目次

  1. 1. 親からアパートを相続するときの流れ
    1. 1-1. 【STEP1】ローンの残高を確認する
    2. 1-2. 【STEP2】相続人同士でアパートの分割方法を決める
    3. 1-3. 【STEP3】準確定申告をする
    4. 1-4. 【STEP4】相続税を申告し、納付をする
    5. 1-5. 【STEP5】相続登記をする
    6. 1-6. 【STEP6】入居者に連絡する
    7. 1-7. 【STEP7】アパート経営を継続するかどうかを決める
  2. 2. 親からアパートを相続するメリット
    1. 2-1. 初期費用なく、収益物件を手に入れられる
    2. 2-2. 相続税を抑えることができる
  3. 3. 親からアパートを相続するデメリット
    1. 3-1. 赤字の場合、自己資金から補塡が必要
    2. 3-2. ローンが残っていれば、返済が必要
  4. 4. 親からアパートを相続したときの選択肢
    1. 4-1. アパート経営を続ける
    2. 4-2. 売却する
    3. 4-3. 解体してアパートを新築する
    4. 4-4. 解体してほかの土地活用を検討する
  5. 5. アパート経営を続けるかの判断ポイント
    1. 5-1. 毎月の収支が黒字か赤字か
    2. 5-2. ローン残高はどの程度か
    3. 5-3. 大規模修繕の時期と金額
  6. 6. アパートを相続する際の注意点
    1. 6-1. 相続登記をしなければ売却できない
    2. 6-2. 一人がアパートを相続しても相続人全員にローン返済の義務がある
    3. 6-3. 共有名義にすると売却や解体が難しくなる
  7. 7. アパートの相続についてよくある質問
  8. 8. まとめ|土地活用の一括プランも参考に

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親からアパートを相続したときの流れについて、時系列でまとめてみました。

親からアパートを相続したときの流れを図解。さまざまな手続きが必要となります
親からアパートを相続したときの流れを図解。さまざまな手続きが必要となります

アパートのような不動産を相続した場合、資産の状況をきちんと把握することが大切です。

まず、登記簿謄本や固定資産税の納税通知書などをもとに、親がアパートを建築または購入した際にローンを利用しているかどうかを、銀行に確認しましょう。その後、ローンの残高がどれくらいあるのか、親の加入している団体信用生命保険で完済できるのかなどを確認します。団体信用生命保険とは、ローンの契約者に万が一のことが起きた場合、ローンの全額が保険金によって返済されるものです。

団体信用生命保険に加入しておらず、不動産を売却しても足りないほどローンを含めたすべての借金が多い場合、相続放棄も視野に入れる必要があります。

遺言書がある場合は、基本的に遺言書のとおりにします。

遺言書がない場合は、相続人全員で相談して遺産の分け方を決め、遺産分割協議書を作成する必要があります。金銭はある程度自由に分割できますが、アパートや土地などの不動産は簡単に分けられないため、どう分割するのか慎重に検討しなくてはなりません。

主に以下の4つの方法で不動産を分割するのが一般的です。

  • 現物分割:相続人の一人がアパートを相続して、ほかの相続人が金銭など、その他の遺産を相続する方法
  • 代償分割:一人がアパートを相続してほかの相続人に金銭を支払う方法
  • 共有分割:アパートを相続人同士で共有する方法
  • 換価分割:相続時にアパートを売却し、金銭を相続人同士で分ける方法

被相続人である親が生前に得た家賃収入に対する所得税を、親に代わって納める必要があります。これを準確定申告と言います。期限は相続の開始を知ってから4カ月以内です。

【関連】準確定申告とは? やり方から期限、注意点、不要なケースまで解説 必要書類も紹介

相続税額は自ら、または税理士の協力を得て計算します。遺産が「3000万円+600万円×法定相続人の数」で算出される基礎控除額を超える場合は、相続税の申告および納付を相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。申告書は、被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署長に提出します。

相続税は各相続人がそれぞれ支払う必要があります。納付の方法は、銀行などの金融機関、コンビニエンスストア、クレジットカード、税務署の窓口での直接納付が可能です。

アパートを相続したら相続登記(相続した不動産の名義変更)が必要です。相続税の申告と納付の前に登記しても問題ありません。

遺産分割協議によってアパートを相続した場合、相続登記申請書に記入のうえ、遺産分割協議書、戸籍関係書類、相続人全員の住民票を添付して法務局の窓口へ持参するか、郵送またはオンラインで申請し、登記します。

なお、相続登記は2024年4月から義務化され、正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。相続登記の申請期限は「不動産を相続したことを知ったときから3年以内」となっているので、期限内に必ず行うようにしましょう。

