相続税400万円が返ってきた! 「払いすぎ」に要注意【相続税の怖~い話】

ハートランド税理士法人の税理士が、実際の相談事例をもとに「相続税の怖い話」について解説します。今回のテーマは「払い過ぎた相続税の還付」です。特に土地を相続したときに「払いすぎ」が起こりがちなのですが、もっと安くできたとしても税務署が教えてくれるわけではありません。では、どのように対応すればよいのでしょうか?事例とともに見ていきましょう。
ハートランド税理士法人の税理士が、実際の相談事例をもとに「相続税の怖い話」について解説します。今回のテーマは「払い過ぎた相続税の還付」です。特に土地を相続したときに「払いすぎ」が起こりがちなのですが、もっと安くできたとしても税務署が教えてくれるわけではありません。では、どのように対応すればよいのでしょうか?事例とともに見ていきましょう。
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「相続税の還付が受けられるか調べてほしい」
そんな相談で事務所を訪れたのは、東京都23区在住の会社員男性(54歳)でした。
相談者は、地主だった父親から土地を含め、総額3億円を超える遺産を相続しました。以前から付き合いのあった税理士に依頼して相続税申告を終えた後、知人から「土地の評価額は税理士によって大きく変わる」と聞かされたそうです。
「土地をもっと安く評価してもらえたら、相続税も安くできたはず。自分は払い過ぎたのでは……」と不安を感じたことが相談のきっかけでした。
土地の評価には専門的な知識と経験が求められるため、税理士の判断によって評価額に大きな差が生じることがあります。そのため、「10人の税理士がいれば、10通りの納税額がある」と言われるほど、税理士の手腕が重要になります。結果として相続税が数百万円や数千万円ほども変わることがあります。
実際に、相談者の申告書類を、私が確認したところ、減額できる要素が多数見つかりました。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
相続税の評価は、国税庁の「財産評価基本通達」に基づいて算出されます。しかし、不動産の評価額は一律ではなく、評価方法や土地の条件によって評価額が変わります。例えば、三角形やL字型の不整形地、接道が狭い土地、建築制限のある土地、借地権や地役権が設定された土地などは、利用価値が制限されるため、本来の評価額よりも下がるべき場合があります。
こうした要素を適切に反映するには、机上の計算だけでなく、現地調査や役所調査を行うことが不可欠です。場合によっては不動産鑑定士による鑑定評価を活用し、より実態に即した評価を行うことが必要です。
実は相続税申告について経験がほとんどないという税理士も少なくありません。
まず相続税は税理士試験では選択科目で、必須ではありません。従って、相続税について何も勉強せずに試験に合格することができます。
また、税理士の業務で多いのは、法人や個人事業主の顧問となり、税額の計算や税金の申告をすることです。相続税の実務を担うことは多くありません。
そもそも、相続には「基礎控除」という制度があり、一定額以上の財産を相続した人しか相続税を納める必要がありません。相続税申告が必要な方の割合は全体の約8%ほどで、相続税申告の依頼案件自体も多いわけでもありません。
特に、今回のような不動産の評価は税理士の知識や経験によって大きく左右されます。減額要素を見逃すと、本来よりも高い相続税を支払うことになりかねません。せっかく税理士に依頼したにもかかわらず、知らず知らずのうちに税額を過大に支払ってしまったというケースが発生するのです。
相談者のケースでは、当初の土地評価額は約6250万円と計算されていましたが、最終的には約4750万円まで減額できました。新しい評価額に基づいて税務署に更正の請求(税金を取り戻す手続き)をした結果、払い過ぎていた約400万円の還付が認められました。
「ありがとうございます!これほど税金が戻ってくるのですね・・・!これなら、当初より相続税申告に強い税理士に依頼すればよかったです・・・」
なお、払い過ぎた相続税の還付期限は、相続日から5年10カ月以内です。
現世代で過大な土地評価の見直しをしないと、次の世代が相続する際もそのままの評価を採用して不当に高い相続税を支払ってしまうリスクが高まります。予め相続財産の評価を適切に下げておけば、次世代の相続税負担も減らすことができる可能性が高くなります。
土地評価は専門性が非常に高い分野です。もし付き合いのある顧問税理士がいたとしても、申告前に相続税に強い税理士にセカンドオピニオンを受けるとよいでしょう。
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相続の相談が出来る税理士を探す土地評価額を大きく左右する要素としては、他にも「小規模宅地等の特例」という制度があります。これは亡くなった人が自宅などとして使っていた土地については、配偶者か亡くなった方と同居するなどしていた親族が相続した場合、土地の評価額を最大で8割減額できるという特例で、相続税の減税効果は非常に大きいです。
そんなお得な制度にもかかわらず、「本当は適用できたのに活用するのを忘れた」「申告内容を間違えた」というケースもあります。
しかも、土地の評価額を間違えた場合と異なり、小規模宅地等の特例は原則として当初の申告内容を納税者の都合で後から変更することができません。もし特例の適用を申告しないで後から「適用できたのに……」と気付いても遅いのです。
相続税申告は、一生のうちに何度も経験する出来事ではありません。そして、相続税を過大に納めたとしても、税務署からお知らせ文書などが来ることがないため、ただ待っているだけでは税金が戻ってくることはありません。
また、相続税の相談は税理士であれば誰でもいいというわけではありません。先人達の築き上げてきた財産を守るためにも相続に精通した税理士に依頼することを強くお勧めします。
(記事は2025年3月1日時点の情報に基づいています。物語は税理士の実体験に基づいた創作です)
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