目次

  1. 1. 権利証とは?
    1. 1-1. 登記済証に代わり、登記識別情報に
    2. 1-2. 登記識別情報とは?
    3. 1-3. 紛失しても再発行はできない!
    4. 1-4. 紛失しても権利には影響なし
  2. 2. 相続手続きはどうすればいい?
  3. 3. 相続登記に必要な書類は?
    1. 3-1. 遺言による相続登記
    2. 3-2. 遺産分割協議による相続登記
    3. 3-3. 法定相続分で申請する場合
  4. 4. まとめ

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土地の権利を表す書類として、「権利書(権利証)」という名称を聞いたことがあるかもしれません。実はこれらは俗称であり、正式名称は異なります。

以前は、売買や相続など、所有権を取得する登記などが完了した際に、法務局から『登記済証』が発行されていました。これが、通称「権利証」と呼ばれている書類です。登記済証には、申請内容のほかに、登記官による「登記済」の印判が押され、登記の受付番号が記入されていました。

2005年の不動産登記法改正により、オンラインで登記申請を行うことが、全国の法務局で順次可能になりました。オンライン申請では、従来の「登記済証」は発行されず、これに代わって「登記識別情報」が通知されるようになりました。現在はオンライン申請に対応していない法務局は1か所もありませんから、原則として登記済証が発行されることはありません。

「登記識別情報」とは、数字やアルファベットの組合せからなる12桁の符号です。不動産ごと、登記名義人となった申請人ごとに定められ、登記名義人となった申請人に通知されます。不動産売却などの際に、本人確認の目的で法務局に提出が求められます。登記識別情報は、一般的に権利の所有者以外は知りえないため、登記の真正性を確保するための情報として使用されます。

登記識別情報は非常に重要な情報です。銀行口座の暗証番号と類似するものと考えるとよいでしょう。第三者に見られると問題が起こる可能性があることから、厳格な取り扱いがされています。書類で登記識別情報が交付された場合は、12桁の符号については、袋とじがされており、そのままでは見ることができないように加工されています。

また、登記済証と登記識別情報は、取り扱いが少し異なります。

登記識別情報は書面に12桁の符号が記載されて、それが見えないように加工して交付されます。重要なのは、その書面そのものではなく、その12桁の符号です。登記申請の際にはこの情報を法務局に提供します。法務局への提供の際にはコピーしたものでも12桁の情報が一致していればよいわけです。

一方、登記済証は「権利証」といわれるように、その書類そのものが重要で、登記申請の際には登記済証の原本そのものを提出しなければ登記はできません。

なお、登記済証や登記識別情報を紛失(失念)したからといって、権利がなくなったり、その登記が抹消されたりすることはありません。重要な書類(情報)ではありますが、無くしてしまったからといって、登記された権利に影響することはありません。

また、登記申請では登記済証や登記識別情報を提出しなければならないケースがありますが、紛失してしまった場合でも、それに代わる手続きが用意されています。司法書士に相談し、状況に適した方法で登記申請するとよいでしょう。

売買や贈与などの不動産登記は、原則として当事者の双方が共同で申請します。

双方が共同申請することで、不動産についての権利移動が真実に合致していることを担保しています。権利を譲渡する側の参加も義務付けることで、虚偽の登記が行われる可能性は低くなります。

また申請にあたり、権利証(登記済証/登記識別情報)の提出を求めることで、権利譲渡者の本人確認を厳格化することができ、登記申請の真実性がより高まります。

そのため、売買や贈与などの不動産登記において、権利証が必要となります。

では、権利証を紛失した場合、相続登記はできるでしょうか。実は、相続登記においては、権利証(登記済証/登記識別情報)を使用しないため、特に問題はありません。

相続登記において権利証を使用しないのは、売買などと異なり、相続登記は相続人からの単独申請によって行われるからです。

相続を原因とする所有権移転の場合には、登記名義人である被相続人はすでに死亡しているため、登記名義が残っているだけで法律上の権利は死亡した時点で相続人に移っていると考えます。したがって、売買による所有権移転登記の売主のように権利を失う側の登記申請意思を厳格に証明する必要はありません。死者の登記申請意思を確認する理由もありませんから、相続登記においては登記済証や登記識別情報の提出は求められないわけです。

