目次

  1. 1. 当事者間は個人売買に適した人に限定する必要がある
  2. 2. 適正な価格で売買する必要がある
  3. 3. 適切な契約書を使用する必要がある
  4. 4. 買い主が住宅ローンを組めないケースが多い
  5. 5. 司法書士には依頼する必要がある
  6. 6. 課税事業者が事業用不動産を売ると消費税が発生する
  7. 7. マイホームなら印紙は売買契約書に必要で領収書には不要となる
  8. 8. まとめ

不動産の個人売買は、売り主と買い主を適切な当事者間に限定する必要があるという点が重要な注意点です。

個人売買は一部の取引においては昔から存在するものであり、適切な当事者間で行えば特に大きな問題はありません。個人間売買では、売り主は買い主を「敵対的な責任追及をしてこないような人」に限定する必要があります。理由としては、売り主が契約不適合責任によって買い主から売却後に損害賠償等の請求を受ける可能性が低くなるからです、

契約不適合責任とは、「契約の内容に適合しない場合の売主の責任」のことを指します。売主は契約不適合責任によって、売り主は契約内容と異なるものを売ると、売却後に買い主から追完請求(修補請求)や契約解除、損害賠償といった責任追及をされる可能性があります。

一方で、買い主は購入物件を「自分が良く知っている物件」に限定することがポイントです。買い主は大きな金額を支払うことから、不測の損害を被らないためにもあらかじめ熟知した物件を購入するケースが個人間売買に適しています。

個人売買でも大きな問題はないと考えられる当事者間や取引を例示すると以下の通りです。

【個人売買でも良いと考えられる取引】

反対に、全く知らない第三者に対して不動産を個人売買するのは避けるべきケースです。例えば、インターネットを介して数千万円もする自宅を見ず知らずの第三者に売るケースは、個人売買には適さない取引と言えます。

個人売買では、適正な価格で売買する必要がある点が注意点です。

個人間同士の売買では、著しく低廉な価格で売却すると贈与とみなされる可能性があります。贈与とみなされた場合、買い主が贈与を受けた者として贈与税を支払うことになります。また、法人が代表者に不動産を売る場合も、著しく低廉な価格で売却して意図的に売却損を出すような取引を行うと脱税行為とみなされる可能性があります。

贈与や脱税行為にならないようにするには、あらかじめ不動産鑑定士による鑑定評価書を取得し、鑑定評価額に基づいて取引することが最も安全です。

個人売買を行うには、適切な契約書を使用する必要がある点が注意点です。不動産の売買契約書には、例えば以下のような種類があるため、自分の物件に合致したひな形を用いる必要があります。

【売買契約書の主な種類】

また、2020年4月から売り主責任が、瑕疵(かし)担保責任から契約不適合責任に変わりましたので、古い契約書を利用すると売主に不測の損害が生じることがあります。

契約不適合責任を適切に回避するには、契約不適合責任に対応した契約書の書式を用い、なおかつ、特約事項に個別の不具合について免責事項を書き加えていくことが必要です。
特に、売り主は契約不適合責任を十分に理解した上で、契約を締結するようにしましょう。

個人売買では買い主が住宅ローンを組めないケースが多いという点も注意点となります。

住宅ローンの審査には、不動産会社が作成する重要事項説明書が必要書類となっていることが多く、個人売買では重要事項説明書がないことから審査に通らないことも多いようです。重要事項説明書は、例えば違法建築物ではないことがわかるなど、銀行が融資の判断をするための情報が知ることができるようになっています。そのため、重要事項説明書が存在しない不動産は、判断材料が乏しいため、融資がしにくくなるのです。

住宅ローンが組めるかどうかは買い主の問題ではありますが、売り主にも大きな影響を及ぼします。住宅ローンを組みにくいということは、購入できる買い主が極端に少なくなるため、個人売買では物件が売却しにくくなるのです。

個人売買でも、所有権の移転登記や、抵当権の抹消または設定の登記等の登記手続きが発生します。これらの登記手続きは、司法書士に依頼することが適切です。

特に、抵当権の抹消や設定の登記に関しては、銀行が当事者だけで行うことを好まないため、司法書士への依頼が条件となることが一般的となっています。利害関係者の銀行としても、不慣れで確実性の低い個人より、迅速に確実な登記をしてくれる司法書士に手続きをして欲しいというのが理由です。また、所有権の移転登記だけであっても、取引の安全上、司法書士には間に入ってもらうべきです。

「買い主による金銭の支払い」と「売り主による権利証(または登記識別情報通知書)の引渡し」は、利害が対立する行為であるため、第三者の司法書士に見届けてもらうことがトラブルを防ぐ対策となります。

個人がマイホームやセカンドハウス等の居住用不動産を売却する場合、消費税は非課税となります。

個人にはサラリーマンのような一般の個人と、商売を行っている個人事業主の2種類が存在しますが、いずれであっても居住用の不動産の売却なら消費税は生じません。

不動産は、原則として建物に消費税が生じ、土地には消費税が生じないのがルールです。
ただし、居住用の不動産は、例外的に建物にも消費税が生じない不動産となります。よって、マイホームの売却であれば、一般の個人でも、または個人事業主の個人でも、消費税は生じないということです。

一方で、個人であってもアパート等の事業用不動産を売却すると、原則通り建物に消費税が発生します。課税事業者であれば、消費税を納税することが必要です。課税事業者とは、個人事業主なら前々年における課税売上高が1,000万円を超える事業者を指します。

個人売買でも、売買契約書には印紙を貼ることが必要です。不動産の売買契約書は印紙を貼らなければならない課税文書となります。

また、不動産の取引では、買い主から固定資産税の精算金等を受領した際、領収書を発行することがあります。固定資産税の精算金とは、引渡日以降の固定資産税相当額を買主へ移転するために、買い主から売り主に支払う金銭のことです。

個人でも、不動産の売却が営業行為に該当する場合には、領収書に印紙を貼ることが必要です。ただし、個人によるマイホーム等の居住用不動産の売却は営業行為に該当しないため、領収書に印紙を貼ることは不要となります。

以上、不動産の個人売買の注意点について解説してきました。

不動産の個人売買は、「当事者間は個人売買に適した人に限定する必要がある」、「適正な価格で売買する必要がある」などの注意点があります。注意点をしっかり意識した上で、適切な当事者間において個人売買を進めるようにしましょう。

(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)

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