相続登記が完了したら、アパートの入居者に新たなオーナーに代わったことを書面で通知する必要があります。親が亡くなるとその銀行口座が凍結され、家賃の振り込みができない状況になる可能性があります。その場合どのように対応するかを伝えておく必要があるため、相続登記などが完了する前であっても一度挨拶や連絡をしておくとよいでしょう。

登記が完了し、入居者への貸主変更通知や賃料振込先の変更などを伝え終えると、いよいよ家主としてアパート経営にあたることとなります。まずはアパートの状態に関して調査しておきましょう。築古の場合、内装外装の修繕や水回りの設備機器の故障の修理などが必要となるケースがあります。

そのため、賃料収入と、管理費あるいは修繕費などの支出を計算し、どのような収支になるかを調べることが大切です。また、立地や土地の将来性なども考える必要があります。そのうえで、アパート経営を継続するのか、売却するのか、ほかに有効な活用方法がないのかを調べて方針を決めます。

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親から優良なアパートを相続すると、次のようなメリットがあります。

何もない状況から、アパート経営を始めようと思えば、自ら土地を購入し、アパートを建築しなければなりません。さまざまな諸費用もかかります。そのため初期費用として1千万円を超える頭金が必要となるうえ、数千万円から1億円を超えるローンを銀行から借りることになるでしょう。

親からアパートを相続すれば、相続税がかかる可能性がある一方で、上記のような初期費用やローンの心配をすることなく、収益物件を手に入れることができます。

親から1億円の現金を相続するより、1億円のアパートを相続したほうが、相続人は支払わなければならない相続税の額が減ります。

現金より土地のほうが相続税評価額が低く、さらに土地の上にアパートなどの賃貸用建物があると、さらに評価額が下がるためです。

築年数の経った古いアパートでは、設備の陳腐化や老朽化、間取りの古さなどから空室が埋まりにくくなり、借主を入れるために賃料を下げざるを得なくなります。

設備の更新や、漏水を防ぐ塗装、和室からフローリング床への変更、壁紙の交換などを行う際は、費用がかかります。加えて固定資産税などの支出を考えると、場合によっては支出が収入を上回り、赤字となってしまいます。そうなると自己資金で補填する必要があるため、家計に支障がないかよく検討しなくてはいけません。

アパートの建築費用や購入費用のためにローンを利用しており、団体信用生命保険に加入していなかった場合など、ローンの種類によってはローンの残高が残っている可能性があります。その場合は相続人が引き続きローンを返済していかなくてはいけません。

親からアパートを相続したときの選択肢としては、主に次の4つが挙げられます。

  • アパート経営を続ける
  • 売却する
  • 解体してアパートを新築する
  • 解体してほかの土地活用を検討する

相続したアパートを引き続き運営して、確実に賃料収入を得られるように対策を講じる必要があります。

築年数の経過している物件の場合、水回りを中心に新しい設備に交換したり、漏水が起こらないよう屋根やバルコニーの修繕、壁の塗装などのリフォームを行ったりすることにより、借主に魅力がある物件となって貸しやすくなる可能性があります。

どの程度の改修を入れるべきかわからない場合は、費用対効果の高いリフォームや入居者を埋めるための工夫などの専門知識やノウハウを持っている専門家に相談してみましょう。

建物の老朽化が激しく、再利用が難しい場合、自ら解体し更地にして売却する方法があります。解体にかかる費用は建物によりますが、木造物件でも思わぬ地中埋設物などによっては解体費が高くなる可能性があります。

一方、業者によっては、築年数の経ったアパートでもそのまま購入したがる場合があります。アパート運営に長け、リフォームを前提とした事業者や、建物が建っている状態のほうが融資を得やすい事業者などに対して、解体せずに売却することが可能です。

売却する際は、どれほどの資産価値があるのかを複数の不動産会社に査定依頼することが大切です。極端に高い査定や低い査定を除いて比較することで、おおよその相場がわかります。そうすれば実際にどれくらいの金額で売れるのかをつかんでおけるため、売買取引の際に有利な話し合いがしやすくなります。

アパートの老朽化が激しく、リフォームや修繕をしようとすると多大な費用がかかるものの、そのわりに希望する賃料で空室を埋めることが難しいと判断した場合は、アパートを解体して新たな土地活用を検討することも選択肢の一つです。周辺エリアなどを分析し、新築物件なら十分な入居ニーズがあると判断できるのであれば、再度アパートを新築するのもよいでしょう。

