目次

  1. 1. 抵当権とは? 抵当権抹消手続きが必要なケース
    1. 1-1. 人的担保と物的担保
    2. 1-2. なぜ抵当権は登記されるのか?
    3. 1-3. 抵当権つき不動産の売却は難しい
  2. 2. 抵当権つきの不動産を相続したときの対処法
    1. 2-1. 債務が残っていない場合|抵当権抹消登記を申請
    2. 2-2. 債務が残っている場合|相続放棄検討の余地
  3. 3. 抵当権抹消に必要な書類
    1. 3-1. 登記原因証明情報
    2. 3-2. 金融機関からの委任状
    3. 3-3. 抵当権の登記識別情報(登記済証)
    4. 3-4. 資格証明情報
    5. 3-5.  書類を紛失した場合
  4. 4. 手続きを自分で行う手順と費用
    1. 4-1. 必要書類を準備する
    2. 4-2. 抵当権抹消登記申請書を作成する
    3. 4-3. 管轄の法務局に申請する
    4. 4-4. 申請完了
    5. 4-5. 抵当権抹消登記にかかる費用
  5. 5. まとめ 抵当権抹消登記は司法書士に依頼できる

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金融機関は融資にあたって、お金を借りる人から担保を取ります。担保には大きく2種類があり、人的担保と物的担保に分かれます。

このうち、お金を貸すときに家や土地などの不動産を担保する権利のことを「抵当権」と呼びます。

人的担保とは、対象の債務について、債務者以外の第三者が責任を負う担保です。代表的な人的担保は保証契約です。単なる保証契約では、主たる債務者に先に請求するように求める「催告の抗弁権」、主たる債務者が債務を履行できるだけの資力を有しており、かつ執行が容易であることを証明した場合に、債権者からの請求を拒むことができる「検索の抗弁権」が保証人に認められているため、実務上はそれらがない連帯保証契約が用いられることが多いです。

それに対し、物的担保とは、簡単にいえば物を担保として取るということです。 代表的なものとして、抵当権や質権があげられます。返済が滞った場合は、担保として提供された物の競売代金などから、優先的に債権を回収することができます。

例えば、抵当権が設定されても、所有者は担保にした不動産を使用できます。ただし、返済が滞った場合は、金融機関などの抵当権者は担保不動産を競売にかけて売却し、その代金から他の債権者に先立って優先的に弁済を受けることができます。

そもそも、抵当権はなぜ登記をするのでしょうか。民法の条文を参照しましょう。

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 (第百七十七条 不動産に関する物権の変動の対抗要件)

抵当権を含む不動産の権利は、登記をしなければ第三者に主張できないと定められています。そのため、金融機関などは抵当権を設定した時は登記をします。

なお、抵当権の登記においては、債権額、債務者の氏名または名称および住所、利息などが登記事項となります。返済が滞った場合に抵当権が実行されることはありますが、多くの抵当権は実行されず、債務の弁済をもって消滅します。ところが、債務を弁済しても、登記された抵当権は自動的に抹消されることはありません。抵当権抹消登記を申請し、登記が完了して初めて、土地や建物に設定されていた抵当権が登記簿から消滅します。

登記簿上の抵当権をそのままにしておいても、売買契約を結ぶことも、所有権移転登記を行うことも法的には可能です。とはいっても、売却は事実上とても難しいでしょう。

買主の立場に立って考えてみましょう。売主の債務を担保するために金融機関などの抵当権が設定された不動産を買いたいと思うでしょうか。もし債務返済が滞った場合は、せっかく買った不動産を競売されてしまう危険があります。

そのため、一般的には抵当権が抹消されていなければ、不動産を売却することはできません。たとえ、債務を完済しているとしても、登記上はそれがわからないためです。

ただし、売却代金でローンを完済し、所有権移転と同時に抵当権抹消を行うことは可能です。この場合は司法書士が銀行で売買と債務の弁済に立ち合い、登記に関する書類をすべて預かって、ただちに関連する登記を申請します。

では、相続した不動産に抵当権が設定されていた場合はどうしたらよいでしょうか。まず、抵当権が設定されているかは、登記事項証明書を取得すると確認できます。登記事項証明書は法務局で所定の登録免許税を支払えば、誰でも取得可能です。

