相続税申告の税理士報酬はいくらかかる? シミュレーションの方法を紹介
相続税の申告は税理士に頼んだ方が安心です。ただ、報酬が気になります。いくらかかるのでしょうか。事前にシミュレーションすることは可能でしょうか。見積額を知る方法を税理士が解説します。
相続税の申告は税理士に頼んだ方が安心です。ただ、報酬が気になります。いくらかかるのでしょうか。事前にシミュレーションすることは可能でしょうか。見積額を知る方法を税理士が解説します。
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相続税の申告を税理士に依頼すると、報酬がかかります。この金額の目安で多いのが、「遺産総額×0.5%~1%」です。「相続税専門」「資産税専門」を掲げる税理士事務所のウェブサイトでもよく目にします。
ただ、実際にこの金額で収まるかというと、そうでもありません。プラスの報酬がかかるのが一般的です。なぜなら、相続税の業務は「申告だけ」ではないからです。
申告の前に、事前の確認や資料集めが必要です。計算にも時間がかかります。依頼主の相続の事情が複雑であればあるほど手間は増えます。きちんと見合った報酬額を計算しないと、税理士は赤字に陥ってしまうのです。
どのようなときに税理士報酬は高額になるのでしょうか。主に次のようなケースが挙げられます。
相続人の数が多いと、その分、作成する申告書の数が増えます。つまり、計算の手間もその分だけ増えるのです。
「相続税の計算の基礎になる課税価格(正味の遺産総額)は同じなんだから、大した違いはないでしょう?」と思うかもしれません。しかし相続人の事情は人それぞれです。特に次のような制度は、相続人の置かれた状況をていねいに確認しないといけません。
この他、後述する「小規模宅地等の特例」でも相続人の状況確認が必要となります。相続人が多ければ多いほど、作業が増えるのです。
相続税の申告の過程では、「財産評価」という作業を行います。財産が現預金や上場株式だけといった評価のしやすいものだけならそれほど手間はかかりません。
しかし、遺産の中に評価しにくい財産が含まれていることがあります。特に次の2つは評価の難しい財産の代表格です。
1.非上場株式
上場株式も非上場株式も、それぞれ評価の仕方が決まっています。上場株式の評価方法はわりとシンプルです。
【参考】株式を相続する方法 評価額の算定で揉めないために
一方、非上場株式の評価の仕組みは上場株式よりも複雑です。相続した人の株主としての立ち位置や発行会社の規模により評価方法が細かく分かれます。
「確認をていねいに行わないと評価を間違えてしまう」というとても難しい財産です。
2.土地
土地は基本的に「路線価方式」「倍率方式」で評価します。どちらで評価するかは国税庁のウェブサイトにある「路線価図・評価倍率表」で確認してから判断します。
「たったこれだけ?」と思うかもしれませんが、実際はもっと複雑です。
評価計算は、地目や地形で異なります。例えば自宅やビルが建っている土地と農地とでは評価の仕方が異なります。また、地形がいびつな土地や災害が生じたエリアの土地だと、補正率を加味して評価しなくてはなりません。
つまり、細かく確認をしないと正しい評価ができないのです。
相続税法には納税額を抑えられる特例があります。その1つが「小規模宅地等の特例」です。
【参考】小規模宅地等の特例の計算の方法 評価額を8割下げる条件や注意点
相続税の軽減措置「小規模宅地等の特例」を受けるには 同居の有無などポイント紹介
「自宅なら80%も評価額を減らせる制度」として一般の方にも知られています。しかし、中には判断が難しいときがあります。
例えば次のようなケースです。
小規模宅地等の特例の要件は非常に細かいため、専門的な知識や経験がないと判断を誤ります。間違えて適用すれば、追加の納税とペナルティがかかってしまいます。
相続税の申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内」と決まっています。たいていの方は、四十九日が終わって以降、税理士に申告を依頼します。しかし、中には申告期限近くになってから申告依頼をする人もいるのです。
期限間際の申告では、残り少ない日数で膨大な確認作業と申告を行わなくてはなりません。そのため、税理士は割り増し料金を請求せざるを得なくなるのです。
何となく目安がわかっても、やはりコストはある程度正確に見積もっておきたいものです。そこで、いくつか報酬をシミュレーションする方法をお伝えします。
国税庁は財産を相続した人向けに、相続税がかかるかどうかを判定できるシートを配布しています。
ここに相続財産を一通り書き込み、「遺産総額×0.5~1.0%」で計算すれば報酬の目安が見えてきます。
この他、このシートを使わずとも国税庁「申告要否判定コーナー」でも大まかなシミュレーションができます。
国税庁以外でも、相続税の報酬額をシミュレーションできるサイトがいくつかあります。「相続税 報酬 シミュレーション」で検索し、上位に表示されたいくつかのサイトで計算すると、おおよその金額が見えてくるかもしれません。
もっとも確実なのは、実際に税理士に相談に行き報酬額を見積もってもらう方法です。相続人の数や相続財産の内容から、より的確に計算してもらえます。
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相続の相談が出来る税理士を探す相続税の申告報酬はシミュレーションできますが、次のような注意点もあります。
シミュレーションはシミュレーションに過ぎません。後から相続財産が見つかれば、修正申告で別途報酬がかかることがあります。また、報酬計算のシステムも事務所ごとに異なります。想定通りにならない可能性がある点は留意しておきましょう。
「遺産総額×0.5%~1%」だとしても、元々の遺産総額が大きいので、たいていの報酬はかなり多額になります。できれば安い方を選びたいのが人間ですが、値段だけで決めるのが正解だとは限りません。
見積もり時点では安くても、あとから「成功報酬」として追加で請求するところもあります。逆に報酬の高いところは、後から相続財産が見つかることを考慮し、修正申告となっても追加請求をしなかったりします。「安いのがベスト」とは言えないのです。
この他、「誠実に相続人と向き合ってくれるか」も重要なポイントです。値段以外の要素にも目を向け、気持ちよくお金を払って依頼できるかどうかを考えましょう。
今回、相続税の申告報酬のシミュレーションについてお伝えしました。いくつかシミュレーションの方法をご紹介しましたが、ベストなのは、何人かの税理士と対面して決めることです。
会って話をすれば、「納得のいく回答が得られるか」「相性が合うか」なども確認できます。面談をしていくうちに「この人にこそお願いしたい」という税理士に出会えるはずです。
10カ月という短い期間で決めるのは大変ですが、依頼する前に実際に税理士に会ってみることをお勧めします。
(記事は2021年12月1日時点の情報に基づいています)
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