農地でよくある相続トラブル 4つのパターンと対処方法を司法書士が解説

農地が遺産に含まれていると、様々な相続トラブルが発生する可能性があります。遺産分割がまとまらないケース、農業を行う相続人がいないケース、相続税が高額になるケース、遺言書があっても遺留分トラブルが起こる場合などが考えられます。今回は農地でよくある相続トラブルのパターンや対処方法を司法書士がお伝えします。
農地が遺産に含まれていると、様々な相続トラブルが発生する可能性があります。遺産分割がまとまらないケース、農業を行う相続人がいないケース、相続税が高額になるケース、遺言書があっても遺留分トラブルが起こる場合などが考えられます。今回は農地でよくある相続トラブルのパターンや対処方法を司法書士がお伝えします。
目次
「相続会議」の司法書士検索サービスで
農地が相続財産に含まれていると、通常よりも手続きが増えることがあります。
相続人間でトラブルになる可能性もないとはいえません。
代表的な4つのパターンを紹介します。
相続財産に不動産が含まれている場合、相続人に名義を変更するには登記申請を行う必要があります。「相続登記」は不動産登記簿に記録された所有者などが亡くなった場合に、権利を取得した人に名義を変更する手続きです。
所有者などが亡くなった場合、自動的に不動産登記簿も変更されるわけではありません。手続きをしないと亡くなった人が所有者としていつまでも記録に残ります。
現行法では、相続登記の手続きに期限はなく、罰則もありません。
とはいえ、放置すると資料が散逸したり、相続人が死亡して新たな相続が発生したりすることもあり得るので、早めの手続きをおすすめします。
そして、相続放棄をしていない相続人については、法定相続割合以外で登記をする場合は、相続登記の前提として遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
遺産分割の手続きは、原則として相続人全員が参加し、協議が成立してはじめて、定まった割合で登記を行うことができます。当事者の数が多いほど、協議は難航するでしょう。
例えば、農地の相続をある特定の相続人が主張し、それに対して他の相続人が異議を唱えた場合、そのままでは協議が成立しないことになります。相続人全員が押印済みの遺産分割協議書を、相続登記においては添付書類として法務局に提出する必要があります。相続人のうち、一人でも押印を拒否した場合は、書類を作成できません。その場合は、調停など第三者を交えた方法を検討するか、法定相続割合で登記を行うことになります。
法定相続割合で登記をした場合、農地は複数の相続人による共有になるので、共有者の誰かが死亡した場合は、さらに相続が発生して権利関係が複雑になります。管理に支障をきたすこともあり得るので、注意が必要でしょう。
また、農地の固定資産評価額は、一般的に宅地に比べると低くなっています。
そのため、相続財産を金額的に平等な割合で相続する場合、農地を相続する人は、農地以外にも他の相続人とそう変わらない財産を得ることになります。この分割方法に他の相続人が不満を抱いて、遺産分割協議がまとまらないことも考えられます。また、農地の評価方法について意見の相違があり、トラブルに発展することもないとはいえません。
また、私の経験則上、農地は特定の相続人が所有権を取得するパターンが多いですが、複数の人が農地を相続すると主張した場合も、遺産分割協議がまとまらない可能性があります。農地を共有すると、耕作をする際の使用割合や使用料についても話し合いが必要です。もしも、両者がそれぞれ単独で相続することを主張したならば、議論が平行線をたどり、いつまでも協議が成立しないこともあり得ます。
また、遺言書が残っている場合でも、特定の相続人に財産を相続させる内容であれば、遺留分に関するトラブルが起こることも考えられます。
相続人全員が農業を行っていなければ、誰も農地の相続を希望しないことがあります。
私の事務所がある青森県でも、若年層の農業人口は年々減り続けています。
耕作希望者がいなくても、近隣に希望者がいれば貸し出すことができることもあります。
しかし、そのような人が見つからなければ、それまで作物を栽培していた農地は耕作放棄地となって、荒れ地になってしまいます。
事務所の近くにある農業集落でも、目に見えて耕作放棄された農地が増えています。
また、相続人が近隣に住んでいればよいのですが、全員が農村を離れて、都会に生活拠点を置いていることも珍しくありません。その場合、何らかの方法で農地の処分を目指すことが一般的です。ところが、農地は売買に成約があり、宅地と比べると処分に手間がかかるうえ、売却金額も一般的に高くありません。財産価値も高いとはいえない地域が多いので、実家に戻らない人にとっては、農地は取得を避けたい財産になりがちです。
そのようなケースでは、農地を取得する人が決まらずに、遺産分割協議が難航することもあり得ます。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る司法書士を探す農地は、宅地と異なり農地法の制約があり、宅地に転用したり、売買したりすることについては、一定の制約が課されています。相続登記を行うにあたっての制約はないものの、その後の使用方法について検討する場合は、行政書士などの専門家に相談しましょう。
農地でも、宅地と同様に相続税法上の評価額が高くなるケースがあります。
例えば、市街化区域内にあり、転用が容易な農地などです。
農地は一般的に面積が大きいので、宅地と同水準で評価される場合は、地域によっては評価額が高額になり、相続税も多額になる可能性があります。
心配な場合は、相続の発生前に税理士に相談することをおすすめします。
農地の相続トラブルを避けるためには、事前の対策が重要です。
生前に話し合いを行い、遺言をしておくとトラブルになる可能性は低くなるでしょう。
また、農地を使用しないことが相続の発生前に決まっていれば、あらかじめ売却先を探しておくことが望ましいでしょう。
農地の相続に関して、困ったことが起こった場合は専門家に相談することをおすすめします。遺産分割については弁護士や司法書士、相続税については税理士に相談するとよいでしょう。また、農地転用については行政書士に相談してみましょう。
(記事は2021年12月1日時点の情報に基づいています)
「相続会議」の司法書士検索サービスで