不動産に抵当権が設定されていたら、抵当権の内容を調べる必要があります。債務を完済後に抵当権抹消登記を行っていないのか、債務が残存しているかで対応が変わります。

債務が残っていない場合は、抵当権抹消登記を申請しましょう。まず、被相続人(亡くなった人)の死亡前に債務が弁済されている場合は、相続が開始した時点で抵当権も消滅しています。そのケースでは、相続登記を行わなくとも、不動産の名義はそのままで、相続人の一人が代表となって抵当権抹消登記を行うことができます。

債務が弁済されておらず、残存する金額が不動産の価値より高い場合には相続放棄を検討する余地があります。注意すべき点としては、抵当権の登記事項である債権額は設定当時の債務額であり、残存する債務の金額とは異なることが挙げられます。抵当権者の多くは金融機関ですので、残高証明書を取得して債務残高を確認するとよいでしょう。抵当権者が金融機関以外で対応が難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

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抵当権抹消登記に必要な書類は、一般的に、債務の弁済などで抵当権が消滅した段階で、金融機関から受け取ることができます。以下、必要な書類を解説します。

「登記原因証明情報」は、抵当権抹消登記申請をする際に、抵当権を抹消する原因(ローンの返済完了など)を証明する書類で金融機関から受領できます。金融機関によって名称が異なり、「抵当解除証書」「弁済証書」「抵当権放棄証書」などと記載されます。

抵当権抹消登記は、登記権利者(不動産の所有者など)と登記義務者(金融機関など)が共同で申請します。自分で申請する場合は、銀行などの金融機関が発行する抵当権抹消登記申請の委任状が必要になります。法務局のオフィシャルサイトでは、「代理権限証明情報」と記載されています。

金融機関が抵当権を設定した際に発行される書類で、平成18年以前に発行されたものは「登記済証」、それ以降に発行されたものは登記識別情報といいます。

以前までは「資格証明情報」の添付が必要でしたが、平成27年11月2日からは「会社法人等番号」があれば「資格証明情報」の添付は必要なくなりました。具体的には、金融機関などの登記事項証明情報(発行から三ヵ月以内)が、「資格証明情報」となります。「会社法人等番号」は金融機関から受け取った書類に記載されていることもあります。従来通りに「資格証明情報」をそのまま添付しても問題ありません。

書類を紛失した場合、登記原因証明情報や委任状は、故意や重過失がなければ、一般的に金融機関から再発行を受けられる可能性が高いです。ただし、登記識別情報や登記済証は再発行できないため、紛失しないように注意しましょう。万が一、紛失した場合は、非常に手続きが煩雑となるため、司法書士に相談することをおすすめします。

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自分で抵当権抹消登記手続きを行う場合の手順・流れについて解説します。基本的には下記の流れが一般的です。

【抵当権抹消登記の流れ】

  1. 必要書類を準備する
  2. 抵当権抹消登記申請書を作成する
  3. 管轄の法務局を調べ、申請を行う
  4. 申請の完了

各ステップを詳しく解説します。

先述した抵当権抹消登記申請に必要な書類を準備します。

法務局のオフィシャルサイトでダウンロードが可能で、記載例もあるので参考にしてください(こちらの(15)抵当権抹消登記申請書を参照)。

不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。オンライン申請は現実的ではないので、書類を持参するか、郵送で提出しましょう。司法書士に依頼せず、自分で登記を申請する場合は、記載不備や書類の添付漏れが発生する可能性が高いです。オンラインや郵送による申請も可能ですが、補正があることを考えると、窓口での申請が望ましいでしょう。遠方の法務局に申請する場合は、補正に対応するための交通費が司法書士への報酬を上回る可能性がありますので注意しましょう。

書類に不備や誤りがあると、法務局から補正の連絡がありますが、何も問題がなければ申請が完了します。

抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、一つの不動産につき1000円です。一戸建てに設定された抵当権を抹消する場合は、土地と建物でそれぞれ1000円がかかるため、合計で2000円を納付することになります。

抵当権抹消登記にあたって、書類が不足していたり、記載が誤ったりしていれば、登記官から補正を求められることがあります。場合によっては申請が却下されます。抵当権抹消登記は司法書士に依頼することができ、報酬は1万円ほどの場合が多いです。自分での申請が難しいと感じた場合は、お近くの司法書士に相談するとよいでしょう。

(記事は2022年11月1日時点の情報に基づいています)

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