家族信託の無料相談先7選 相談できる内容や依頼先の選び方まで解説
近年、家族信託コンサルティングを看板として掲げている専門家が増えつつあるなかで、家族信託に関する疑問をどこに相談すべきか悩む方も多いと思います。専門家によってアプローチ方法や得意な領域に違いがあります。依頼する専門家を探すにあたり、専門家ごとの違いから無料相談先の選び方、留意点まで司法書士が解説します。
近年、家族信託コンサルティングを看板として掲げている専門家が増えつつあるなかで、家族信託に関する疑問をどこに相談すべきか悩む方も多いと思います。専門家によってアプローチ方法や得意な領域に違いがあります。依頼する専門家を探すにあたり、専門家ごとの違いから無料相談先の選び方、留意点まで司法書士が解説します。
目次
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家族信託とは財産管理の一手法で、財産の所有者が認知症を発症した場合や介護が必要になった場合などに備え、信頼できる家族にあらかじめ財産の管理や処分を任せるように手配する制度です。
家族信託について無料相談できる相手としては、以下の7例が挙げられます。
特に司法書士、弁護士、税理士、行政書士に相談する際は、家族信託サポートの実績があるかどうかを確認しておくことをお勧めします。加えて、継続的なアフターフォローを実施している場合は、出口を見据えた対策が期待できるため、実際に依頼をする際に安心できるはずです。
司法書士は不動産登記のプロフェッショナルです。信託財産に不動産が含まれている場合は信託登記が必要になりますが、司法書士は信託登記の入り口から出口までをワンストップで対応できますし、登記の観点から信託契約書を設計する能力が特に優れています。
また、司法書士会では家族信託の継続的なフォローを担うことを倫理規定に盛り込んでおり、業界全体として家族信託へのサポートに力を入れています。
司法書士には、同じく本人以外の人間に財産管理を任せる方法である成年後見制度が始まったときから、成年後見業務に積極的に取り組んできた歴史があります。そのため、成年後見制度と家族信託を比較しながら相談できる点が魅力です。
弁護士はトラブル予防の観点から法的なアドバイスを提供します。特に相続紛争が予想される場合、将来の法的紛争を予防し、有利に進めるためのアドバイスを受けられます。また、相続紛争に発展した場合は、必要に応じて、代理人として訴訟行為を依頼できることも大きなメリットです。
税理士には相続税のシミュレーションや節税対策についても相談できます。また、収益不動産を家族信託した場合には、契約締結後に毎年「信託計算書」という書類を税務署に提出する必要があり、その作成も依頼できます。
一方で、信託契約書作成などの業務は、ほかの士業と連携しているケースが多いと言えます。
行政書士は、主に官公署に提出する申請書類の作成および提出を行う専門家です。家族信託においては、信託契約書の作成などに対応できます。
行政書士はほかの専門家に比べて費用が節約できる傾向にあります。ただ、信託財産に不動産がある場合などは、別途で司法書士に依頼する必要があり、その分の費用がかかる点に注意が必要です。
無料で相談できるという意味では、自治体の相談窓口も活用できます。自治体によっては弁護士や司法書士による法律相談を実施していることがあります。ただし、相談窓口の担当専門家の多くは、家族信託に詳しいわけではありません。
日本司法支援センター 法テラスでは、1回あたり30分程度の法律相談を3回まで、無料で受けられます。ただし、無料相談の利用には収入要件と資産要件をクリアする必要があり、事前予約が必要です。また、自治体の相談窓口と同様、相談員の全員が家族信託に詳しいわけではありません。
家族信託について銀行に相談することもできますが、実務に関しては提携している専門家を紹介される傾向にあります。銀行に家族信託の相談をしに行った方が、「専門家を通して相談してください」と断られたケースも過去にありました。
また、銀行が独自に提供している「認知症対策サービス」は、家族信託とは異なる性質の商品ですので注意が必要です。銀行の提供している「認知症対策サービス」も依頼人が元気なうちに備えておくことで、認知症などでお金の管理が難しくなった際、あらかじめ指定した子どもが施設費用や介護費用を出金できるというものです。ただし、このサービスでは子どもが現金預貯金を出金、振込することはできますが、不動産は扱えません。
