アパートの建築費はいくら? 坪単価や計算方法、値上がりの理由も解説
はじめてアパート経営をする人の中には、建築費が気になっている方もいらっしゃると思います。見積もりを取る前に、自分でも概算費用を知っておくと安心です。この記事では「アパートの建築費」について解説します。
はじめてアパート経営をする人の中には、建築費が気になっている方もいらっしゃると思います。見積もりを取る前に、自分でも概算費用を知っておくと安心です。この記事では「アパートの建築費」について解説します。
目次
アパート建築費は、建物構造によってある程度の坪単価相場があります。
アパートの構造の選択肢としては、木造や軽量鉄骨造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造が挙げられます。
2023年5月時点のそれぞれの構造の坪単価は以下の通りです。
国土交通省が開示する建設工事費デフレーター(2023年4月28日付)によると、2023年2月は基準値の2015年度と比べると木造で1.2倍、鉄骨造で1.21倍、鉄筋コンクリート造で1.21倍上昇しています。
多くのアパートは2階建てとなりますが、2階建てであれば木造または軽量鉄骨造で建てることができます。
木造は最もコストを抑えることができますが、入居者のイメージがあまりよくないことや上位ハウスメーカーが軽量鉄骨を得意としている等の理由から、昨今の2階建てアパートは軽量鉄骨造が増えています。
また、3階建て以上のアパートでは、重量鉄骨造または鉄筋コンクリート造が選択肢となります。
台風が多い沖縄等では、2階建てであっても鉄筋コンクリート造が選択されることが多いです。
アパートの建築費は構造だけでなく、仕上げや設備も決定要因となります。
建物を「躯体」(建物の強度にかかわる基礎、柱、梁、壁面、床など)と「仕上」(内装や外装、建具、窓など)、「設備」(給排水、空調、電気・ガス設備など)に分類すると、その割合は概ね「4:4:2」の割合となります。
よって、例えば仕様の高い設備や仕上材を採用した場合には、木造でも軽量鉄骨造より建築費が高くなることはあり得ます。
建築費の大まかな割合を知っておくと、後で役に立ちます。例えば、「電気工事」や「空調工事」、「給排水衛生工事」を合算すると設備工事費の合計額が出てきます。
設備工事費の合計額が全体の2割を大幅に上回っている場合は、設備工事のどこかの部分が妙に高いという推測ができるようになります。
ここ数年で建築費が高騰しています。その理由は次のとおりです。
建設業界はかねてから慢性的な人手不足が指摘されています。技術を引き継ぐ若い人材がいないために、人件費が上がり続けています。
また、2021年には新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、アメリカの新築住宅需要が増加し、世界的に木材の需給が逼迫し、日本への輸入木材の価格も上昇するいわゆる「ウッドショック」が起きました。
さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)が自国の高インフレを抑制するために、急速な利上げを進めた結果、円安が進み、原材料費はもちろん電気代やガソリン代などが高騰しています。
現在、木材価格の高騰の勢いは鈍化しています。近い将来、木材の建築費が上がるのか、維持されるのか、下がるのかは断定できません。しかし、今後も日本の低金利政策が継続されれば円安圧力も続き、輸入木材価格は長期的には上昇する可能性があります。
比較的小さめの土地であれば、アパートの建築費は土地の面積から概算することができます。
建築費の総額を知るには、まずどの程度の「延床面積」のアパートが建てられるかを知ることが必要です。
土地には建物規模の上限を決定する容積率というものが定められています。容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。
アパートは低層の戸建て住宅が建っている地域に建てられることが多く、低層の戸建て住宅街の容積率は100%または150%といった数値で定められていることがよくあります。
容積率が100%の土地の場合、延床面積は土地の面積に対して100%まで建てることが可能です。例えば60坪の土地で容積率が100%であれば、アパートの延床面積も最大で60坪となります。
延床面積が60坪のアパートの規模は、「1Kタイプ8戸の2階建て」のようなイメージです。
仮に坪90万円の木造アパートを建てた場合、建築費は5,400万円(=60坪×90万円/坪)と概算できます。
ただし、この概算方法が適用できるのは100坪程度の敷地くらいまでとなります。100坪よりも大きい敷地の場合、ゆったりと建てることが多いので延床面積は敷地面積よりも小さくなることも多いです。
アパートの建築時には諸費用が発生します。諸費用の項目としては以下の通りです。
設計者に対して支払う費用です。
ハウスメーカーであれば建築費の1~3%程度、施工会社と異なる一級建築士事務所に依頼した場合は建築費の5~8%程度の費用がかかります。
