目次

  1. 1. 「共同相続」「共同相続人」とは?
  2. 2. 「共同相続人」と「法定相続人」の違い
  3. 3. 「共同相続」と「単独相続」の違い
  4. 4. 「共同相続」と遺産の「共有」の違い
  5. 5. 遺産を共有状態のままにするリスク
    1. 5-1. 賃貸や売却を機動的に行うことができない
    2. 5-2. 使用方法・運用方法について共有者間でトラブルになる
    3. 5-3. 再度の相続によって持分が細分化してしまう
    4. 5-4. 共有物分割請求を受ける可能性がある
  6. 6. 誰が共同相続人になる?調べ方は?
    1. 6-1. 共同相続人の決定ルール
    2. 6-2. 共同相続人の調査方法
  7. 7. 共同相続時に弁護士へ相談するメリット
  8. 8. まとめ|わからない用語は弁護士にご質問ください

「共同相続」とは、複数の相続人が遺産を共有している状態です。
相続人が複数存在する場合、被相続人が死亡時に有した権利義務(遺産)は、すべての相続人の共有となります(民法898条)。
この状態が「共同相続」であり、遺産分割によって解消されるまで続きます。

また、共同相続の状態にある相続人を「共同相続人」と呼びます。

「法定相続人」とは、民法の規定に従い相続権を有する者を意味します。
具体的には配偶者と子であり、さらに直系尊属や兄弟姉妹も法定相続人になることがあります(詳しくは後述)。
「共同相続人」とは異なり、「法定相続人」は1人の場合もあります。

また、共同相続が遺産分割によって解消されるのに対して、法定相続人は遺産分割の前後にかかわらず「法定相続人」です。

「単独相続」とは、遺産を1人で相続することを意味しています。
複数の相続人による「共同相続」とは対照的な概念です。

ただし「単独相続」は、当初から相続人が1人である場合だけでなく、遺言や遺産分割により、1人ですべての遺産を相続した場合を指して用いられることもあります。

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「共有」とは、複数の人が財産を共同所有している状態を意味します。
「共同相続」は、複数の相続人が遺産分割前に遺産を共有している状態を指すのに対して、単に遺産の「共有」と言う場合には、遺産分割の前後を問いません。

つまり遺産の「共有」は、遺産分割前の共同相続状態を意味することも、遺産分割の取り決めによって特定の遺産を共有するに至った状態を意味することもあります。

遺産分割協議で合意すれば、遺産分割後も、複数の相続人が遺産を共有したままにしておくことも可能です。
しかし、遺産を共有状態のままにすることには以下のリスクがあるので、基本的には推奨されません。できる限り、すべての遺産が単独所有となるように遺産分割をすることが望ましいでしょう。

共有物の賃貸や売却を行う際には、共有者間での意思決定が必要になります(民法251条、252条)。
そのため、単独所有の場合よりも意思決定が遅れる可能性があり、賃貸や売却の適切なタイミングを逃してしまうことが懸念されます。

各共有者は、共有物の全部について、持分に応じて使用することができます(民法249条)。使用時期についての希望が重なったり、使用方法についての意見が食い違ったりすると、共有者間の関係悪化に繋がりかねません。

また、賃貸や売却について意見が食い違うと、共有者間の関係が悪化するのみならず、共有物を有効に活用できなくなってしまいます。

共有者が亡くなった場合、共有持分の相続が発生します。
その都度、遺産(共有持分)を共有のままにすることを繰り返していると、持分が細分化し、共有者の数がどんどん増えてしまいます。そうなると意思決定も困難になり、共有物を活用できなくなるかもしれません。

各共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できるため(民法256条1項)。他の共有者から共有物分割請求を受ける可能性があります。
共有物分割請求は訴訟に発展することもあり、非常に煩雑な対応を強いられてしまうでしょう。

遺産分割協議には、共同相続人全員の参加が必須です。そのため、遺産分割協議の前に、共同相続人を調べて全員を把握する必要があります。

民法上、共同相続人は以下のフローによって決定されます。

①配偶者・子がいる場合
配偶者と子の全員が共同相続人になる(民法890条、887条1項)

②子が死亡している場合、または相続欠格・相続廃除に該当する場合
孫が共同相続人になる(ひ孫以降も同様。民法887条2項、3項)

③子が最初からいない場合、または子が全員相続放棄をした場合
直系尊属(両親など)が共同相続人になる(民法889条1項1号)

④子が最初からおらず、直系尊属も全員他界している場合、または子・直系尊属が全員相続放棄をした場合
兄弟姉妹が共同相続人になる(同項2号)

⑤④のケースで、兄弟姉妹が死亡している場合、または相続欠格・相続廃除に該当する場合
甥・姪が共同相続人になる(民法889条2項、887条2項)

※いずれも相続欠格(民法891条)・相続廃除(民法892条)に該当する者、相続放棄(民法939条)をした者を除く

共同相続人は、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を取得して、被相続人との続柄を網羅的に調べることで全員が判明します。
親族が多い場合には、戸籍の取得にかなりの時間がかかるケースもあるので、早めに対応しましょう。

親族構成によっては、共同相続人を調査するだけでもかなりの手間がかかりますが、弁護士に依頼することでスムーズな調査が可能です。
また、遺産の分け方についても法的な観点からアドバイスを受けられるうえ、遺産分割協議書の作成についても一任できるので、トラブルのリスクを抑えることができます。

加えて、遺産分割協議の代理を依頼することも可能です。他の相続人とのやり取りを弁護士に一任すれば、ストレスを大きく軽減できるでしょう。
さらに、相続登記や相続税申告についても、弁護士から司法書士や税理士の紹介を受けられます。

このように、共同相続時の遺産分割については、弁護士に依頼するメリットがたくさんあります。ぜひ一度お近くの弁護士までご相談ください。

遺産分割についての専門用語について、意味がわからないまま放置すると、ご自身の真意に基づかない形で相続手続きが進んでしまう可能性があります。
もしわからない専門用語が出てきた場合には、その都度弁護士に質問をして、疑問を解消しておきましょう。

(記事は2021年12月1日現在の情報に基づきます)