目次

  1. 1. なぜ建物が未登記なのか
    1. 1-1. 固定資産税の納税通知書は送られてくるのに、なぜ登記はされていないのか
    2. 1-2. 登記は誰がするのか
    3. 1-3. そもそも登記ってなに?
  2. 2. 建物を未登記にしておくデメリット
    1. 2-1. 登記は義務なのか
    2. 2-2. 登記しなければ自分のものと言えない
    3. 2-3. 未登記建物は売買できるか
    4. 2-4. 相続で放っておいた場合
    5. 2-5. 相続した人に不都合が生じる
    6. 2-6. 固定資産税について
  3. 3. 未登記の建物を相続するには
    1. 3-1. そもそも相続できるのか
    2. 3-2. 登記する場合、被相続人名義で登記できるのか
    3. 3-3. 相続して登記する
  4. 4. まとめ:建物を登記するには誰に依頼するのか

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登記を管轄する役所と固定資産税を管轄する役所は別です。登記は国(法務省)が管理をし、固定資産税は各市町村(東京23区は東京都)が管理をしています。登記の有無に関わらず、各市町村は税の公平性を保つためにも、独自に新築建物を見つけて課税します。

一方、登記は所有者の権利を守るための制度であり、所有者の申請によって作られます。登記所が独自に新築建物を見つけて登記することはしません(登記官は登記法上、表示に関する登記に限り職権で登記することができますが、自発的に未登記の調査をすることはありません)。

所有者の申請があって登記をした場合は、登記所は地方税法の規定によって市町村長に通知することになっています。一方、市町村長は独自に課税をしても、登記所に通知をする規定はありません。このため課税されていても、登記が無い場合が存在するのです。

登記は所有者が登記所に申請をすることで、登記記録が作成されます。登記所が、自動的に建物を登記することはありません。建物を新築した際は、登記所が登記記録を作成するよう申請する必要があり、解体した際には、登記記録を閉鎖するよう所有者が申請する必要があります。

このため、所有者が登記を申請しなかった場合、未登記の状態となるのです。

土地や建物などの不動産は、住んでいる人が所有しているとは限りません。誰のものなのかはどうやったら知ることができるのでしょうか?
登記記録は不動産の状況、所有者、抵当権など他人の権利といった情報を記録している台帳です。この登記によって誰のものかを知ることができます。

登記記録は大きく分けて3つのことが記録されています。

  • 表題部…所在、地番(番号)、種類や面積などを記録し、不動産を特定します
  • 甲区…不動産の所有者を記録します
  • 乙区…抵当権など不動産に設定されている所有権以外の権利を記録します

登記は、初めに表題部が作られ、その後甲区、乙区という順序で作られます。未登記は、一般的に表題部が作られていない状態のことを指しています。表題部がなければ、甲区も乙区もありません。登記そのものが存在しないのです。

建物を新築や増築、または解体した場合など表題部に変更が生じたときは、不動産登記法により1カ月以内に申請する義務があります。登記を怠った場合、10万円以下の過料が科されることになっています。一方で甲区や乙区の登記には義務はありません(ただし2024年度から、相続登記については義務化される予定です)。

登記は自分の権利を守るためにするものです。不動産を取得した場合、登記上の名義を自分としなければ、所有権を他人に主張することはできません。

また借地上に建物を建てた場合、土地に借地権があることを登記していなくても、建物の登記をすることで、借地権を他人に主張することができるようになります。

未登記であっても不動産の売買は成立します。ただし前述のとおり、売主が建物を自分のものだと主張できないのであれば、買主は所有権を取得しても、同様に自分のものだと主張できないことになります。

また、買主が金融機関から借り入れをして購入する場合、購入した不動産に抵当権などの担保権を設定します。そのため登記があることが前提となり、未登記を解消しないと、買主は借り入れができず売買を行うことができません。

未登記建物の所有者が亡くなった場合、放っておくとさらに相続が発生し、いざ登記をしようとしたときの相続人の数が増えていきます。
また、表題部の登記をする際に、申請人の所有権を証明しなくてはなりませんが、相続に際に証明できる資料を処分してしまったり、工事施工者など建築主であることを証明してくれる人がわからなくなったりすることで、申請人の所有権を証明することが難しくなり、時間も費用もかかります。

2019(令和元)年7月1日の民法改正により、法定相続分を超えて取得した相続分については登記しなければ、他人に主張することはできなくなりました。

例えば、被相続人の子がA、Bといた場合、法定相続分はそれぞれ2分の1です。これを遺言や遺産分割協議でAが相続した場合、2分の1は法定相続分ですが、残りの2分の1は法定相続分を超えて取得した部分になります。登記をしない間に、もしBの債権者が差押をしてきた場合、その債権者に対して自分のものだと主張できないということです。

住宅(居宅)を建てた場合、土地の固定資産税や都市計画税が減額される軽減措置があります。登記そのものは固定資産税の軽減とは関係ありませんが、未登記だと市町村に建物の存在を認識されない可能性があります。このような場合、建物を課税してもらうよう市町村に申し出た場合、登記するように促されることも多いようです。また、過去納税していない分については、地方税法の規定により過去にさかのぼって数年間分を請求されることがあります。

相続した建物の未登記を放置することはデメリットばかりですので、できるだけ早く登記しましょう。手続きの進め方がわからない人は司法書士に相談しましょう。

登記しないと相続できないわけではありません。遺産分割協議書には、所在、種類、構造、床面積など、建物を特定することができるように表記します。また未登記である旨や、(課税されているのであれば)固定資産税の評価証明書に記載による旨もあわせて表記しておくといいでしょう。

被相続人名義での登記も可能です。不動産登記法上、表題部の登記は1カ月以内にしなければなりませんが、相続人が決まっていないなどの場合、被相続人名義で登記することがあります。ただ、1カ月以内を厳守していないことも多く、過料を請求されたという事例も見当たりません。

建物を新築した人が登記をしないまま亡くなった場合、通常は、遺産分割協議などで相続人を決めてから、その相続人名義で登記します。表題部の登記を亡くなった人名義で行うこともできますが、前述した兄弟の債権者からの差押のリスクなどがあります。そのため相続人を定めてから、表題部の登記、所有権の登記を続けて行うことの方が多いようです。

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登記は司法書士と考える方が多いと思いますが、表題部の登記は土地家屋調査士という資格を持つ専門家が行います。甲区と乙区に関しては司法書士の専門です。

未登記の場合、表題部から登記することになるので土地家屋調査士に依頼をしますが、司法書士に土地家屋調査士を紹介してもらうことも可能ですし、両方の資格を持っている資格者もいます。土地家屋調査士が見つからない場合には、司法書士を経由して依頼してもよいでしょう。

(記事は2021年9月1日時点の情報に基づいています)

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