設計費の中には確認申請料を含んでいることも多いですが、含まれていない場合は確認申請料として50~60万円の費用が別途生じることもあります。
設計のために必要な真北や高低差を知るための測量です。20万円~30万円程度の費用がかかります。
杭工事が必要な場合、支持地盤の深さを図るための費用です。1ポイントあたり30~50万円程度となります。
水道を引き込むときに自治体へ支払う費用です。戸数にもよりますが、100万円~500万円程度かかります。
建物を取得したときに発生する税金です。原則として「固定資産税評価額×3%」となります。なお、固定資産税評価額とは、固定資産税など税額を計算する際に用いられる基準価格のことで、購入価格と同じ額ではありません。
新築した建物を新たに登記(保存登記という)するための費用です。保存登記の登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」、司法書士手数料の相場は6~7万円程度となります。
請負工事契約書とアパートローンの金銭消費貸借契約書に貼り付ける印紙代です。5,000万円超1億円以下なら請負契約書は3万円(2024年3月31日まで)、金銭消費貸借契約書は6万円となります。
建物に付保する火災保険および地震保険です。複数年一括契約すると安くなるため、初年度に5年または10年といった単位でかけることになります。1年あたりの保険料は建築費の0.05%程度です。
アパートローンを組む場合は、融資手数料がかかります。銀行へ支払う事務手数料の相場は固定料金制の場合、5~10万円程度です。
アパート建築に必要な自己資金は、諸費用を含めて最低でも建築費の15%程度は必要です。
まず諸費用に関しては、ハウスメーカーに依頼すると設計料が安くなるため、コストを抑えることができます。ハウスメーカーに依頼した場合、諸費用の合計額は建築費の3~5%程度です。
また、アパートローンを組む際は、銀行から最低限建築費の1割の頭金を求められることが一般的となっています。よって、自己資金としては諸費用で5%、頭金で10%を要するため、最低でも建築費の15%は用意しておくことになります。
例えば60坪の土地で建築費が4,800万円のアパートを建てる場合、720万円(=4,800万円×15%)程度の自己資金が必要となるイメージです。
なお、アパートローンは住宅ローンに比べると金利が高く、建物の構造によっては住宅ローンよりも融資期間が短くなり、融資条件も厳しくなっています。銀行によって金利や融資姿勢がかなり異なってもいますので、有利なアパートローンを組むには、金融機関を幅広く比較検討することが望ましいです。
アパートの工期は、ハウスメーカーが建てる場合、「階数+1ヶ月」が目安です。2階建てなら3ヶ月程度、3階建てなら4ヶ月程度となります。
ハウスメーカーは工業化工法と呼ばれる工法を採用しており、ほとんどの建築部材を工場で作成し、現場で組み立てるだけなので工期は非常に短いです。
建築費の支払は、着工時に60%、竣工時に40%程度(請負契約時に5%、竣工時に35%というケースもある)というケースが一般的となります。
アパートの建築費を抑えるには、複数のハウスメーカーから相見積もりを取り比較検討することが最も効果的です。提案を受ける際には、初期費用である建築費だけでなく、収支シミュレーションの比較もしてみましょう。
相続会議の土地活用プラン請求サービスでは、無料で複数のハウスメーカーから「建築費」や「設計プラン」、「竣工後の収益プラン」の3つの提案を受けることができるサービスとなっています。ハウスメーカーとのコネクションがなくても、簡単に相見積もりを取ることができますのでぜひ利用してみてください。
アパートの建築費を抑えるには、同じ会社に設計と施工を発注する「設計施工一括方式」が基本です。大手のハウスメーカーは基本的に、この方式を採用しています。一方、一級建築費が在籍しない施工会社だと、設計と施工の発注先が分かれる「設計施工分離方式」となり、設計費が割高となります。
建築費を抑えるために設備や仕上げのグレードを落とすことも考えられます。しかし、コストを削減するばかりでは、使い勝手が悪く魅力の低い物件となりアパート市場の競争に勝てません。コストを削減した結果、将来の修繕費が負担になる可能性もあります。どの程度までコストを削減できるかは、経験のあるハウスメーカーから提案を受けるのがよいでしょう。
以上、アパートの建築費について解説してきました。アパートの建築費相場は、木造なら「坪70万円~110万円」、軽量鉄骨造なら「坪80万円~110万円」です。
比較的小さめの土地であれば、アパートの延床面積は土地面積とほぼ等しくなり、土地面積に坪単価を乗じることで概算額を出すことができます。
新築時の諸経費としては、建築費の3~5%程度の費用がかかります。また、アパートローンを組む際は、最低限建築費の10%の頭金が必要です。
アパート建築費の概要がわかったら、早速にプラン一括請求サービスを使って見積もりを取り寄せてみましょう。
(記事は2023年5月1日時点の情報に基づいています。)