目次

  1. 1. 遺言信託とは
  2. 2. 遺言信託の流れ
  3. 3. 遺言信託にかかる費用
  4. 4. 遺言信託のメリット
  5. 5. 遺言信託のデメリット
  6. 6. 法律上の遺言信託との違い
  7. 7. 遺言信託と家族信託の違い
  8. 8. 遺言信託よりも専門家に直接依頼すべき理由
  9. 9. まとめ

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「遺言信託」とは、信託銀行や証券会社が遺言書作成を支援してくれて、できあがった遺言書を保管し遺言執行まで行ってくれるサービスのことです。

遺言信託で受けられるサービス内容は以下の通りです。

  • 遺言内容の相談
  • 遺言書作成の支援
  • 遺言書の保管
  • 資産活用のアドバイス
  • 遺言内容の実現(遺言執行)

「どのような遺言内容にしていいかわからない」「遺言書の作成方法に不安がある」「信頼している金融機関に遺言書を預かってほしい」などの希望がある方によく利用されています。

次に、遺言信託を利用する場合の流れをご説明します。

【ステップ1】対応している金融機関へ相談
まずは遺言信託サービスを行っている金融機関へ相談し、遺言内容や相続人、受遺者、それぞれに受け継がせたい財産の内容などを伝えます。

【ステップ2】遺言内容の決定
担当者からアドバイスを受けながら、最終的な遺言書の内容を決定します。

【ステップ3】公正証書遺言を作成
遺言書は「公正証書遺言」の要式で作成します。遺言者本人が対応しなければならないので、自分で公証役場へ申込みをして遺言書を作成しましょう。信託銀行の職員に相談すれば、証人になってくれることもあります。
また信託銀行を遺言執行者として指定する必要があります。

【ステップ4】遺言信託契約の締結
遺言書ができあがったら信託銀行と遺言信託契約を締結します。
遺言信託契約時の必要書類は以下の通りです。
・信託の申込書
・遺言書の正本(公証役場で受け取ります)
・財産目録
・戸籍謄本
・印鑑証明書など
また遺言者が死亡したときに信託銀行へ連絡をする「死亡通知人」も指定します。

【ステップ5】死亡を通知
遺言者が死亡して相続が開始したら、指定された死亡通知人が信託銀行へ相続開始を通知します。

【ステップ6】各種調査や財産目録の作成
信託銀行が「遺言執行者」として遺言書の内容を相続人へ開示し、相続財産調査や財産目録の作成を行います。

【ステップ7】相続税についてのアドバイス、遺言執行
信託銀行が提携している専門家を介して不動産や預貯金などの名義変更などの遺言執行が行われます。相続税が発生する場合、税務についてアドバイスも受けられます。
すべての遺産整理業務を完了すると、信託銀行による遺言執行が終了します。

遺言信託は便利なように思えますが、「費用が高額」というデメリットがあります。
基本的には「遺産の額(相続税評価額)」に一定割合を掛け算して計算されますが、多くの金融機関で「最低報酬額」が定められています。

たとえばメガバンクの場合、最低報酬額は110万円や165万円などとされており「最低でも100万円」はかかり、遺産の額によってそこからさらに上乗せされていきます。

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高額な費用がかかる「遺言信託」ですが、以下のようなメリットがあります。

  • 遺言内容の相談ができる
  • 遺言書作成をサポートしてもらえる
  • 遺言執行もしてもらえる
  • 安心感がある
  • 資産運用のアドバイスを受けられる

特に資産運用のアドバイスを受けられるのは金融機関ならではのメリットといえるでしょう。

一方、デメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 費用が高い
  • 身分上の行為については遺言執行してもらえない
  • 遺言内容によっては断られるケースがある
  • 親族同士でもめると対応してもらえない

信託銀行は子どもの認知などの身分上の行為は受託できません。一部の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書は「トラブルのリスクがある」という理由で断られるケースも少なくありません。
親族同士でトラブルになりそうな事案やすでにもめているケースでは、遺言執行者への就任を拒否されます。

遺言信託は「法律上の遺言信託」とは異なります。法律上の遺言信託は「遺言によって民事信託を設定すること」であり、金融機関のサービスではありません。

一般的に「遺言信託」というと金融機関の遺言書保管や執行などのサービスをいいますが、法律家が「遺言信託」と言う場合は異なる意味を表している可能性があるため、注意が必要です。

「遺言信託」と「家族信託」もまったく異なります。
上述のとおり、遺言信託は遺言書を金融機関に預けて管理してもらい、執行まで行ってもらえるサービスで、費用は極めて高額です。

一方、家族信託は信頼できる家族に財産を預けて指定したように管理処分してもらう契約です。自分たちで信託契約を設定すれば、費用は特にかかりません。司法書士などに依頼すると報酬が発生しますが、金融機関の遺言信託ほどにはならないケースが多数です。

一般的に金融機関の遺言信託を利用するなら、司法書士や税理士などの専門家に直接依頼する方がおすすめです。遺言信託は費用が高すぎるためです。

実際、遺言信託を利用しても不動産登記は司法書士へ、税務は税理士へ外注されて別途費用が発生します。つまり信託銀行は「コーディネート費用」として100万円を超える報酬を受け取っているので、直接専門家に依頼した方が費用は安くなります。

専門家であれば子どもの認知などの身分行為の執行もお願いできて、状況により家族信託の相談もできます。遺留分を侵害する内容の遺言を希望する場合にも、なるべくトラブルを起こさないための対策方法をアドバイスしてくれるでしょう。

信託銀行は「相続でもめる」など家族内のトラブルに対応してくれませんが、弁護士であればトラブルになったときの解決もサポートしてくれます。

金融機関へ依頼する前に、相続に力を入れている司法書士や税理士などの専門家へ直接相談してみるのが得策です。

遺言信託は基本的に、高額な資産を持つ富裕層を主なターゲットとするサービスです。そのため一般家庭での利用は適さないでしょう。
遺言書を作成して遺産相続対策を検討したいなら、相続に積極的に取り組んでいる弁護士や司法書士へ直接相談してみるのがベストです。今後の相続対策の参考にしてみてください。

(記事は2022年2月1日時点の情報に基づきます)

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