるおそれが生じます。このような状況では、利害関係人などが家庭裁判所へ申立てを行い、相続財産清算人を選任してもらうことが必要です。相続財産清算人には通常、弁護士などの専門家が選任されるとされています。
選任後は、相続財産清算人が家を含む相続財産全体を管理し、適切な処分や清算の手続きを進める役割を担うことになります。
相続財産清算人は、まず家や土地などの財産の状況を調査し、債権者への通知を行います。その後、必要な弁済を進めながら、家については買い手に売却し、代金を清算に充てる流れです。
売却が難しい場合には、建物を解体したうえで更地として処分されることもあり、固定資産税や管理費などについては、相続財産の範囲内で支払われることになります。
相続財産清算人によって財産の処分と債務の弁済がすべて完了したあと、資金が残る場合があります。この残余財産については、最終的に国に引き渡され、国庫に帰属する扱いとなります。
家の売却代金などが得られた場合でも、まずは債権者への支払いと清算手続きに必要な費用が優先して充当されます。そのうえで残った部分のみが国に渡る仕組みとなっており、自動的にすべてが国に移るわけではありません。
相続放棄をした後であっても、家をそのまま放置すると、思いがけない負担や責任が生じることがあります。とくに、管理する人がはっきりしない空き家は、事故や行政からの指導、税金、近隣トラブルなど、さまざまな問題の火種になりかねない存在です。ここでは、適切な処理をしなかった場合にどのようなリスクがあるのかを整理して解説します。
空き家の屋根や外壁が剥がれて落下し、通行人がけがを負う事故や、倒壊・部材の飛散によって周囲の建物や車両に被害が出ることもあります。
このような場合、家を現に占有していた人が「危険を防ぐための管理を怠った」と判断され、損害賠償を請求されるおそれがあります。
改正民法940条では、「現に占有している者」に保存義務があると定められており、実際に住んでいたうえで、日常的に管理していたような場合には、相続放棄をしていても“事実上の管理者”として責任を問われる可能性があります。
事故が起きた後に「相続放棄をしているので無関係」と主張しても、責任を免れられない場合がある点には十分注意が必要です。
老朽化が進んだ空き家については、自治体が空き家対策の一環として、所有者や管理者に助言や指導を行う制度があります。状況の改善が見られない場合には、「特定空き家」に指定され、勧告や命令が出されることもあります。
さらに、それでも対応されない場合は、行政代執行により建物が取り壊され、その費用が法的な所有者に請求されるケースもあります。ただし、相続放棄をした人が法的な所有者とみなされることは通常なく、費用を直接請求されるケースは極めて稀です。
もっとも、実際にその家を占有していたり、管理していた事実がある場合には、「事実上の管理者」として責任を問われるおそれがあるため、注意が必要です。行政から管理を求める通知が届くこともあり、状況によっては何らかの対応を迫られることもあります。
原則として、相続放棄をした人は、被相続人名義の家に対する固定資産税を支払う義務は負いません。
しかし、放棄後もその家に住み続けている、鍵を預かって管理しているなどの事情があると、「実質的な所有者」として扱われ、課税の対象とされる可能性もあります。自治体は、名義だけでなく利用実態を踏まえて判断することもあるため、「放棄したから税金とは無関係」とは言い切れないのが実情です。
家を放置すると、庭や敷地の雑草が伸び放題になる、ごみが不法投棄される、小動物が住み着くといった状況が生じやすくなります。外壁や窓ガラスの破損が進めば、落下や火災のリスクも高まるでしょう。
こうした状態は、景観や安全面で近隣住民の不安や不満の原因となりやすく、「何とかしてほしい」といった苦情や連絡が来ることも十分に考えられます。相続放棄後も実質的に占有している場合には、近隣との関係悪化というリスクも意識しておく必要があるでしょう。
家を含む相続財産が長期間放置され、管理者がいない状態が続くと、利害関係人や自治体が家庭裁判所に働きかける場合があります。
その結果、裁判所が相続財産清算人の選任を求める流れになることがあります。清算人が選任されると、家の管理・処分・債務の整理などの手続きが進んでいきますが、申立人が予納金を負担しなければならない場面もあり得るでしょう。経済的な負担が突然生じる可能性がある点にも注意が必要です。
空き家が深刻に老朽化しており、修繕や補強に相当な費用がかかると見込まれる場合は、相続放棄を選ぶほうが合理的なことがあります。とくに、外壁の破損や雨漏りが進んでいる家は、放置するほどリスクが増え、最終的に解体費まで負担する可能性が生じるでしょう。
また、固定資産税や草刈り・清掃・見回りといった管理コストが継続的に発生する点も見逃せません。自分が住む予定がなく、売却先も見つかりにくい地域の空き家であれば、「持っているだけで負担が増えていく」という状況に陥りやすいと言えます。
さらに、相続しても利用価値がなく、将来にわたって維持する理由が乏しい場合には、早い段階で放棄を検討することが被害やトラブルの予防につながります。家の状態・費用・活用見込みを総合的に踏まえて判断することが大切です。
相続人が誰も家を引き継がない場合でも、建物の老朽化が進んで危険な状態であれば、解体が必要になることがあります。原則として、相続放棄をした人が自分のお金で解体費を負担する義務はありません。
ただし、家を実際に占有していた人がいる場合には、管理を怠った結果として行政代執行を受け、費用を請求される可能性があります。相続財産清算人が選任されているときは、清算人が相続財産から解体費を支出する流れになります。
相続放棄をすると、法律上はその家を相続していない扱いになります。放棄後も住み続けると、「他人の財産を占有している状態」と評価され、固定資産税の負担や管理責任を問われるおそれがあります。また、次に相続権が移った人との間で、明け渡しや使用料について紛争になるケースも考えられるため、放棄後の居住は避けるほうが安全です。
相続放棄をしたあと、自分の判断で家を解体することはできません。勝手に解体すると「処分行為」をしたとみなされ、相続放棄の効力が否定される可能性があります。家を解体したい場合は、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらい、清算人が家屋の売却や解体を進める流れになります。費用は原則として相続財産から支出され、財産が不足する場合には清算人から追加の負担を求められることもあります。
相続放棄をすると家を引き継ぐ義務はなくなりますが、放棄した直後の扱い方を誤ると、管理責任や思わぬ費用負担が生じるおそれがあります。とくに、家を実際に使っていた場合には保存義務が残ることがあり、事故や行政措置の原因にもなり得ます。
また、家を解体・処分したいときは、勝手に行動するのではなく、相続財産清算人を選任してもらう手続きが必要です。放置すればするほど問題は大きくなるため、家の状態や費用、今後の利用見込みを早めに整理し、必要に応じて法律の専門家へ相談することが安全な方法と言えるでしょう。
(記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています)
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