家族信託を専門家に無料相談するメリットは、主に3つあります。
専門家に相談することで、現在の状況に合った家族信託の内容を提案してもらえます。また、専門家の助言を受けることで、思わぬ落とし穴を回避することができます。
以前、父親が認知症などで判断能力が低下した場合でも、父親が所有している農地を売却できるようにしたいという相談を受けたことがあります。しかし、農地の信託には農業委員会の許可が必要であり、現在のところ農地は信託を設定できません。専門家から指摘されるまで、当事者では気づかない事実だったと思います。
また、複数の専門家に相談をして、提案内容や担当者の人柄などを比較しながら実際に依頼する専門家を見定めることができるのもメリットと言えます。
信託には認知症対策だけでなく、相続対策の効果もあります。家族信託契約に承継者を定めることで遺言と同じ効果をもたせることができ、遺産分割トラブルの防止につながります。
ただし、対象は信託をした財産のみになるので、遺産分割トラブル防止をさらに強化するために、遺言の作成を併せて提案されるケースもあります。
家族信託契約はゴールではなく、スタートです。将来にわたって相談できる専門家に依頼することで、相続手続きなどもスムーズに進めることができます。
また、相続発生後の不動産の名義変更や金融資産の解約についても、専門家に任せることで家族の負担を少なく進められます。
無料相談を有効活用するためには、あらかじめ情報を整理しておくとよいでしょう。信託したい財産や信託の目的などを整理しておくことで専門家との認識違いを防止し、知りたい情報が得られます。無料相談を有効にするための事前準備の例を紹介します。
家族信託には認知症による資産凍結対策の側面があります。そのため、家族信託を行う主な目的としては、家族による以下のような希望が考えられます。
どのような活用法を考えているのか、その目的を明確にすることで、対策の提案も受けやすくなります。また、相談している間に、前述の農地の相談例のような家族信託では解決できないケースにも気づくことができます。
以下の三者が誰なのかが明確になっていると、相談がスムーズに進みやすくなります。
受託者候補がいない場合は、そもそも家族信託での対策ができない可能性も生じます。
また、子どもの一人を受託者候補にする場合には、相続はどうするのか、ほかの兄弟姉妹にも相談をしているか、といった情報も提示すると、その後の進め方を含めたアドバイスをもらうことができます。
信託したい財産についての情報を整理して、関係する資料を持っていくようにしましょう。
特に不動産がある場合は、不動産の登記簿を取得するための情報として、固定資産税の納税通知書をぜひ持参してください。
また、金融資産については、まだ依頼をするかわからない専門家にすべてを開示することに抵抗があるケースも少なくありません。その場合は、最初からすべてを開示する必要はありません。
ただ、見積もりを依頼する場合は、「〇〇万円を信託した場合」と仮で伝えることにより、さらに精度の高い見積もりをもらうことができます。
全国47都道府県対応
家族信託の相談が出来る司法書士を探す無料相談で対応してもらえるのは、家族信託での対策提案を受けるまでになります。家族信託契約書の添削などは難しいと考えてください。
また、家族信託は契約を締結したときからがスタートであり、その後も疑問点などが必ず出てきますので、その際に頼れる相談先も必要です。このような点からも、自分たちだけで進めるのではなく、専門家に依頼することを強くお勧めします。
実際に相談に行っても、対応した当該専門家が家族信託に長けていない場合があります。ホームページの取り扱い業務の欄に「家族信託」と書いてあるのに、実際にはあまり経験したことがない、という可能性もあります。
専門家選びで失敗しないために確認しておくべき点は、以下の5つです。
家族信託の実績の有無は必ず確認したい点です。ホームページにお客さまの声や取扱件数が載っているかどうかは判断材料になります。相談時に直接確認するのもよいでしょう。
また、相談時には信託の終了についての実績数も併せて確認しましょう。信託の終了にまで関わった実績数が多ければ多いほど、出口を見据えたサポートが期待できますし、継続的なフォローをしている体制の確認にもなります。