最新の設備がある部屋であれば、入居希望者は増え、家賃の大幅アップを見込むことができます。土地の購入費がかからないうえ、土地を担保に建築資金を借りることも可能です。そうすれば、収支として非常に有利なアパート経営ができる可能性があります。

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アパート経営だけでなく、ほかに有効な土地活用を検討することもできます。駐車場ニーズの高いエリアであればコインパーキングに、単身者が多く居住するエリアであればコインランドリーに、土地が広く日当たりのよい場所であれば太陽光発電設備を設置して売電収入を得るという選択肢も検討できます。

自分で活用方法が思いつかない場合などは、複数の業者に相談し、立地に適した活用法を提案してもらうことが非常に重要となります。ネット上にあるプラン一括請求サービスの活用も有効です。

【関連】空き地の活用法13選を紹介! 30坪未満の空き地の活用事例とは

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アパート経営を続けていくためには、ローンの返済や固定資産税の支払いを考慮に入れたうえで毎月の収支がプラスになっていることが最低条件となります。現状の賃料収入から管理費や水道光熱費などの支出を差し引き、プラス収支になっているかどうかを確認しましょう。毎月の収支のマイナスが続くことが予想される場合には、アパートの売却やほかの土地活用を検討する必要があります。

毎月の収支がプラスになっていたとしても、ローン残高が多い場合は気をつける必要があります。毎月の収支の範囲内で、賃料収入でローン返済ができていても、建物の老朽化が進むことによる賃料収入の減少や、退去後のリフォーム工事費用の増加が考えられます。ローン残高と返済年数を確認しながら、収支の変化に対応できる余裕があるかによって、現状の物件で問題なく返済できるかを確認する必要があります。

アパート経営を続けていくには、借主の退去時における室内のリフォームや、外壁のひび割れ補修や水回り、ガス給湯器などの設備機器の修繕が必要になります。特に外壁の塗装や、屋根や外廊下、バルコニーの防水などの大規模修繕をする際は、大きな出費となります。毎月の収支がプラスになっていても、大規模修繕を行うことによって赤字になる場合があります。大規模修繕計画や修繕履歴を作成し、いつ、どれほどの規模の修繕が発生する可能性があるのかを事前に確認しておくことが大切です。

アパートを相続する際の注意点としては、主に下記の3点があります。

  • 相続登記をしなければ売却できない
  • 一人がアパートを相続しても相続人全員にローン返済の義務がある
  • 共有名義にすると売却や解体が難しくなる

相続登記されていない被相続人名義の不動産は売却できません。そのため、アパートを売却する予定があれば、早めに相続登記をしておくことが大切です。

ローン債務は相続人間で「当然分割」されます。当然分割とは遺産分割などを経ることなく、法定相続分に基づいて分割して継承されることを言います。ローンを一人に集中させたいときは、免責的債務引受などの手続きが必要な場合もありますが、基本的に金融機関に事情を説明すれば問題なく一人に集中させられるケースが多いです。

遺産を公平に分けやすいので、共有分割によって共有名義にするケースがあります。しかし、共有名義だと売却や解体を行う際に共有している相続人全員の同意が必要になるため、手続きが難しくなります。場合によっては、一人の反対によって売却や解体が全く進まないという事態もあり得ます。また、共有名義にしていた相続人が死亡すると、その相続人が共有することとなって共有者が増えていき、関係性の遠い共有者が増えると手続きがより煩雑となります。

Q. 相続税を払う現金がないときはどうすればいい?

相続税は現金で一括納付することが原則です。ただし、現金がない場合は、一定の要件を満たしたときに、延納や物納ができます。 相続税を現金で納付するために、納付期限までにアパートを売却することも可能です。しかし、不動産登記を行って売却をしようとすると、納付期限である10カ月以内に間に合わないこともあるため、注意してください。

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Q. 相続登記するまでの賃料収入は誰のもの?

相続開始後から遺産分割までの間の賃料収入は、法定相続人が法定相続分に従って共有し、遺産分割後の賃料収入は、その不動産を取得した相続人が取得することになります。

アパートを相続した場合、建物の状態や収支、今後発生すると想定される維持修繕費用などを考慮したうえで、アパートを引き続き運営していくかどうかを決めることが大切です。

売却したほうがよいのか、建物を解体してより有効な土地活用がないかなど、いろいろな選択肢があります。どのように土地活用していけばよいのかわからない場合は、土地活用の資料一括プランから専門家のアドバイスを得てみるのも一つの方法です。「相続会議」でも無料で土地活用の一括プランを比較できるサービスを展開しています。

(記事は2024年6月1日時点の情報に基づいています)

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