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「父の意思ではない」と裁判になることも

  • あれ、財布がない。どこに置いたかなぁ。

    夫・一郎
  • またですか。最近、物忘れが多いわね。認知症の兆候じゃないかしら。相続への影響が心配だわ。

    妻・正子
  • 夫の健康より、相続の心配かよ。でも、相続と認知症は関係あるのかな。

    一郎
  • 大いにあります。認知症になると、生前の相続対策が難しくなります。症状が進行すると「遺言するのに必要な判断能力が低下した状態」とみなされる可能性があるので。例えば、遺言の内容に不満のある相続人が「この遺言書は父が認知症の時に作成されたもの。父の意思ではないから無効だ」と裁判となることがあります。

    ソーゾク博士
  • それは大変。どうすればいいのかしら?

    正子
  • 裁判になっても、認知症だったことを示す証拠がなければ、遺言書が無効とされることはないでしょう。とはいえ、争いの種はなくしておきたいところ。大事なのは、認知症の症状が表れる前に、遺言書を作成することです。「認知症の疑いはない」旨の医師の診断書をもらっておけば、さらに安心です。

    博士
  • お父さん、遺言書の作成を急ぎなさいよ。

    正子
  • 遺言は、公証人が本人に意向を確認して作成する公正証書遺言を活用するのも手です。判断能力があったことへの証明につながり、自筆で作成する遺言書と比べて無効とされることは少ないでしょう。

    ソーゾク博士

相続人が認知症の場合、遺産を分ける話し合いが進められない恐れ

  • 相続する人が認知症だと何か問題はあるのかな?

    一郎
  • 相続人に認知症の人が含まれる場合、遺産の分け方を話し合う遺産分割協議が進められない恐れがあります。協議では相続人全員の合意が必要となりますが、判断能力がない相続人による合意は無効となってしまうためです。

    博士
  • 夫が亡くなった時、私が認知症になっているかも。相続人となる見込みの子どもたちに迷惑をかけてしまうと思うと、心配だわ。

    正子
  • 遺産分割協議をする場合は、判断能力が不十分な人の財産管理などを支援する成年後見制度を活用することになります。後見人が認知症の方の代わりに協議の場に参加します。

    博士
  • ほかに有効な手立ては?

    一郎
  • ここでも遺言書です。遺言書さえあれば、基本的にその通りに財産を分けることになるため、遺産分割協議は不要ですので。

    博士
  • 遺産を残す側としても相続する側にとっても、認知症対策として遺言書が大事なんだなぁ。

    一郎
  • 遺言書があっても、相続人が認知症の場合、相続手続きを進めるのが難しいことがあります。対策として、遺言書の中で、遺言の内容を実行する「遺言執行者」として、弁護士などの専門家を指定するとよいでしょう。遺言執行者が確実に手続きをしてくれますので、安心です。

    博士

■認知症の場合

・生前の相続対策が難しい

・遺言の効力が争われる恐れ

・相続人が認知症の場合、成年後見制度の活用を検討

(今回のソーゾク博士=鳥飼総合法律事務所弁護士・高橋美和さん、構成=相続会議編集部)

(記事は朝日新聞土曜別刷り紙面「be」に掲載した内容を基に掲載しています。2022年7月1日時点での情報に基づきます)