目次

  1. 1. 自筆証書遺言を法務局に保管してもらう費用
    1. 1-1. 一覧表
    2. 1-2. 保管の申請にかかる費用は3900円
    3. 1-3. 閲覧の請求にかかる費用は原本1700円、モニター閲覧なら1400円
    4. 1-4. 遺言書保管事実証明書・遺言書情報証明書の交付請求にかかる費用
    5. 1-5. 撤回や変更に費用はかからない
  2. 2. 自筆証書遺言を法務局に保管してもらうメリット
    1. 2-1. 家庭裁判所での検認が不要
    2. 2-2. 紛失や隠匿、破棄などのリスクがない
    3. 2-3. 死後に相続人などに通知してもらえる
  3. 3. 自筆証書遺言を法務局に保管してもらうデメリット
    1. 3-1. 内容のチェックを受けられない
    2. 3-2. 本人が自筆できないと作成できない
    3. 3-3. 本人が法務局に行かねばならない
  4. 4. 公正証書遺言との比較
    1. 4-1. 費用を安く済ませたいなら保管制度
    2. 4-2. 内容のチェックを受けたいなら公正証書遺言
    3. 4-3. 相続人などに通知してもらいたいなら保管制度
    4. 4-4. 本人が出向けないなら公正証書遺言
    5. 4-5. 遺言書を手書きできないなら公正証書遺言
  5. 5. 自筆証書遺言の保管制度を利用すべきケースとは?
    1. 5-1. 紛争のおそれが低く、費用を安く済ませたい
    2. 5-2. 自分で確実に有効な遺言書を作れる
    3. 5-3. 確実に相続人へ遺言書の存在を伝えたいが生前に伝えられない事情がある
  6. 6. まとめ

法務局が自筆証書遺言を保管してくれる「遺言書保管制度」が令和2年7月に始まりました。今までは自宅などで保管するしかなかったので画期的な制度といえます。では、この制度を利用するには、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

かかる費用の一覧はこちらで確認できます。法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」

ここからは、それぞれの内容を細かく見ていきましょう。なお、弁護士などの専門家に依頼した場合は、上記に加えて費用が発生しますので、注意してください。

自筆証書遺言を法務局で保管してもらうには、管轄の法務局で保管の申請が必要です。手数料は3900円です。遺言者自身が負担する費用は、基本的にこれだけです。

遺言者は、遺言書を保管している法務局で遺言書の原本を閲覧できます。手数料は1700円です。また、それ以外の法務局であっても、モニターで遺言書を閲覧できます。手数料は1400円です。なお、遺言者の死後は、相続人などが閲覧の請求をすることができ、手数料は上記と同様です。

遺言者の死後、相続人などは、法務局で「遺言書保管事実証明書」の交付を請求できます。この証明書によって、自分を相続人などとする遺言書が保管されているか否かを確認できます。手数料は800円です。

また、遺言書が保管されていた場合は、別途「遺言書情報証明書」の交付を請求できます。この証明書によって、遺言書の内容を確認できます。また、遺言書原本の代わりとして、各種手続きに使用できます。手数料は1400円です。

遺言者は、遺言書を保管する法務局で、遺言書の保管の申請を撤回できます。また、住所等に変更があった場合、変更の届出ができます。これらに手数料はかかりません。

遺言書の保管者やこれを発見した相続人は、原則として、遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。しかし、遺言書保管制度を利用すれば検認は不要のため、遺言書の保管者や発見した相続人の負担を軽減できます。

自筆証書遺言を自宅で保管すると、紛失や相続人などによる遺言書の隠匿・変造・破棄のリスクがありました。しかし、遺言書保管制度を利用した場合、これらのリスクはありません。

自筆証書遺言を自宅で保管すると、遺言者の死後に発見してもらえないリスクがありました。しかし、遺言書保管制度を利用した場合、遺言者の推定相続人や遺言書に記載された受遺者などから1名を指定しておくことで、法務局が遺言者の死亡の事実を知ったときにその指定された者に対し、遺言者の氏名・出生年月日・遺言者が保管されている法務局の名称及び保管番号を通知してくれます。これによって遺言の存在を確実に相続人などに知らせることができます。

法務局は、遺言書の内容に関する質問や相談には一切応じてくれません。そのため、第三者による内容のチェックは受けられません。別途、弁護士などの専門家への相談が必要です。

自筆証書遺言は、遺言者が手書きで作成しなければなりません。そのため、病気や加齢のため手書きで遺言書を作成することが難しい場合は、遺言書保管制度は利用できません。

遺言者は、遺言書の保管の申請をするにあたって、法務局に自ら出頭しなければなりません。そのため、遺言者が入院しているなど法務局に行くことが難しい場合は、遺言書保管制度は利用できません。

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遺言書保管制度を利用する場合と公正証書遺言を作成する場合ではどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの違いを解説します。

保管の申請にかかる費用は3900円ですが、公正証書遺言の作成にかかる費用は財産の金額などによって変動するものの、数万円以上はかかります。そのため、できる限り費用を安く済ませたい場合は、遺言書保管制度を利用する方が良いでしょう。

法務局では遺言書の内容をチェックしてくれません。これに対し、公正証書遺言は公証人が内容をチェックしてくれます。そのため、第三者によるチェックを受けたい場合は、公正証書遺言を作成する方が良いでしょう。

遺言書保管制度を利用した場合、法務局が、指定された相続人などに対し、遺言書の存在を知らせてくれます。これに対し、公正証書遺言の場合、相続人に遺言書の存在を知らせてくれる制度はありません。そのため、遺言書の存在を確実に相続人などに伝えたい場合は、遺言書保管制度を利用する方が良いでしょう。

遺言者は、遺言書保管制度を利用するためには、法務局に自ら出頭しなければなりません。これに対し、公正証書遺言を作成する場合、病院や施設にいるなどの理由で公証役場に出頭できなければ、公証人に出張してもらうことができます。

遺言書保管制度を利用する場合、遺言書は手書きで作成しなければなりません。これに対し、公正証書遺言の場合、公証人が文章をまとめてくれるので、遺言書を手書きする必要がありません。

公正証書遺言は公証人が関与して作成する遺言であるため、確実性が高く紛争の防止に役立つものの、数万円以上の費用がかかります。そのため、紛争のおそれが低く、費用を安く済ませたいのであれば、保管制度を利用しても良いでしょう。

法務局は遺言書の内容に関する相談に応じてくれませんので、保管制度を利用する前提として、自分で確実に有効な遺言書を作れることが必要です。もちろん、弁護士などの専門家の助けを借りつつ作成するのでも問題ありません。

相続人に対する通知は保管制度ならではのサービスです。そのため、生前には伝えたくないものの、死後には遺言書の存在を相続人に確実に伝えたいのであれば、保管制度を利用すべきでしょう。

遺言書保管制度と公正証書遺言のどちらにすべきかを迷ったら弁護士などの専門家に相談して意見を聞いてみましょう。弁護士に遺言書作成を手伝ってもらうことで、有効かつ適切な遺言書をスムーズに作成することができます。遺言書の作成を思い立ったらぜひ一度相談してみてください。

(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)