抵当権とは? 抵当権抹消手続きが必要なケース

「担保に取る」という言葉を耳にしたことがあると思います。抵当権は担保物権の代表的なもので、債務履行のために不動産などに設定されます。

金融機関は融資にあたって、お金を借りる人から担保を取ります。担保には大きく2種類があり、人的担保と物的担保に分かれます。身近な例は住宅ローンでしょう。住宅ローンを借りる際、一般的に取得した土地と建物が担保になります。この際に、金融機関を権利者として設定されるのが抵当権です。

なお、人的担保とは、対象の債務について、債務者以外の第三者が責任を負う担保です。代表的な人的担保は保証契約です。単なる保証契約では、主たる債務者に先に請求するように求める「催告の抗弁権」、主たる債務者が債務を履行できるだけの資力を有しており、かつ執行が容易であることを証明した場合に、債権者からの請求を拒むことができる「検索の抗弁権」が保証人に認められているため、実務上はそれらがない連帯保証契約が用いられることが多いです。

抵当権が設定されても、所有者は担保にした不動産を使用できます。ただし、返済が滞った場合は、金融機関などの抵当権者は担保不動産を競売にかけて売却し、その代金から他の債権者に先立って優先的に弁済を受けることができます。

そもそも、抵当権はなぜ登記をするのでしょうか。民法の条文を参照しましょう。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

抵当権を含む不動産の権利は、登記をしなければ第三者に主張できないと定められています。そのため、金融機関などは抵当権を設定した時は登記をします。なお、抵当権の登記においては、債権額、債務者の氏名または名称および住所、利息などが登記事項となります。

返済が滞った場合に抵当権が実行されることはありますが、多くの抵当権は実行されず、債務の弁済をもって消滅します。ところが、債務を弁済しても、登記された抵当権は自動的に抹消されることはありません。抵当権抹消登記を申請し、登記が完了して初めて、土地や建物に設定されていた抵当権が登記簿から消滅します。

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抵当権登記がついている不動産を相続したときの対処法

登記簿上の抵当権をそのままにしておいても、売買契約を結ぶことも、所有権移転登記を行うことも法的には可能です。とはいっても、売却は事実上とても難しいでしょう。

買主の立場に立って考えてみましょう。売主の債務を担保するために金融機関などの抵当権が設定された不動産を買いたいと思うでしょうか。もし債務返済が滞った場合は、せっかく買った不動産を競売されてしまう危険があります。

そのため、一般的には抵当権が抹消されていなければ、不動産を売却することはできません。たとえ、債務を完済しているとしても、登記上はそれがわからないためです。

ただし、売却代金でローンを完済し、所有権移転と同時に抵当権抹消を行うことは可能です。この場合は司法書士が銀行で売買と債務の弁済に立ち合い、登記に関する書類をすべて預かって、ただちに関連する登記を申請します。

では、相続した不動産に抵当権が設定されていた場合はどうしたらよいでしょうか。

まず、抵当権が設定されているかは、登記事項証明書を取得すると確認できます。登記事項証明書は法務局で所定の登録免許税を支払えば、誰でも取得可能です。

不動産に抵当権が設定されていたら、抵当権の内容を調べる必要があります。債務を完済後に抵当権抹消登記を行っていないのか、債務が残存しているかで対応が変わります。

債務が残っていない場合は、抵当権抹消登記を申請しましょう。

まず、被相続人(亡くなった人)の死亡前に債務が弁済されている場合は、相続が開始した時点で抵当権も消滅しています。そのケースでは、相続登記を行わなくとも、不動産の名義はそのままで、相続人の一人が代表となって抵当権抹消登記を行うことができます。

債務が弁済されておらず、残存する金額が不動産の価値より高い場合には相続放棄を検討する余地があります。注意すべき点としては、抵当権の登記事項である債権額は設定当時の債務額であり、残存する債務の金額とは異なることが挙げられます。

抵当権者の多くは金融機関ですので、残高証明書を取得して債務残高を確認するとよいでしょう。抵当権者が金融機関以外で対応が難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。

抵当権抹消登記手続きを自分で行う手順

債務の弁済などで抵当権が消滅した場合は、金融機関から抵当権抹消登記を申請するための書類を受け取ることができます。一般的に受領する書類は、登記原因証明情報(抵当権解除証書など)、金融機関からの委任状、抵当権の登記識別情報(登記済証)です。

抵当権抹消登記は、登記権利者(不動産の所有者など)と登記義務者(金融機関など)が共同で申請します。自分で申請する場合は、金融機関から受け取った委任状に必要事項を記載して、登記申請書とともに必要書類を添付して、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。書類を持参するか、郵送で提出しましょう。

書類を紛失した場合、抵当権解除証書や委任状は、一般的に再発行を受けられます。ただし、登記識別情報や登記済証は再発行できないため、紛失しないように注意しましょう。

抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、一つの不動産につき1000円です。一戸建てに設定された抵当権を抹消する場合は、土地と建物でそれぞれ1000円がかかるため、合計で2000円を納付することになります。

抵当権抹消登記は司法書士に依頼できる

抵当権抹消登記にあたって、書類が不足していたり、記載が誤ったりしていれば、登記官から補正を求められることがあります。場合によっては申請が却下されます。抵当権抹消登記は司法書士に依頼することができ、報酬は1万円ほどの場合が多いです。自分での申請が難しいと感じた場合は、お近くの司法書士に相談するとよいでしょう。

(記事は2021年8月1日時点の情報に基づいています)