目次

  1. 1. 農地でよくある相続トラブルのパターン
  2. 2. 遺産分割の方法がまとまらない
    1. 2-1. 誰が農地を相続するのか、相続人全員の同意が必要
    2. 2-2. 遺産分割が成立しないと、相続登記に支障をきたす
    3. 2-3. 法定相続割合での登記はリスクがある
  3. 3. 誰も農業を継続しないので引き継ぎ手がない
  4. 4. 農地の相続、転用や売却の手続方法がわからない
  5. 5. 農地の相続税が高くなって払えない
  6. 6. 農地の相続トラブルを避ける方法
    1. 6-1. 生前に遺言書を作成する
    2. 6-2. 売却や相続放棄を検討する
  7. 7. まとめ 農地の相続に困ったら弁護士などに相談を

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農地が相続財産に含まれていると、通常よりも手続きが増えることがあります。相続人間でトラブルになる可能性もないとはいえません。

代表的な4つのパターンは以下の通りです。

  • 遺産分割の方法がまとまらない
  • 誰も農業を継続しないので引き継ぎ手がない
  • 農地の相続、転用や売却の手続方法がわからない
  • 農地の相続税が高くなって払えない

それぞれについて解説していきます。

遺言書がない場合、被相続人(亡くなった人)の遺産の分け方について、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。相続財産に農地が含まれる場合、誰がその農地を相続するかについて相続人間で同意する必要があります。

農地は特定の相続人が所有権を取得するパターンが多いですが、複数の人が「農地を相続する」と主張した場合、遺産分割協議がまとまらない可能性があります。

農地の固定資産評価額は、一般的に宅地に比べると低くなっています。そのため、相続財産を金額的に平等な割合で相続する場合、農地を相続する人は、農地以外にも他の相続人とそう変わらない財産を得ることになります。この分割方法に他の相続人が不満を抱いて、遺産分割協議がまとまらないことも考えられます。農地の評価方法について意見の相違があり、トラブルに発展することもないとはいえません。

相続財産の中に不動産が含まれており、不動産の登記名義を被相続人から相続人の名義に変更する場合には、法律に規定された書類を添付して不動産の所在地を管轄する法務局に登記申請をする必要があります。

この手続きを「相続登記」と言います。

相続登記は、2024年4月1日から義務化されました。「自分が不動産を相続したことを知ってから3年以内」に申請を行う必要があり、正当な理由なく相続登記を怠れば10万円以下の過料を科せられる可能性があります。

遺産分割協議が成立せずに期限内に相続登記ができない場合でも、ひとまず罰金の対象とならないような制度(相続人申告登記制度)も設けられてはいますが、遺産分割協議が整わないということは長期間にわたり相続問題に関り続けるという負担を負うことになります。

相続登記するには、相続人全員が押印済みの遺産分割協議書(遺産分割の内容を証明する書類)を、添付書類として法務局に提出する必要があるためです。相続人のうち、一人でも押印を拒否した場合は、書類を作成できません。

遺産分割協議が整わず相続登記ができない場合には、調停など第三者を交えた方法を検討するか、法定相続割合(法律で定められた遺産の分け方の割合の目安)で登記を行うことになります。

法定相続割合で登記をした場合、農地は複数の相続人と共有することになります。農地を共有すると、耕作をする際の使用割合や使用料についても話し合いが必要です。

時がたち、共有者の誰かが死亡した場合は、さらに下の代が農地を相続が発生することになるため、相続人がどんどん増えていき、権利関係が複雑になります。管理に支障をきたすこともあり得るので、注意が必要でしょう不動産を共有名義にする場合には、将来のことを見据えておくことも重要となります。

なお、先ほども少し触れましたが、誰が農地を相続するか決められない場合、法定相続登記以外にも、2024年4月から始まった「相続人申告登記」を活用することで、期限内に相続登記をできないことにより受ける罰金をひとまず回避することができます。

相続人全員が農業を行っていなければ、誰も農地の相続を希望しないことがあります。若年層の農業人口は年々減り続けています。耕作希望者がいなくても、近隣に希望者がいれば貸し出すことができることもあります。

しかし、そのような人が見つからなければ、それまで作物を栽培していた農地は耕作放棄地となって、荒れ地になってしまいます。

また、相続人が近隣に住んでいればよいのですが、全員が農村を離れて、都会に生活拠点を置いていることも珍しくありません。その場合、何らかの方法で農地の処分を目指すことが一般的です。

ところが、農地は売買に成約があり、宅地と比べると処分に手間がかかるうえ、売却金額も一般的に高くありません。財産価値も高いとはいえない地域が多いので、実家に戻らない人にとっては、農地は取得を避けたい財産になりがちです。

そのようなケースでは、農地を取得する人が決まらずに、遺産分割協議が難航することもあり得ます。

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農地は、宅地と異なり農地法の制約があり、宅地に転用したり、売買したりすることについては、一定の制約が課されています。相続登記を行うにあたっての制約はないものの、その後の使用方法について検討する場合は、行政書士などの専門家に相談しましょう。

農地でも、宅地と同様に相続税法上の評価額が高くなるケースがあります。

例えば、市街化区域内にあり、転用が容易な農地などです。農地は一般的に面積が大きいので、宅地と同水準で評価される場合は、地域によっては評価額が高額になり、相続税も多額になる可能性があります。心配な場合は、相続の発生前に税理士に相談することをおすすめします。

農地の相続トラブルを避けるためには、事前の対策が重要です。生前に家族で話し合いを行い、誰に農地を相続させるかを決め、その旨の遺言書を作成しておくとトラブルになる可能性は低くなるでしょう。また、遺言書を作成する場合には、後の紛争を防止するためにも公正証書での作成をおすすめします。

また、農地を使用しないことが相続の発生前に決まっていれば、あらかじめ売却先を探しておくことが望ましいでしょう。

売却先が見つかる見通しもなく、どうしても農地を相続したくないのであれば、相続放棄することも選択肢です。相続放棄は「自分に相続の開始があったことを知った時」から3カ月以内に手続きをとる必要があり、また相続放棄をすると、預貯金といった他のプラスの遺産もすべて相続しないことになるので注意が必要です。

農地の相続に関して、困ったことが起こった場合は専門家に相談することをおすすめします。遺産分割については弁護士や司法書士、相続税については税理士に相談するとよいでしょう。また、農地転用については行政書士に相談してみましょう。

(記事は2024年7月1日時点の情報に基づいています)

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