1.事例:夫婦共働きで貯めたお金が下せない

お子様がいないご夫婦の夫が突然亡くなりました。
夫を見送った悲しみがまだ癒えていない奥様でしたが、葬儀などが終わり一段落したので、夫名義の預貯金2000万円を解約するために銀行へ行ったところ、「銀行所定の相続手続きをとらないと、いくら奥様でも解約できませんよ」と言われてしまいました。ちなみに夫には疎遠になっている兄と、仲が悪い妹がいます。
夫婦共働きで一生懸命節約して貯めたお金なのに、どうして奥様一人で解約できないのでしょうか?

2.相続人全員の話し合いで、預貯金の取得者を決める

奥様が一生懸命に家計をやりくりして貯めた夫名義の預貯金も、不動産と同じく相続財産に含まれ、遺産分割の対象となります。
つまり相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をして、誰が預貯金を取得するのかを決めなければならないということです。
このケースの場合、相続人は奥様と夫の兄と妹の3人になります。そのため、疎遠になっている夫の兄と、仲が悪い妹と連絡を取り、夫名義の預貯金を奥様が取得することについて承諾をもらう必要がございます。

奥様からすると、夫の兄と妹と話し合い(遺産分割協議)をすることは、精神的にも肉体的にも非常に負担がかかり大変なことだと思います。場合によっては奥様が夫名義の預貯金を取得することについて承諾しないかもしれません。
このような事態に陥るのを回避する手段として遺言書の作成が挙げられます。

奥様が一生懸命家計をやりくりして貯めた夫名義の預貯金も、不動産と同じく相続財産に含まれ、遺産分割の対象となる。
つまり相続人全員で話し合い(遺産分割協議)をして、誰が預貯金を取得するのかを決めなければならない。
このケースの場合、相続人は奥様と夫の兄と妹の3人。そのため、疎遠になっている夫の兄と、仲が悪い妹と連絡を取り、夫名義の預貯金を奥様が取得することについて承諾をもらう必要がある。
奥様からすると、夫の兄と妹と話し合い(遺産分割協議)をすることは、精神的にも肉体的にも非常に負担がかかり大変なこと。場合によっては奥様が夫名義の預貯金を取得することについて承諾しないかもしれない。
このような事態に陥るのを回避する手段として遺言書の作成が挙げられる。

3.全財産を妻に相続させる遺言書があれば…

このケースの場合、夫が生前に「遺言者の有する一切の財産を、妻〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に相続させる。」内容の遺言書を作成していれば、夫の兄や妹の承諾を得ることなく、奥様が預貯金を全て取得することが可能でした。なぜなら、夫の兄や妹(第3順位の相続人)には遺留分がないからです。

遺留分とは、残された家族への最低限の財産保証のことで、配偶者や子(第1順位の相続人)、親(第2順位の相続人)に認められている権利になります。
この権利が兄弟姉妹(第3順位の相続人)にはないため、遺言書の内容にどれだけ不満があっても、兄弟姉妹は遺留分を主張して遺言の内容に文句を言うことはできないのです。

4.共同遺言の禁止に注意

夫が先に亡くなった場合は残された奥様が困ることになりますが、奥様が先に亡くなってしまう場合もございます。
どちらが先に亡くなっても残された方が困らないように、夫婦がお互いに遺言書を作成しておけば安心です(夫婦相互遺言)。
ただし、1枚の紙に二人で書くこと(共同遺言)は法律(民法975条)で禁止されていて無効となってしまいますので注意してください。

5.預貯金の仮払い制度の利用

妻に全財産を相続させる内容の遺言書もなく、夫の兄や妹からの承諾も得られない場合は、凍結された亡夫名義の銀行口座を解約することはできません。

夫婦で築いた財産のほとんどが亡夫名義の預貯金になっていると、葬儀費用や当面の生活費が工面できず、一人残された奥様が困ってしまいます。
このような事態(預貯金はあるけど引き出すことができないという事態)を解決するために、今回の相続法改正で「預貯金の仮払い制度」が新設・改正されました。ただし、家庭裁判所を通さない場合は引き出し額に上限が決められていたり、家庭裁判所を通す場合は手間と費用と時間がかかりますので、やはりきちんと遺言書を作成して残しておくことが大切です。

(記事は2019年11月1日時点の情報に基づいています)