目次

  1. 1. 代襲相続・遺留分の基礎知識
    1. 1-1. 代襲相続とは?
    2. 1-2. 遺留分とは?
  2. 2. 代襲相続人に遺留分が認められるケース・認められないケース
    1. 2-1. 孫やひ孫には遺留分が認められる
    2. 2-2. 甥・姪には遺留分が認められない
  3. 3. 代襲相続人の遺留分割合は?
  4. 4. 遺留分侵害額請求の手続き
    1. 4-1. 相続財産・遺贈・死因贈与・生前贈与の内容を把握する
    2. 4-2. 遺留分侵害額を計算する
    3. 4-3. 遺留分侵害額請求を行う
  5. 5. 代襲相続人が遺留分侵害額請求を行う場合は弁護士に相談を
  6. 6. まとめ|孫・ひ孫には遺留分あり、遺留分侵害時には弁護士に相談を

「相続会議」の弁護士検索サービス

まずは、「代襲相続」「遺留分」とは何なのかについて、民法上の基礎知識を解説します。

「代襲相続」とは、相続権を失った相続人に代わって、その子が相続権を取得することです。
相続人の子にも、被相続人の財産を二次相続によって承継することにつき、一定の合理的な期待が存在すると考えられます。
このような相続人の子が有する二次相続への期待を保護するため、相続人が相続権を失った場合に、その子による代襲相続が認められているのです。

代襲相続が発生するのは、相続人が以下のいずれかの事由によって、相続権を失った場合です。

①死亡
②相続欠格(民法891条)
③相続廃除(民法892条)

なお、相続放棄(民法939条)によって相続人が相続権を失った場合には、代襲相続は発生しません。

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた、相続によって承継できる財産の最低保障額です(民法1042条1項)。
遺言や生前贈与によって偏った財産の配分が行われた場合にも、相続人が有する相続への合理的な期待をある程度保護するため、遺留分が認められています。
遺留分が認められるのは「兄弟姉妹以外の相続人」、具体的には「配偶者」と「子」、子がいない場合には「直系尊属」となります。
さらに後述のとおり、子について代襲相続が発生した場合には、孫以降の直系卑属にも遺留分が認められます。

代襲相続人になることができるのは、以下の者です。

①被相続人の子が相続権を失った場合(民法887条2項)
→被相続人の孫
②①に加えて、被相続人の孫も相続権を失った場合(同条3項)
→被相続人のひ孫(玄孫以降も同様。「再代襲相続」と呼ばれます)
③被相続人の兄弟姉妹が相続権を失った場合(民法889条2項)
→被相続人の甥・姪(甥の子・姪の子による再代襲相続は認められません)

このうち、代襲相続人に遺留分が認められるのは①と②のケース(孫・ひ孫……)で、③のケース(甥・姪)については代襲相続人に遺留分が認められません。

代襲相続によって相続権を得た孫やひ孫(玄孫以降も同様)には、遺留分が認められます。
代襲相続人は、相続分に加えて遺留分についても、被代襲者(相続権を失った親)の権利を引き継ぎます。
被相続人の子には遺留分が認められるので、それを代襲相続する被相続人の孫にも、同様に遺留分が認められるのです。

これに対して、被相続人の甥や姪は、代襲相続によって相続権を得た場合でも、遺留分は認められません。
この場合、被代襲者となるのは被相続人の兄弟姉妹ですが、前述のとおり、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
そのため、代襲相続人となる被相続人の甥や姪にも、親と同様に遺留分が認められないのです。

代襲相続人の遺留分割合は、被代襲者の遺留分割合と同じになります。
なお、代襲相続人が複数いる場合には、被代襲者の遺留分割合を頭数で割ったものが、各代襲相続人の遺留分割合となります。

<設例①>
相続人が配偶者A、子B、および子C(既に死亡)の代襲相続人である孫Dの3人(A・B・D)の場合

→もともと子Cの遺留分割合は、法定相続分(4分の1)の2分の1である「8分の1」です。
したがって、代襲相続人である孫Dの遺留分割合も「8分の1」となります。

<設例②>
相続人が配偶者E、子F、および子Gの代襲相続人である孫H・孫Iの計4人(E・F・H・I)の場合
→もともと子Gの遺留分割合は、法定相続分(4分の1)の2分の1である「8分の1」です。
代襲相続人はHとIの2人なので、「8分の1」を2人で均等に分け合い、HとIには「16分の1」ずつ遺留分割合が認められます。

弁護士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が
    得意な弁護士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

相続の相談が出来る弁護士を探す

遺留分に満たない財産しか相続できなかった場合は、財産を多く受け取った者に対して「遺留分侵害額請求」(民法1046条1項)を行いましょう。
遺留分額と実際に相続した財産の差額を、金銭で支払ってもらうことができます。
遺留分侵害額請求は、大まかに以下の手続きにより行います。

遺留分計算の基礎となる財産を把握します。
生前贈与についても、相続開始前10年間(相続人以外の者に対する贈与の場合は1年間)に行われたものであれば、遺留分計算の基礎に含まれます(民法1044条1項、3項)。
そのため、被相続人の生前のお金の流れも含めて、徹底した財産調査を行いましょう。

遺留分侵害額は、以下の計算式によって求められます。
遺留分侵害額=遺留分の基礎財産×遺留分割合-実際に相続した財産の価額

相続財産に不動産や未公開株式などが含まれる場合には、財産の評価方法を巡る争いが生じる可能性があるので注意が必要です。

まずは内容証明郵便などによって、遺留分侵害額を支払うように請求を行います。
相手方が応じない場合には、訴訟などの法的手段を検討しましょう。

遺留分侵害額請求は、親族同士が財産について争うことに伴い、感情的な対立が生じやすい点が特徴的です。
特に代襲相続人の場合は、他の相続人と疎遠なケースも多いため、トラブルに発展するリスクが高い傾向にあると考えられます。

さらに遺留分侵害額請求を巡っては、財産調査や財産の評価など、法的に難しいポイントがたくさんあります。
最終的には訴訟などに発展し、相続人同士の争いが泥沼化してしまうことも懸念されるので、早期に弁護士にご相談ください。
弁護士に相談すれば、遺留分に関する調査・計算・交渉・法的手続きを一括して代行してもらうことができます。
円滑・迅速に遺留分侵害額請求を行いたい場合は、お早めに弁護士へご相談ください。

被相続人の孫・ひ孫や甥・姪は、親の死亡などによって代襲相続人になるケースがあります。
ただし、遺留分が認められる代襲相続人は孫・ひ孫(あるいは玄孫以降)のみで、甥・姪には遺留分が認められない点に注意が必要です。

代襲相続人の遺留分が侵害された場合、他の相続人などに対して、遺留分侵害額請求を行いましょう。
トラブルの複雑化を回避し、できる限り迅速に遺留分問題を解決するためには、弁護士にご相談ください。

(記事は2021年12月1日時点の情報に基づいています)

「相続会議」の弁護士検索サービス