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それぞれの専門家に得意分野がある

――相談する側としては、どの専門家に頼ればいいのかわかりづらいです

西尾:それぞれの専門家には得意分野もあれば、対応できない領域もあります。例えば、遺産の分け方についてもめていたり、または争いが生じる見込みがあったりする際には、弁護士に相談して下さい。争いごとの交渉の代理ができるのは、弁護士だけですので。

――きょうだい仲がかなり悪い場合、最初から弁護士に相談したほうがよいってことですか。

西尾:はい。その場合は弁護士以外には相談しないほうがいいでしょう。

――司法書士は。

西尾:不動産の相続登記や各種名義変更などを得意としています。成年後見や、最近では家族信託に力を入れている方もいます。

――相続税の相談なら、税理士が思い浮かびます。

西尾:相続税申告など税金の計算にかかわることは、税理士です。相続人の間で争いがなく、相続税の申告だけであれば税理士に相談されるのがよいでしょう。ただし、節税対策を相談したいとなれば、法律、不動産、保険などの知識も必要になります。税務と法務の両方に精通している必要があります。相続に詳しい弁護士と連携している税理士であれば、なお安心です。

相続関係の経験が豊富な専門家は少ない

――手続きごとに異なる専門家の事務所に足を運ばないといけないんでしょうか…

西尾:いえ、専門家同士で連携し、相続に関するどのような相談でも対応できる体制を築いている事務所がありますので、そういったところに相談に行けば、ワンストップでサービスを受けられます。相談先で、ほかの専門家との連携はどうなっているか、確認してみるといいでしょう。

――なるほど。とりあえずは何でもできそうな弁護士に相談するのはどうでしょう?

西尾:確かに、弁護士は法律全般についての専門家なので、相続にかかわる書類の収集から遺言書作成、裁判まで、一貫して対応はできます。「相続でもめないような公平な相続をしてほしい」とのことであれば、紛争防止の視点からも力になれます。

しかし、相続案件の経験が豊富な弁護士は非常に少ないのが実情です。対応したのは「数年で1件だけ」というような方もたくさんいます。相続税や手続きの知識がない弁護士に頼んだばかりに、相続税や余分な費用が増えてしまう恐れもあります。

これは他の専門家にも言えます。税理士でさえ、相続税に強いとは限りません。多くの税理士の主な仕事は、会社の顧問業務です。また、税理士試験で相続税は必須科目ではなく、選択しない人が多いことも影響していると思います。

大事なのは、弁護士にせよ、税理士にせよ、実際に目の前にいる専門家が、どれだけ相続関連の仕事の経験が豊富かどうか、知識を持っているかということです。

――詳しくない専門家に頼むと、どんな問題が起こりえますか。

江口:とある専門家のアドバイスに基づいて作成された遺言書を確認したところ、遺言を作成した人の自宅が妻ではなく、別居の長男に相続させる内容になっていました。これでは土地の評価額を8割下げられる「小規模宅地等の特例」が使えず、数百万円分の相続税を余分に払わざるをえなくなることを説明し、遺言書の作り直しをご依頼いただきました。

――家族のためにと作成した遺言が悪い結果をもたらしたら、故人にとっても、遺族にとっても悲しいですね。

江口:そうですね。少しでも心配なら、遺言を作成したら法務の面は弁護士、税務の面は税理士というようにダブルチェックしてもらう手もあります。

複数の事務所の無料相談に足を運び、同じ質問をしてみる

――どうすれば相談に行った先の専門家が相続案件の経験が豊富だとわかるのでしょうか。

西尾:まずはホームページなどで実績を確認してみるとよいでしょう。ただ、これだけで判断してはいけません。例えば、無料相談を活用して複数の事務所に足を運び、自分が知りたいことを3つほど聞いてみて下さい。同じ質問に対し、誰が一番納得できる回答を返してくれるか、自分では気づかなかった視点からアドバイスをくれるのかを比較してみるとよいと思います。

具体的なことで言えば、配偶者が亡くなった時の「一次相続」だけでなく両親がいずれも亡くなった後の「二次相続」まで考えた上で相続対策を考えてくれるのか。税務調査への対策の視点から「名義預金は大丈夫ですか?」と聞いてくれるか。遺言書作成なら予備的条項を提案してもらえるか、など円滑に相続を進めるために押さえるべきポイントをきちんと指摘してくれるのかどうかで、見極めることができると思います。

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――遺言書の予備的条項とは?

江口:不測の事態が生じたときに遺産をどう分けるのかについて、遺言書に記すことができます。

例えば、父親と子ども2人の家があるとしましょう。何らかの事情があり、父は長男に遺産の大半を相続させ、次男には最低限相続できる権利である「遺留分」だけを残す遺言書を作成したとします。でも長男が父親より先、または同時に亡くなった場合、遺産は法定相続分どおりに次男に継承されてしまいます。

もちろん、遺言書はいつでも撤回や書き直しができますが、その際に父が認知症になっていると、それは難しくなります。父親が次男に継承するくらいなら、長男の子どもに遺産を引き継ぎたいと思っていても、認知症が進行していれば、それはかないません。ですので、「長男が先に、または同時に亡くなった場合は孫に」といった内容を予備的条項として遺言書に明記することで、万が一の時に対応できます。

――心グループは、弁護士法人だけでなく、税理士、不動産、保険まで幅広く事務所を抱え、サービスを提供しています。

西尾:相続を考えるときに、様々な専門家の連携が欠かせません。生命保険は相続税対策に有効ですし、相続された不動産が実際にいくらで売れるかの見込みがわからないと「思った値段で売れず、相続税の支払いがきつくなった」といったことも起こりえます。心グループでは、それぞれの分野の専門家が連携をとりますので、こうした様々な相談に対し、ワンストップで効率的に対応できます。その結果、依頼者が支払う費用も抑えることができます。

――最後に。相続について悩みがある人に向けてアドバイスをお願いします

西尾:大事なのは、問題が深刻化する前に早めに相談に行くことです。また、繰り返しになりますが、正式に依頼する前に、複数の事務所に足を運んで質問をしてみて下さい。我々の事務所も行っていますが、無料相談を実施している事務所もたくさんありますので、積極的に活用してみて下さい。

【弁護士法人心】

東京、神奈川、千葉、愛知、三重、岐阜、大阪、京都の8都府県の弁護士会に所属し、計16の事務所を構える。相続、交通事故、債務整理、労働、障害年金、企業法務、刑事など幅広い相談がある中で、所属する弁護士はそれぞれが相談内容に応じて役割分担をしており、特定の分野を集中的に担っている。

(記事は2022年10月1日時点の情報に基づいています)

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