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「なんとなく共有」が、土地の放置にもつながる

  • 私の姉の夫(義兄)が、相続した不動産を巡り、弟さんともめているんですって。

    妻・正子
  • 2人ともその家には住まず、人に貸してたよね。

    夫・一郎
  • 弟さんが「賃貸といっても、もうからないから売りたい」と言い出して。一方、お兄さんとしては「先祖代々の土地だから売れない」と反対しているみたいなの。

    正子
  • その不動産、2人の共有名義になっているのでは?

    ソーゾク博士
  • そうなんです。

    正子
  • 起こりがちなトラブルです。不動産は現金と違って物理的に分けることができないので、なんとなく共有にする方々がいます。

    博士
  • 共有すれば公平感もあるように思うんですが、ダメなんですか?

    一郎
  • 共有者の間で、その状態に不満がないのであれば問題ありません。今回のケースも、相続した実家を賃貸に出して、家賃収入を分けるということで、これまでは互いの考えが一致していたのでしょう。ですが、一方だけが「売りたい」となると問題が生じます。民法には「共有物の処分については共有者全員の同意が必要である」と定められていますので。

    博士
  • 共有名義の不動産を売却するには、合意が必要ってことですね。

    正子
  • はい。他の共有者と疎遠で連絡が途絶えている場合、その人を見つけることさえ容易ではありません。結局、共有者間の話し合いがまとまらず、誰にも使用されぬまま、放置される土地がたくさんあります。

    博士

持ち分を買い取り、単独名義に変更を

  • 不動産全体ではなく、自分の持ち分だけ売却することは?

    一郎
  • 可能ですが、他の共有者からすれば「なんで第三者に売るの?」となり、余計にもめる恐れがあります。

    博士
  • では、どうすれば?

    一郎
  • 土地に線を引き分ける「分筆」をして、それぞれが単独所有する手はあります。ですが、義兄のケースのように、土地の上に建物が建っている場合、難しいでしょう。一番よいのは義兄が弟の持ち分を買い取り、単独名義に変更することでしょう。義兄は希望通り先祖の土地を守れるし、弟も現金を得ることができますから。ただし、義兄が弟の持ち分を買い取れるだけの資金が必要です。

    博士
  • 買い取りができない場合は?

    正子
  • 簡単なのは不動産を売却し、現金化して分け合うことです。ただ、義兄の願いはかないません。

    博士
  • 弟さんが「やっぱり売らなくていいよ」となればいいんだけど。

    正子
  • 考えないといけないのは、義兄やその弟が亡くなった後、それぞれの妻や子に、その権利が引き継がれることです。共有者がどんどん増えていけば、互いの関係も希薄になっていき問題がさらに起きやすくなります。

    博士
  • そりゃ、大変だ。不動産を残す側が、生前にできることは?

    一郎
  • 相続人が複数いる場合は、生前に遺言書を作成し、不動産の継承者を一人に決めておくことです。「とりあえず共有」を防げますからね。

    博士

共有名義の不動産トラブル

● 共有者間の合意がないと、売却ができない
● 他の共有者の持ち分を買い取り、共有名義解消も検討

(今回のソーゾク博士=松浦綜合法律事務所代表弁護士の松浦絢子さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年7月1日時点での情報に基づきます)

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