老朽化した賃貸住宅の2大問題は「空室」と「修繕費」

老朽化したアパート・マンション・貸家などの賃貸住宅(以下、アパート)には、さまざまな問題が存在します。特に、アパートを相続した子どもにとって頭の痛い問題は「空室の多さ」と「多額の修繕費」でしょう。

「空室の多さ」の問題

空室があると、当然その部屋の家賃は入ってきません。また入居者がいても家賃を滞納していることもあります。
ローンの返済がある場合はさらに深刻です。親がアパートローンを借りる際には、相続税対策のために団体信用生命保険に加入しないことが一般的です。それにより相続税の負担は軽減されますが、アパートを相続した子どもにローンの返済が引き継がれます。
空室や滞納が多いと、家賃収入が減るうえに、返済や修繕費のほうが大きくなってしまい経営を圧迫します。

「多額の修繕費」の問題

修理費・修繕費にも多額の費用がかかります。
建物が古くなると、外壁が色あせて見た目にも古ぼけてきますが、放置しておくと、はがれて落下したり、雨がしみ込んでくるなど性能面でのトラブルも生じます。もしも落下した外壁などが通行人や他人の自動車を傷つけた場合には、最終的に建物の所有者が損害賠償責任を負います。また屋根も定期的にメンテナンスをしないと雨漏りの原因になります。建物の内部では、配管や設備の老朽化が進んでいます。
本来は、親がきれいに修繕をしてから相続するのが望ましいのですが、多くの場合、老朽化したアパートにはなかなかお金をかける気にもなれず、結局問題が解決しないまま老朽アパートを子どもが引き継ぐことになります。

その他にも老朽アパートにはさまざまな問題が

さらに「空室」と「修繕費」以外にも老朽アパートにはさまざまな問題があるため、相続した子どもはそれぞれの問題に対応しなければなりません。

老朽化した貸家に起こる問題と対応策

老朽アパートの3つの対応

このような問題をかかえた老朽アパートを相続した場合の主な対応は次の3つです。
 

  1. 引き続き経営を続ける
  2. 新しい建物に建て替える
  3. 売却する

経営継続、建て替え、売却を検討する際には、次の2つの条件を考慮します。

  • 修繕やリノベーションの実施により延びる老朽アパートの賃貸寿命
  • 修繕やリノベーションにかかる費用と回収見込みの年数

もともと相当の築年数が経過した老朽アパートなので、今後も新築のように長期間賃貸が続けられるわけではありません。残りの賃貸可能期間のことを賃貸寿命と言います。入居率や家賃をアップさせるために修繕やリノベーションを行うと、老朽アパートの寿命も延びます。かかったリノベーション費用を、延びた賃貸寿命のなかで十分回収できるかが、老朽アパートの賃貸経営継続の判断材料のひとつになります。
たとえば、リノベーションにより、あと15年は入居が見込めるケースで、かかった費用が5年で回収可能な場合には、賃貸経営を継続しても問題ないと考えられます。
反対に、賃貸寿命があと5年ほどしかないのに、多額のリノベーション費用がかかり、回収に10年もかかると予測される場合には費用をかけても無駄になるため、建て替えや売却を検討する必要があります。

もちろん、収支だけではなく、問題解決の困難さや、精神的な負担なども判断材料になります。
さまざまな要素を考えあわせて対応を選択することが大切です。

なお、老朽アパートの経営継続がむずかしい場合でも、将来的にも賃貸需要が見込める立地であれば、新しいアパートに建て替えるという選択肢もあります。

老朽アパートの賃貸継続も建て替えもむずかしい場合には、売却を視野に入れることになります。

アパート経営を続ける場合の注意点

いったんアパート経営を継続した場合でも、アパートの老朽化はさらに進みます。引き継いだ時点での問題は解決できても、その後さらに新しい問題が生じる可能性があります。そうなると最初に立てた経営計画が大きく狂ってしまうことになりかねません。予測される問題やトラブルをあらかじめ予測し、対応可能かどうかを事前に判断しておくことも大切です。

売却する場合の注意点

老朽アパートを売却する場合、建物ごと収益物件として売却する方法と、建物を解体して更地で売却する方法があります。

入居者がいる建物をそのままで売却することを「オーナーチェンジ」と言います。その場合、買主は、年間の純利益を期待利回りで割った「収益還元価格」で不動産を購入するかを判断します。一般的に収益還元価格は、土地相場価格よりも大幅に安くなってしまいます。

また、そもそも空室だらけ、滞納者がいる、多額の修繕費がかかる、契約書がないなどの問題をかかえている老朽アパートは買い手がつきづらく、買い手が見つかってもさらに買いたたかれます。

一方、建物を解体してから売却する場合は、土地の相場価格で売却できるので、建物ごと売却するよりも高額で売れる可能性が高くなります。

しかし、解体するためには入居者の立退きが必要です。ところが、一般的な賃貸契約では入居者の借家権が強いため、立ち退きを拒絶されると入居者に住み続けられることになります。また立ち退いてもらえたとしても、多額の立退料を要求されたり、立退きまでに数年単位の時間がかかることもあります。どちらの方法で売却するかを検討し、早い段階から準備を始めることが望ましいと言えます。

建て替えの場合も売却と同様、入居者が立退かないと進められないため、実際にはなかなかスムーズに進みません。

立退きにはお金と時間がかかりますが、まずは早く行動を起こすことが大切です。その際には、弁護士や不動産会社などに相談をしながら、少しでもスムーズに進められるよう手続きを始めましょう。

老朽化アパートは、親の生前から経営改善を始めることが重要です。
老朽アパートでも、親の代にしっかりと維持管理を行い健全経営を続けているものは、相続しても収入を生む有益な財産として喜ばれます。
相続前の老朽アパートを所有している人は、相続の前に問題を解決して「きれいな財産」を子どもに引き継ぐことをお勧めします。

(記事は2020年3月1日時点の情報に基づいています)