ただし、登記簿上の住所と被相続人の住所のつながりを示す書類が役所によって廃棄されていて添付できない場合には、権利証の提出が求められます。

相続登記の場合には、登記簿上の名義人が被相続人と同一人物であることを住所と氏名が一致していることをもって判断します。したがって、登記申請の際には登記簿上の住所と最後(死亡時)の住所のつながりを証明するために住民票の除票や戸籍の附票を提出するのですが、市区町村役場での保存期間が満了している場合にはこれを証明することができません。この場合に登記名義人が所有権を取得した際の権利証(登記済証・登記識別情報)を提出することで「同一人物でまちがいないだろう」とする運用がなされています。

相続登記において必要な書類について説明します。

相続登記手続きには、遺言による相続登記、遺産分割協議による相続登記、法定相続分による相続登記、の3種類があります。

それぞれの場合について、必要な書類が異なります。

遺言による相続登記では、提出が求められる戸籍は被相続人の死亡時の戸籍(除籍)謄本と相続人の現在の戸籍謄本のみになります。

そのほかに提出する書類については、遺言書以外は法定相続割合で登記する場合と異なることはありません。なお、遺言書は、法務局で保管していない自筆証書遺言と秘密証書遺言については、家庭裁判所で検認手続きを経たものでなければ登記申請に使うことができません。

遺言による相続登記において提出する書類をまとめると、以下のとおりとなります。

  • 被相続人の戸籍(除籍)謄本
  • 相続人の現在戸籍等
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人の住所証明書(住民票など)
  • 固定資産評価証明書
  • 遺言書

なお、所有権移転登記が完了すると、新たな登記識別情報が発行されます。

遺産分割協議を行いその内容で相続登記を申請する場合の必要書類は以下のとおりとなります。

  • 遺産分割協議書(全員の記名又は署名及び実印を押印済みのもの)
  • 遺産分割協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書(期限はなし)※不動産の権利を取得する相続人の印鑑証明書は添付しなくても登記は可能ですが、実務では相続人全員のものを添付することが多い
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍など
  • 被相続人の住民票の除票(抹消された住民票のこと)、または戸籍の附票(戸籍が効力を有していた間に移転した住所の変遷を記載したもの)
  • 相続人全員の現在戸籍など
  • 不動産を取得する相続人の住所証明書(住民票または戸籍の附票)
  • 固定資産評価証明書

相続登記は原則として、被相続人の戸籍などを、死亡時のものだけではなく、出生までさかのぼって集めます。戸籍は、転籍・法律による改製・婚姻・離婚などによって都度新たな戸籍が作られます。したがって、すべての相続人を調べるためには、出生時から死亡時までの何度も編製し直した戸籍を漏れなくすべて集めなければなりません。

なお、戸籍謄本(除籍謄本)は、本籍地が遠方にあったとしても、取得する相続人の最寄りの市区町村の窓口でまとめて申請できます(兄弟姉妹の戸籍謄本や一部のコンピュータ化されていない戸籍謄本を除く)。

法定相続分に応じた割合で相続登記を申請する場合、一般的に必要な書類は以下のとおりです。

・被相続人の出生から死亡までの戸籍など
・被相続人の住民票の除票(抹消された住民票のこと)、または戸籍の附票(戸籍が効力を有していた間に移転した住所の変遷を記載したもの)
・相続人全員の現在戸籍など
・相続人の住所証明書(住民票など)
・固定資産評価証明書

【関連】相続登記の必要書類を一覧表で紹介! 有効期限は? 古い戸籍謄本や印鑑証明は使える?

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上記のように、相続登記において権利証は原則として不要です。ただし、登記簿上の住所と被相続人の住所のつながりを示す書類が役所によって廃棄されていて添付できない場合には、権利証の提出が求められるといった運用になっています。不明な点がある場合や、困ったことがある場合は、お近くの司法書士に相談してみましょう。

(記事は2024年7月1日時点の情報に基づいています。)

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