タンス預金はなぜバレる? 発覚した場合のペナルティとは【本当にあった相続の怖い話】

ハートランド税理士法人の税理士が、実際の相談事例をもとに「相続の怖い話」について解説します。今回のテーマは「タンス預金」です。国内に眠るタンス預金は60兆円にのぼるとも言われています。相続の際、「タンス預金は税務署に申告しなくてもバレない」という話を耳にすることもありますが、それほど甘くありません。悪質なケースは刑事罰の対象になり、大きなリスクを伴います。具体的な事例をもとに、その仕組みと注意点を解説します。
ハートランド税理士法人の税理士が、実際の相談事例をもとに「相続の怖い話」について解説します。今回のテーマは「タンス預金」です。国内に眠るタンス預金は60兆円にのぼるとも言われています。相続の際、「タンス預金は税務署に申告しなくてもバレない」という話を耳にすることもありますが、それほど甘くありません。悪質なケースは刑事罰の対象になり、大きなリスクを伴います。具体的な事例をもとに、その仕組みと注意点を解説します。
「相続会議」の税理士検索サービスで
「タンス預金は申告しなくてもバレないですか?」
事務所を訪れた相談者は、神奈川県在住の専業主婦(60歳)。会社経営者である夫(75歳)と暮らす専業主婦の方で、将来の自身の相続税申告に備えて相続税の試算をしてほしいというご依頼でした。
財産を確認したところ、主な資産は不動産、自社株式、生命保険、預貯金でした。ただし、それとは別に、自宅にタンス預金として1000万円の現金を保管していることがわかりました。
「ご近所さんの話だと、『税務署は国民一人一人の財産を点検できるわけがないよ』と言っていましたが、実際のところどうなのでしょうか」
タンス預金はれっきとした相続財産であり、他の金融資産と同様に申告対象に含めなければなりません。仮に申告漏れが意図的でなかった場合でも、税務署の調査によって判明すれば、過少申告加算税や重加算税などの追徴課税が科される可能性があります。
相続税には、税務署が申告内容を調査し、追徴課税などを行うことができる期間が定められています。通常は相続税の申告期限から5年間ですが、財産を意図的に隠すなど悪質な申告漏れがあった場合には、7年まで遡って調査・課税されることがあります。
相続税申告のうち、税務調査が行われる割合は約20%程度とされていますが、明らかに不自然な資金移動があれば、選定される可能性はさらに高くなります。
よくある誤解として、「申告さえしておけば、内容まで詳しく点検されることはない」といった認識がありますが、それは大きな間違いです。国税庁には適正な相続税額を算出するための情報と権限が与えられています。例えば、財産総額3億円の人が亡くなる直前に2億円を現金で引き出し、残る1億円分のみを申告したとしても、税務署はその申告額を鵜呑みにはしません。
国税庁にはKSK(国税総合管理システム)というシステムがあり、ここには納税者の所得や過去の申告実績、相続した遺産額、不動産所有・売却状況、生命保険金の受取状況など財産に関するあらゆる情報が入っています。このデータベースで情報を一元管理し、合理的に算出された想定金額と実際の申告額に差があればあるほど、申告漏れを疑われ、税務調査の対象になりやすいです。
さらに、国には調査権限が認められており、相続人や口座名義人の同意がなくても、調査対象者の預金の入出金履歴や貸金庫の契約状況などを金融機関に照会して点検することができます。銀行には過去10年間の取引履歴が保管されているといわれていますし、通帳が残っていればもっと過去に遡って点検される可能性はあります。
特に、死亡直前の大口引き出しや、相続後に相続人の口座へ不自然な多額の入金がある場合には、その資金の使途を厳しく追及されます。使途不明金があればタンス預金の可能性を疑われ、調査対象に選ばれやすくなります。国税庁は相続財産の把握に対して強い権限を持っているため、調査対象者の家宅捜索をすることもできます。
税務調査の連絡が納税者に直接届いた場合は、顧問税理士がいる場合には速やかに連絡し、今後の対応について相談することが重要です。
「なるほど・・・国のタンス預金の調べ方についてわかりました。ちなみに亡くなった本人だけでなく、家族の通帳も点検されるのでしょうか」
税務調査が行われれば、相続人の通帳も確認されます。とりわけ、申告後にタンス預金を自身の口座に入金するケースがあるので、相続発生後から税務調査が行われるまでの期間に相続人の口座に多額の入金がないかの点検も行われます。亡くなった本人が貸金庫を所有しているなら、そちらも実地調査されます。
国内に眠るタンス預金は、60兆円近いとも言われています。たしかに2024年7月には新紙幣が発行されましたが、旧紙幣も引き続き法定通貨として使用可能であり、直ちに使用制限が生じるわけではありません。
ただし、旧紙幣を銀行で新紙幣に交換したり、預け入れたりする動きが一定程度見られる可能性はあります。そうした取引の一部は銀行の記録に残るため、結果として資金の流動履歴を通じてタンス預金の一端が把握されるケースも出てくるかもしれません。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る税理士を探すこれまで述べたように、タンス預金は国の調査によって高確率で発覚します。
そもそも意図的にタンス預金を申告しないことは単なる脱税です。追徴課税などの重たいペナルティだけでなく、金額や悪質性によっては刑事罰の対象にもなります。タンス預金を隠すことは重大なリスクを伴うので、正確な申告と適法な節税対策を講じることが、安全で合理的な選択肢となります。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています。物語は税理士の実体験に基づいた創作です)
「相続会議」の税理士検索サービスで