税理士に不動産評価を依頼するメリットは? 評価の仕組みや報酬の目安も解説
相続税申告に当たっては、遺産を所定のルールに従って評価する必要があります。なかでも複雑で難解とされるのが不動産の評価です。相続人自身で評価して、申告することも可能ですが、税理士に依頼すれば自身で評価するよりも評価額が下がり節税となる場合があります。そこで、相続税申告における不動産評価を税理士に依頼するメリットや報酬の目安についてまとめました。
相続税申告に当たっては、遺産を所定のルールに従って評価する必要があります。なかでも複雑で難解とされるのが不動産の評価です。相続人自身で評価して、申告することも可能ですが、税理士に依頼すれば自身で評価するよりも評価額が下がり節税となる場合があります。そこで、相続税申告における不動産評価を税理士に依頼するメリットや報酬の目安についてまとめました。
目次
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相続税申告において不動産の評価が必要となるのは、被相続人の遺産に不動産がある場合です。
具体的には、当該不動産の被相続人の死亡時点における時価を求める必要がありますが、一般納税者が不動産の時価を査定することは容易ではありません。そこで、国税庁は財産評価基本通達(以下、「評価通達」と略す)という財産評価に関するルールブックを定めて公表しており、不動産の評価もこの通達に従って画一的に行うこととされています。
とはいえ、いきなり評価通達を使って評価できるわけではなく、まずは評価通達を使うために必要な各種資料を漏れなく収集する必要があります(役所調査、机上調査)。不動産の評価に必要な資料とその入手場所の例は下表の通りです。
次に現地に赴き、収集した資料の情報(地目・地積・形状等)と不動産の現況が整合しているかどうか確認します。なお、現地に行く前に事前にGoogleストリートビューで可能な限り現地がどうなっているのか確認しておくとスムーズです(現地調査)。
最後に、3つの調査(机上調査、役所調査、現地調査)で収集した資料や情報を整理し、評価通達に当てはめて不動産の評価額を求めます。
不動産といっても様々な所有形態・利用形態がありますが、ここでは一番シンプルな例として被相続人の自宅とその敷地の評価通達に基づく評価方法をご紹介します。
まず、建物(自宅)は、基準年度の固定資産税評価額に1.0を乗じて評価しますので、実質的には固定資産税評価額とイコールになります。
次に土地(自宅の敷地)は、路線価方式、又は、倍率方式のいずれかの方法で評価します。評価対象地の評価方法が、路線価方式か倍率方式かは国税庁HP路線価図・倍率表で確認できます。路線価方式の場合には、画地調整率等の計算にあたり、登記事項全部証明書、公図、地積測量図、都市計画図、道路台帳等の各種資料が必要となります。
相続人自身で不動産評価を行うことも可能ですが、不動産の数が多く、複数の市町村に不動産があるような場合には資料収集だけでもかなり手間と労力を要します。特に、路線価方式で評価する宅地がある場合には収集すべき資料の数が多くなるので、資料の収集漏れのリスクもあります。また、資料は十分に収集できても、評価に必要な情報を取捨選択して評価通達に当てはめるのに、評価通達の使い方を自力で学ぶ必要もあります。
税理士に不動産評価を依頼することで、上記のような煩雑さは回避できますが、それ以外にも自身で評価するよりも評価額が下がる可能性があります。
評価通達には、不動産の価値を高める増価補正と価値を低める減価補正に関する取扱いが規定されていますが、数的には減価補正に関する取扱いが多いです。例えば、以下のような減価要因のある宅地には減価補正が適用できる可能性が高いです。
<宅地の減価要因の例>
✔ 道路に接する間口が狭い
✔ 奥行が長く細長い
✔ 正方形、長方形ではなく不整形(旗竿地等)
✔ 面積が周辺の土地よりも大きい
✔ 道路に接続していない
✔ 敷地内に高低差がある
✔ 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の区域内
✔ 墓地に隣接する
✔ 電車等の騒音が大きい
✔ 道路との高低差がある
なぜ税理士に依頼すると不動産の評価額が下がる可能性があるかというと、3つの調査(机上調査、役所調査、現地調査)を通じてこうした減価要因を漏れなく把握し、評価通達の減価補正の取扱いを適用することで、減価要因を漏れなく評価に織り込むことができるからです。
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相続の相談が出来る税理士を探す一般的には、相続税申告における不動産の評価だけ税理士に依頼するというよりは、相続税申告業務一式を依頼し、報酬総額の内訳として不動産の評価に関する報酬が含まれているケースがほとんどです。
ですので、不動産の評価に関する報酬だけの相場的なものはなかなか見出しにくいですが、土地1評価単位あたり、5万円~10万円程度はかかると思われます。どうしても土地が複数あるような場合、役所調査や現地調査の手間とコスト(旅費交通費)がかかるのでこれら旅費交通費の実費を含めた報酬の最低ラインはあります。
不動産の評価方法を定めた国税庁の評価通達は法令ではなく、納税者である相続人は評価通達によらない他の評価方法で不動産を評価して相続税申告することも可能は可能です。評価通達は、納税者が簡便的かつ画一的に不動産を評価できるように定められていますので、評価通達ではとらえきれない不動産の減価要因というものが少なからずあります。
こうした評価通達でとらえきれない減価要因をとらえ適正な不動産の時価を求める方法としては、不動産鑑定士による不動産鑑定評価があります。もっとも不動産鑑定評価額で相続税申告したものが全て税務署に認められるわけではなく、認められないケースの方が多いのが現状です。したがって、納税者が直接不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するというよりは、まずは税理士に相続税申告業務一式を依頼し、税理士の方で不動産鑑定士に依頼するか否か検討してもらう流れが一般的かと思われます。
(この記事は2021年1月1日現在の情報に基づきます)
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