1.農地活用の基礎知識

農地の活用は、「農地を農地として活用する方法」と「農地を農地以外に転用して活用する方法」の2つに大別されます。

転用とは、農地を農地以外にすることです。農地の転用には農地法の転用許可が必要となります。遊休農地も農地に該当し、現在耕作を行っていなくても転用するには許可が必要です。農地の中には、転用できる農地とできない農地が存在します。農地の種類と転用の可否は以下の通りです。

また、市街化区域内の農地は届出だけで転用ができることになっており、許可は不要です。市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域、またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域になります。農林水産省によると、2019年における全国の荒廃農地面積の状況は下表の通りです。

出典:農林水産省(https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-7.pdf)
出典:農林水産省(https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-7.pdf)

※農用地区域とは、農業振興地域内における集団的に存在する農用地や、土地改良事業の施行にかかる区域内の土地などの生産性の高い農地など、農業上の利用を確保すべき土地として指定された農地を指します。

農業振興地域は、今後、相当期間(概ね10 年以上)にわたり、総合的に農業振興を図るべき地域のことです。全国の遊休農地(約28.4万ha)のうち、約65%(約18.6万ha)は原則として転用できない農用地区区域内農地となっています。よって、遊休農地の活用では、まずは農地を農地のまま活用する方法を中心に模索することが必要です。

2.遊休農地の活用事例

農地を農地のまま利用している遊休農地の活用事例について、農林水産省が開示している活用事例を紹介します。

出典:農林水産省「荒廃農地解消の優良事例集~荒廃農地再生の取組~」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/zireir0201.html)
出典:農林水産省「荒廃農地解消の優良事例集~荒廃農地再生の取組~」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/zireir0201.html)

農林水産省では、優良事例として13の活用事例を紹介しています。事例の特徴としては、農地中間管理機構を活用した集約化の事例が最も多いという点です。13件中、7件が農地集積・集約化となっています。

農地中間管理機構とは、都道府県に設置された農地の賃貸を行いやすくするための組織です。「農地バンク」とも呼ばれており、「農地の中間的受け皿」の役割を果たしています。農地中間管理機構では、農地を「貸したい人」から農地を借り上げ、「借りたい人」へ転貸することも行っています。活用事例の割合からしても、遊休農地は農地中間管理機構へ賃貸することが最も取組みやすい活用方法と考えられます。

他の活用事例としては地域集落の共同活動等もありますが、数が少なく実現性が低いため、活用の難易度としては高いものと思われます。

また、農用地区内の農地は農地中間管理機構に売却することも可能です。農地中間管理機構へ売却すると、売却によって生じる譲渡所得から800万円を控除できるという節税特例があります。農地中間管理機構は売却先として活用してもメリットがありますので、賃貸だけでなく売却も検討してみましょう。

3.遊休農地活用の補助金

遊休農地の活用には、都道府県と市区町村のそれぞれにおいて様々な補助金制度が設けられています。

例えば、栃木県においては「遊休農地再生支援事業」(2019年4月現在)として、遊休農地などの再生作業(刈払い、抜根、深耕、整地、土壌改良及び放牧に係る簡易牧柵の整備など)に係る経費の一部について、10アール あたり3万円まで補助するといったような補助金制度を設けています。

補助金の内容は、基本的には遊休農地を農地として再生や集約化するための取り組みに対して補助が出るものがほとんどです。農地を農地以外に転用するケースにおいての補助金は基本的にありません。農地の再生や集約化のための補助金なら様々なものが用意されていますので、農地転用できない農地をお持ちの方は、参考にしてみてください。

【遊休農地活用の補助金】
都道府県独自の荒廃農地対策事業一覧(令和3年4月時点)

4.転用せずにできる農地の活用方法

転用せずにできる農地の活用方法としては、以下のものが挙げられます。

  • 農地を農地として貸す
  • 市民農園を行う

一つ目の「農地を農地として貸す」方法としては、「全国農地ナビ」に登録して借り手を探すといった方法があります。全国農地ナビとは、一般社団法人全国農業会議所が運営する公的なサイトです。

農地を借りたい人が直接農地の場所を航空写真によって確認することができます。全国農地ナビに登録することによって、全国の人が情報を閲覧できるため、貸せる可能性が上がります。

二つ目の「市民農園を行う」という方法もあります。特定農地貸付法という法律を使うと、一定の要件を満たす農地であれば農地法の許可は不要となります。農地内に施設(トイレ、手洗い場、水飲み場、農機具収容施設、駐車場、柵等)を設ける必要性が出てくると思われますが、市民農園整備促進法の手続きを踏むことで施設を建てることができます。

5.転用が必要な農地の活用方法

農地転用が可能であれば、以下のように活用できる可能性があります。

  • アパート
  • レストラン
  • 老人ホーム
  • コインランドリー
  • 駐車場
  • 太陽光発電
  • トランクルーム置場
  • 資材置場

太陽光発電は、原則として農地転用が必要ですが、2018年に農地法の一部規制緩和が行われたことで、農用地区内の農地でも営農型太陽光発電というのができるようになりました。ただし、営農型太陽光発電をするには、太陽光パネルの下で営農が継続されることが要件となっています。遊休農地の場合、そもそも営農をやめている状況であるため、太陽光発電をするなら原則通り許可が必要です。

農地転用をするためには、まず市区町村役場に「農地種別調査」を申請して農地転用できる農地かどうかの確認を行います。農地転用できる農地(第2種農地の一部または第3種農地)であれば、転用許可の申請書類を提出します。転用許可申請は、行政書士に依頼することが多いようです。

その後、農業委員による現地調査や農業委員会総会審議、農業会議諮問等が行われ、許可要件を満たしていれば農地転用ができることになります。許可が下りるまでの期間は、申請してから約1カ月程度です。

まとめ

以上、遊休農地の活用について解説してきました。全国の遊休農地のうち、約65%が転用できない農地となっています。転用できない農地では、農地中間管理機構を利用して賃貸する活用方法が取り組みやすい選択肢となっています。遊休農地の再生や集約化を目的としたものであれば、各自治体に様々な補助金メニューが用意されています。転用できる農地であれば土地活用の選択肢は広がりますので、転用の可否を把握していない方は、農地種別調査の申請を行うことから始めるのが良いでしょう。

(記事は2021年9 月1日時点の情報に基づいています)