はじめて書く相続税申告書。書き方は意外にもシンプル!?
人生の中で家族の遺産を相続する経験は多いものではありません。例えば、結婚をしている人の場合、人生で自分と配偶者の両親の4回と、配偶者を含めた計5回、相続を経験する可能性があるといわれます。はじめて相続税の申告書を書く場合には、どう書いたらいいのかと悩む方も多いと思います。今回は、相続税の申告書の書き方に絞ってみていきましょう。
人生の中で家族の遺産を相続する経験は多いものではありません。例えば、結婚をしている人の場合、人生で自分と配偶者の両親の4回と、配偶者を含めた計5回、相続を経験する可能性があるといわれます。はじめて相続税の申告書を書く場合には、どう書いたらいいのかと悩む方も多いと思います。今回は、相続税の申告書の書き方に絞ってみていきましょう。
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一見難しそうにみえる相続税の申告書の書き方は、意外にもシンプルです。申告書に記載する金額は、計算結果をまとめる「結論」です。その結論のもとになるのが、添付資料の作成や税額計算の基となる評価額の算定で、そちらに労力と時間を要します。
相続する人は全員、相続税の申告書を提出しなければならないのか、それとも提出しなくてもよいのか?よくわからない、という方のために、ここではカンタンにご紹介します。
申告書を提出すべき人は、次のとおりです。
亡くなった人の財産をもらった人です。相続とは、亡くなった人の財産を相続人がもらうことをいいます。遺贈は、亡くなった人が生前に書いた遺言書によって財産をもらうことを指します。つまり、亡くなった人の財産をもらった人、というのが前提で、次の1-2,1-3,1-4などに当てはまる人は、申告書を提出する必要があります。
すべての財産の合計額は、小規模宅地等の特例などの減額をする前の金額で計算します。この特例は、一定の要件を満たした土地の評価額を50%~80%減額することができる、という内容です。
一方、基礎控除額はご存知の方も多いと思います。「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。法定相続人とは、法律で決められた相続人のことです。亡くなった人の一生分の戸籍謄本を確認することで、法定相続人およびその数が確定します。
相続時精算課税とは、2,500万円まで贈与税がかからずに贈与ができる制度です。
「贈与」というのは、財産をあげる人ももらう人も、両方とも生きているときに使う言葉です。
亡くなってから財産をもらうのは、相続か遺贈といいます。この相続時精算課税の制度を使って贈与を受けた人は、たとえ相続の際に1円も財産をもらわなかったとしても、相続税の申告をしなければなりません。
1-2の基礎控除額を超えていたとしても、配偶者の税額軽減という規定を使うことで、税額がゼロになる場合があります。配偶者の税額軽減とは、配偶者は1億6,000万円まで財産をもらっても相続税はかからない、というルールです。(ただし、この規定を使う場合には申告が必要になります。)
ほかには、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除などがあります。
相次相続控除は、10年以内に相次いで相続があった場合に使える控除です。
相続税の申告書は第1表から第15表まであります。主だったものは国税庁のウェブサイトに書かれていますが、どのような申告書があるのか以下に列記します。
実際に申告書の下書きをする際には、国税庁の手引や市販の書籍などに示されている記載順序以外で書いても問題はありません。
順序よりも、それぞれの書類(申告書、計算書、明細書、種類別価額表など)がどんな役割をもっているか、どう繋がっているかを知っておくことの方が、実際の申告書作成には役に立つと思います。
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相続の相談が出来る税理士を探す相続税の申告書を提出する場合に、必ず提出する書類から順にみていきましょう。
第1表は、税額計算の「結論」です。誰がいくら納税するのかを記載するものです。
この第1表は、計算結果をまとめた「結論」なので一番最後に完成するものですが、一部分は計算をする前に書くことができます。
例えば、相続開始年月日(亡くなった日)、被相続人(亡くなった人)の氏名、生年月日、住所など、第1表の上の方の部分については、一番はじめに書くことができます。
書き方の詳細については、「相続税の申告のしかた」(令和元年分用)P.77~P.78に載っています。
第2表は、相続税の総額を計算するものです。
第2表の②~⑤については、法定相続人や法定相続分が確定すれば記入することができます。
②の基礎控除額は、法定相続人の数によってかわります。亡くなった人の一生分の戸籍謄本の収集が終わり、法定相続人が確定したところで、基礎控除額が決定します。
なお、亡くなった人の一生分の戸籍謄本というのは、その人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本をいいます。
出生からというのは、その人が生まれた日にすでに存在していた戸籍謄本、つまり両親が筆頭となっている戸籍謄本や、昔のものであれば祖父や伯父などが筆頭となっている戸籍謄本のことをいいます。
また、平成に入ってからコンピュータ化が進み、改製されています。同じ内容の戸籍謄本でも、一生分が繋がっている必要がありますので、改製前後のものが必要です。①課税価格の合計額は、財産の評価などの計算が終わったあとに記入します。