ホームページを確認すると、家族信託についての取り組みや執筆した書籍に関する情報を発信していることがあります。また、事務所や専門家個人のSNSがあれば、そこで家族信託についての情報を発信しているかも確認できるでしょう。
情報発信をしているようであれば、その内容がわかりやすいものであるか、こちらが期待しているものであるかなどが参考になるはずです。
発信している内容のわかりやすさは、相談時の説明のわかりやすさに直結するため、かなり重要です。家族信託について発信していても、内容が難しく理解できない場合は、相談に行ってもよくわからないまま終わってしまうおそれがあります。
また、説明がわかりづらいと、その内容を持ち帰って家族や両親に説明する際に理解してもらえず、家族信託そのものができなくなる可能性があります。説明がわかりやすいことは、これから始める家族信託をスムーズに進めるうえでの重要なポイントです。
家族信託は締結したときからがスタートになります。そのため、アフターフォローとして継続的な相談が可能かどうか、そこに費用がかかるかどうかについては、ぜひ確認しておきたいところです。
ホームページでアフターフォローについて掲載している事務所はまだそれほど多くありません。相談に行った際に直接確認することが大切です。
家族信託では専門家同士の連携が必要となるケースも少なくありません。
たとえば、司法書士に相談に行ったとしても、相続税に関連する領域については、税理士にも意見を聞いて進めていく必要があります。
こうしたケースでは、家族信託に詳しい税理士などと連携しているかどうか、紹介してもらうことが可能かどうかも、ぜひ確認したいところです。
依頼する専門家は家族信託の契約だけでなく、その後の財産の管理などについても継続的に相談できるアドバイザーのような存在になります。
そのため、コミュニケーションがとりづらい専門家を選んでしまうと、相談したい事柄が出てきてもスムーズに相談できず、齟齬が生じてしまうおそれがあります。
そのため、担当者が話しやすくて誠実に対応してくれるかどうか、その担当者が申し込み後も引き続き担当してくれるかなども確認しておきたいポイントです。
家族信託を専門家に依頼した場合の費用は事務所によって異なります。一般的に、自宅および金銭を信託する場合は、50万円以上になる傾向にあります。内訳としては、専門家費用や公証役場の手数料、不動産の名義変更のための登録免許税などです。
賃貸不動産の家族信託になると難易度が上がるため、依頼費用が100万円を超えることもあります。実際に依頼する場合は見積もりを取って費用を確認し、相談担当者のレベルを見て総合的に判断する必要があります。
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家族信託の相談ができる司法書士を探す依頼から契約完了まで、3カ月程度は見ておいたほうがよいでしょう。また、信託する不動産に銀行などの抵当権が設定されている場合には、事前に銀行からの承諾が必要になるため、上記に加え1カ月〜2カ月ほど余分に時間がかかります。
ぜひ相談してください。家族信託は非常に専門性が高く、一からすべてを理解するのは難しい領域です。
そのため、自分の理解が合っているかどうか、自分や家族にとって本当に必要かどうか、目の前の専門家は自分たちの希望にしっかり応えてくれるかどうか、といった点を判断するためにも、無料相談は積極的に利用することをお勧めします。
家族信託とは、財産の所有者が認知症を発症した場合や介護が必要になった場合などに備え、信頼できる家族にあらかじめ財産の管理や処分を任せるように手配する財産管理の方法です。家族信託の相談先としては主に司法書士、弁護士、税理士、行政書士、自治体の相談窓口、法テラス、銀行といった7つの選択肢があります。
もっとも、司法書士や弁護士、税理士といった資格は一つの参考です。最終的には、その専門家が家族信託を手がけた実績があるかどうか、親身になって提案をしてくれるのかどうかという、資格を超えた部分でも判断することが、充実した家族信託につながるはずです。
今はホームページや書籍、SNSなど、事前に確認できる情報も増えました。相談先を決めるときはそれらの情報を活用し、頼れる専門家を見つけるための参考にしてください。
(記事は2024年9月1日時点の情報に基づいています)
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