路線価図の見方は? 相続税申告での土地評価額の調べ方や計算方法を紹介
相続税申告において、親から相続した土地を評価するなら路線価図の見方を知らなくてはなりません。路線価図に記載されている数字やアルファベット、記号は何を意味するのでしょうか。注意点も含め、不動産鑑定士の資格も持つ税理士が解説します。
相続税申告において、親から相続した土地を評価するなら路線価図の見方を知らなくてはなりません。路線価図に記載されている数字やアルファベット、記号は何を意味するのでしょうか。注意点も含め、不動産鑑定士の資格も持つ税理士が解説します。
目次
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被相続人(亡くなった人)から相続した財産の相続税申告における評価方法については、国税庁作成のルールブックである財産評価基本通達(以下「評価通達」という)に定められています。
評価通達では、土地はその用途による区分(地目)ごとに評価方法が定められています。このうち建物の敷地である宅地の評価方法は、①路線価方式と②倍率方式の二つが定められています。
①路線価方式
宅地の評価額=路線価×画地調整率×地積
②倍率方式
宅地の評価額=固定資産税評価額×宅地の評価倍率
路線価方式は、各路線(道路)に付された路線価を基に評価する方法で、主に市街地にある宅地の評価に適用されます。一方、倍率方式は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する方法で、主に郊外の住宅地や農村部の宅地等の評価に適用されます。
路線価方式で用いられる路線価とは、各路線(道路)に接する標準的な形状の宅地の1㎡あたりの価額(千円単位)です。毎年1月1日時点の路線価が7月1日頃に国税庁より発表されます。
路線価を含む情報が掲載されているのが路線価図です。この路線価図の調べ方としては以下のような方法があります。
以下、国税庁ウェブサイトのリンクより、最新の年度の路線価図から過去6年分の路線価図を閲覧することができます。
国税庁HP「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」
インターネットの使い方に不慣れという人は税務署を訪問して調べることもできます。
以下、一般財団法人資産評価システム研究センターHPの全国地価マップのリンクより、最新の年度の路線価図から過去3年分の路線価図を閲覧することができます。①国税庁HPの路線価図よりも地図の切り替えや移動がスムーズで、検索しやすいのが特徴です。
一般財団法人資産評価システム研究センターHP「全国地価マップ」
評価対象地(路線価図中の緑色の宅地)を評価する際、路線価図のどこに注意して評価に必要な情報を読み取れば良いのか、順を追って解説します。
まず路線価図の上段に記載の年度が被相続人の相続開始日の年度である点を確認します。上記路線価図は令和2年度のものですので、令和2年中に亡くなった人の評価にしか使用できません。
評価対象地の接面道路に付された路線価を確認します。今回は、「250D」と書かれています。これはこの路線に接面する標準的な形状の宅地の1㎡あたりの価額が250千円(25万円)/㎡であることを意味します。特に千円単位である点に注意が必要です。したがって、評価対象地の地積が150㎡だとすれば、おおまかな評価額は以下のとおり求められます。
【おおまかな評価対象地の評価額】37500000円(3750万円)
=250千円(25万円)/㎡×150㎡
路線価図の上段には地区記号が複数掲載されていますが、評価対象地の接面街路に付された地区記号がどれかを確認します。今回は「普通住宅地区」に該当します。なぜ地区記号を確認する必要があるかというと、路線価方式の画地調整率(詳細は次のセクションで解説)について、地区記号ごとに異なる調整率が定められているものがあるからです。
【厳密な評価対象地の評価額】
=路線価×画地調整率(地区記号ごとに異なるものがある)×地積
路線価の右側に「A~G」のアルファベット記号が書かれていますが、これは借地権割合を意味します。被相続人が地主から建物所有目的で土地を借りて地代を支払っていた場合には、被相続人の相続財産として借地権を評価する必要があり、その際にこの借地権割合を確認します。今回の評価対象地の借地権割合は「D:60%」ですので、評価対象地の借地権価額をおおまかに求めれば以下の通りです。
【おおまかな評価対象地の借地権価額】22500000円(2250万円)
=250千円(25万円)/㎡×150㎡×60%
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相続の相談が出来る税理士を探す宅地を厳密に評価するには、上記③地区記号の確認でふれた画地調整率を求める必要があります。評価通達では土地の地積、形状、道路との位置関係、各種公法規制等に応じた画地調整率が以下のとおり定められています。
たくさんある画地調整率の通達のうちどれを適用するかの判定が必要ですが、この判定にあたっては、各種資料を漏れなく収集する必要があります。具体的に必要な資料とその入手場所の例は下表のとおりです。
画地調整率の通達を適用した評価例として、二つの道路に接面している宅地の評価を以下ご紹介します。評価通達15により奥行きがやや長いことによる減価が考慮され、評価通達16により二つの道路に接面している角地としての増価が考慮されています。
また、被相続人が評価対象地上で賃貸アパートを経営していた場合には、その宅地(貸家建付地)の評価にあたって以下算式の(注1~3)のような情報も確認する必要があります。
【貸家建付地の評価額】
=自用地価額×(1-借地権割合(注1)×借家権割合(注2)×賃貸割合(注3))
(注1)借地権割合(路線価図で確認)
(注2)借家権割合(国税庁HP「財産評価基準書」各都道府県のページで確認)
(注3)賃貸割合(その貸家の各独立部分の床面積合計のうち、被相続人の相続開始時において賃貸されている部分の占める割合であり、賃貸借契約書を用いて賃貸部分の床面積を確認)
路線価で宅地の評価をする場面は大きく二つに分けられます。
一つ目は、相続税申告が必要か否かの確認のため、おおまかな宅地の評価額を求めたい場面です。以下の国税庁HPリンクから相続税申告が必要か否かのおおよその判定を行うことができます。ここでは被相続人の宅地の評価額を路線価に地積を乗じて大まかに計算する方法をとっています。地積を登記簿で確認し、路線価を路線価図で確認して入力すればおおまかな宅地の評価額が求められ、相続税の申告が必要か否かおおよその判定ができます。
二つ目は、相続税申告が必要か否かの確認の結果、相続税申告が必要と判定された場合(以下のような判定結果の場合)に、宅地を厳密に評価する場面です。
この場面では、画地調整率の通達の適用にあたり必要な資料を集め、実際に現地に赴き、地目、地積、形状などの資料の情報と宅地の現況が整合しているかどうか確認します。特に地積については、登記簿の記載数量を鵜吞みにせず現地で間口や奥行きを概則し登記簿の記載数量の妥当性を確認する必要があります。
最後に、収集した資料や情報を整理し、各画地調整率の通達の適用要件を満たすかどうか判定し、宅地の評価額を求めます。
路線価図の読み方がわかれば、おおまかな宅地の評価額を求められます。一方、相続税申告が必要で宅地の厳密な評価額を求める場合、各種資料の収集や現地調査等が必要となり、ハードルが高くなります。相続税申告が必要な人は土地の評価も合わせて早めに税理士に相談するのが得策でしょう。
(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)
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