第11表は、相続財産を記載する明細書です。
ここに、亡くなった人のもっていた財産の明細を記載していきます。
第11表は、このあとの第15表に集計をしていくので、一般的には第15表に集計しやすい順番で記入していきます。具体的には、土地⇒家屋⇒有価証券⇒現金・預貯金といった順番です。
なお、最初に書く土地ですが、小規模宅地等の特例を適用した後の減額後の金額を記載します。
第13表は、亡くなった人の債務と葬式費用を記入する明細書です。いずれも一定の債務や費用については、財産の金額から控除することができます。
亡くなった人(被相続人)が、生前に支払っていなかったものは、債務として財産の金額から引くことができます。具体的には、固定資産税、住民税、医療費、借入金などのうち、亡くなった時点で未払いだったものです。生前にすでに支払っているものは、控除できる債務には入りません。
葬式費用は、亡くなった方の葬儀のときにかかった費用です。
債務も葬式費用も、なんでも該当するわけではありません。たとえば、墓地の購入や法事の費用などは対象となりません。
第15表は、財産と債務を種類別に集計するものです。ここまで作成してきた第11表や第13表などで集計したものを、種類別に記入をします。
第1、2、11、13、15表は、相続税の申告をする場合に必ず作成するものです。ここからは、場合によって提出するものをみていきましょう。
たくさんありますので、多くの場合に必要となるものをご紹介します。
なお、実際の申告書は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
相続税が2割増しになる人が財産をもらった場合に作成する書類です。
2割増しになる人とは、亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となる場合や相続人ではない孫などが遺言によって財産をもらった場合などになります。
第4表の2と第14表は、亡くなった日より前の3年以内に贈与があった場合に作成する書類です。
第4表の2(暦年課税分の贈与税額控除額の計算書)と第14表(純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額(以下省略)の明細書)のふたつは、基本的にはセットで必要なものです。
ただし、亡くなった年にあった贈与については、贈与税はかかりません。
したがって、亡くなった日の前3年以内に贈与があった場合でも、その贈与が亡くなった年のみの場合には、第4表の2を作成する必要はありません。
配偶者の税額軽減の規定を適用する場合に作成します。
財産をもらった法定相続人が、未成年者や障害者に該当する場合に作成する書類です。
相続人が満18歳になるまでの年数1年につき10万円が控除できます。
相次相続控除を受ける場合に作成する書類です。
亡くなった人が亡くなる日より前の10年以内に、相続により財産を取得し、そのときに相続税を納めていた場合に、相続人のそれぞれの税額から控除ができます。
死亡保険金は、法律上相続財産ではありませんが、相続税の計算では相続財産とみなして計算に入れます。
この書類では、受け取った保険金と、非課税の金額の計算をし、課税される金額を出します。
死亡保険金は受取人になっている人がもらいますが、受取人が相続人でない場合には、非課税の計算に注意が必要です。この明細書を作成する前に、契約内容をよく確認する必要があります。
死亡退職金を受け取った場合に作成する書類です。
この書類では、支給を受けた死亡退職金と非課税の金額の計算をし、課税される金額を出します。
土地の評価明細書などで土地の評価額を計算したあとに、小規模宅地等の特例の減額規定を受ける場合に作成します。
このほかにも、外国税額控除、人格のない社団等が遺贈により財産をもらった場合、納税猶予の適用を受ける場合などに作成する書類があります。
また、これらの申告書類のほかに、計算のもとになった評価明細書や添付書類などが必要となります。
今回は、相続税申告書の書き方についてご説明しました。これまで聞いたことのない言葉を調べたり、記入する数字について悩んだり調べたりしながら、すでにたくさんの時間や労力を費やした、という方もいらっしゃるかもしれません。
相続税の申告にあたっては、専門家である税理士であっても、人によっては相続税額が変わる、といわれるほど深いものです。
申告書の書き方はシンプルですが、そこにいたる計算過程には大変な労力と、経験や知識を要します。
いざ相続が起こってからでは、10カ月という申告期限の中で対処しなければなりません。過ぎればペナルティーや受けられたはずの優遇税制が受けられなくなってしまいます。
早くから準備をすることに越したことはないのは、きっと誰もがご存知のことと思います。そこでおススメしたいことが一つあります。
それは、「税金の試算」です。試算をするということは、生きている間に財産の整理ができます。試算をし生前に対策をおこなっておけば、余計な税金を払わなくてすみます。
「財産」について話し合うというよりは、税金の試算をつうじて「将来の節税」について話し合ってみるのはいかがでしょうか。
正しい節税ができれば余分な税金を払うことなく、次世代へそれだけ多くの財産を残していくことができます。
(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)
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