目次

  1. 1. 疎遠な兄弟で不動産を共有した事例
  2. 2. 共有名義の不動産が相続トラブルにつながる理由
    1. 2-1. 相続人の意見が合わず売却や賃貸が困難
    2. 2-2. 共有持分に応じて賃料が発生することも
    3. 2-3. 共有者と連絡が取れなくなる可能性がある
    4. 2-4. 固定資産税や管理費の負担方法でもめる
  3. 3. 共有名義の不動産の生前対策とは
    1. 3-1. 共有から単独に変更
    2. 3-2. 共有不動産を売却して現金化
    3. 3-3. 遺言書を作成
  4. 4. 共有名義の不動産を相続したら
    1. 4-1. 共有不動産の遺産分割方法
    2. 4-2. 遺産分割協議・調停
    3. 4-3. 共有者と連絡がつかない場合の対処法
  5. 5. 共有名義の不動産相続については専門家に相談を
    1. 5-1. 弁護士
    2. 5-2. 税理士

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共有名義となっている不動産に関する事例として、親が単独で不動産を所有していたが、遺言を残さなかったため兄弟間で共有になったケースに関わったことがあります。

通常であれば、相続人全員で遺産分割協議を行い、相続人一人の単独所有にするとか、不動産を売却して代金を法定相続分にしたがって分配するという処理が行われます。

しかし、このケースでは、もともと兄弟どうしが疎遠であったため、共有状態のまま不動産が放置されてしまいました。そしてその後、10年くらいが経過。相続人の一人が不動産を売却したいと考えたのです。

しかし、その段階ではすでに、共有者となっている兄?弟?とは連絡が取れない状態で、不動産を処分することもままならない状況となってしまいました。

相続した不動産が共有である場合に相続トラブルにつながりやすい理由は、いくつか挙げられます。以下では、代表的な理由をご紹介します。

共有とは、一つの物を複数の人が共同で保有する状態をいいます。共有している人を共有者といい、共有者が持つ権利を共有持分権といいます。

これに対し、一つの物を一人の人が単独で保有する状態を所有といいます。所有であれば所有者が物を自由に使用したり売却したり、他人に賃貸したりということが可能です。

しかし、共有の場合には、共有者が単独で物を売却することができません。なぜなら、民法において、「共有物の処分については共有者全員の同意が必要である」と定められているためです。

また、共有不動産を第三者に賃貸しようにも、単独では賃貸借契約を締結できないことがあります。賃貸借契約の締結については、共有者全員の同意が必要か否か、争いがあるものの、「少なくとも共有持分の過半数の同意が必要」と考えられているからです。

このため、相続によって不動産が共有となった場合には、共有者間の意見が合わないと売却や賃貸をすることが困難となります。すると結果として、不動産が有効利用されずに放置される事態を招いてしまいます。

不動産が共有である場合、各共有者は共有持分に関わらず、単独で不動産の全部を使用することができます。例えば、共有不動産が家屋であるならば、一人の共有者が他の共有者の同意を得ずにその家に住むことができ、他の共有者は明け渡しを求めることができないということです。

ただし、単独で不動産を使用している共有者は、共有持分に応じて他の共有者に対して賃料相当額を支払う必要があります。そうなると、妥当な賃料額をめぐって争いになる可能性があります。このようなリスクもあるため、共有になっている不動産は誰も住みたがらなくなってしまいます。

不動産が共有状態となるきっかけの多くが相続であるため、共有者は親族であることが一般的です。もっとも、昨今では親族づきあいが希薄化しており、故郷から遠く離れた場所で生活を営む人が増えています。

共有者と連絡が途絶えてしまうと、その後不動産を売却したいと考えたときに共有者を探し出すなどの手間がかかります。また、共有者がみつかったとしても、関係性が悪い場合には不動産の管理や処分についての話し合いを進めにくいことが多いでしょう。

また、共有者と連絡を取っていない間に共有者が亡くなり、その子どもや配偶者に不動産が相続されている可能性もあります。そうなると、誰が相続人であるかを把握することすら容易ではなくなります。

不動産が共有となっている場合でも、当然ながら不動産の固定資産税が発生します。また、マンションでは管理費や修繕積立金などが発生しますし、土地であっても草木の伐採など管理のための支出があります。

共有不動産は先ほど説明したとおり、共有者間の話し合いがまとまらなければ、誰も使用せず放置される傾向にあります。そうなると、共有者のうち誰が不動産の管理をするのか、管理にかかる費用をどのように負担するのか、といったことをめぐって共有者の間でトラブルになることがあります。

不動産がもともと共有名義である場合や、相続人となる者が複数あり相続後に共有となる可能性が高い場合には、生前対策が欠かせません。

すでに共有となっている不動産については、できるだけ生前に単独名義に変更しておいたほうがよいでしょう。ただし、共有者に対して相応の金銭の支払いが必要になることが通常です。

一番簡便なのは、共有不動産を生前に売却して現金化することです。税金対策として不利になる可能性もありますが、そもそも手元の現金が少ない場合には、生活費や介護費用のため現金化しておくメリットがあります。

相続人が複数いる場合には、生前に遺言書を作成しておくことが大切です。共有状態とならないよう、不動産を承継する人を一人に決めておきます。

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共有不動産について所有者が生前対策をせずに亡くなった場合には、次のような対処法があります。

共有不動産の遺産分割方法として、不動産を売却した代金を相続人間で分配する「換価分割」のほか、相続人の一部が単独で不動産を取得し、その代金相当額を代償金として他の相続人に支払う「代償分割」があります。

このほか、相続財産を物理的に複数に分割(分筆)してそれぞれを単独所有する「現物分割」もありますが、不動産については難しいことが多いでしょう。

遺産分割には、相続人全員の合意が必要です。相続人どうしの話し合いが難しいという場合には、家庭裁判所における遺産分割調停を利用することもできます。

共有者と連絡がつかなくなった場合に利用できる制度として、不在者財産管理人を選任するなどの方法があります。しかし、管理人報酬が必要とあるなど利用しにくいことが指摘されていました。

そこで、共有物の使用や処分を促すため、2021年4月28日成立の改正民法により、裁判所の手続きを通して行方不明となっている共有者の持分を強制的に取得することなどが可能となります。改正法の施行は2023年4月ころと想定されています。

相続した共有名義の不動産について遺産分割を円滑に進めたいという場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。また、生前対策をする場合には、将来相続トラブルが発生しないような遺言書を弁護士に作成してもらうことができます。

遺産が一定額以上あり相続税が課税される場合には、遺産分割の仕方によって税額が変わる可能性があるため、税理士にも相談しておくとよいでしょう。また、不動産オーナーをはじめとする資産家は、生前から税理士に相談して相続税対策をしているケースも多いようです。

両親が不動産を所有していて、子が複数いる場合、生前から対策をとっておくことが賢明です。弁護士や税理士などの専門家に、早めに相談しておくと安心につながるでしょう。

(この記事は2021年10月1日現在の情報に基づきます)

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