相続した「雑種地」の評価方法とは 住宅が建てられるのかも知りたい
父が亡くなり土地を相続することに。相続するその土地のなかに、生前父が駐車場経営していたが廃業して空き地になっている土地があるとします。固定資産税課税明細に記載の地目(ちもく)は「雑種地」となっていますが、相続税申告においてどのように評価するのでしょうか。また、今後そこに住宅を建てることができるのでしょうか。聞きなれない雑種地に関するこうした疑問について、税理士がわかりやすく解説します。
父が亡くなり土地を相続することに。相続するその土地のなかに、生前父が駐車場経営していたが廃業して空き地になっている土地があるとします。固定資産税課税明細に記載の地目(ちもく)は「雑種地」となっていますが、相続税申告においてどのように評価するのでしょうか。また、今後そこに住宅を建てることができるのでしょうか。聞きなれない雑種地に関するこうした疑問について、税理士がわかりやすく解説します。
目次
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相続税申告における雑種地の評価方法について解説する前に、そもそも雑種地とはどんな土地のことをいうのかについて解説します。
相続税申告において相続した土地を評価するには、基本的には国税庁作成のルールブックである「財産評価基本通達」を用います。この財産評価基本通達では土地を九つの地目別に評価することと定めており、そのなかの一つに雑種地が定められています。相続税申告における土地の地目とは、被相続人が死亡した日の現況地目をいい、実際の使われ方から判断しますが、雑種地とは、宅地、田、畑、山林等の他のどの地目にも該当しないものをいいます。また、この現況地目は登記されたときの地目と完全に一致するものではありません。
相続税申告における雑種地と不動産登記における地目との比較表は以下のとおりです。相続税申告における雑種地のほうが不動産登記における雑種地よりもその範囲が広くなっています。
相続税申告における雑種地と不動産登記における地目の比較表
上記の表からもわかるとおり、相続税申告における雑種地は非常に多岐にわたります。実務上、登場頻度の高い雑種地の具体例としては、駐車場、駐輪場、資材置場、テニスコートの敷地などが挙げられます。
財産評価基本通達では、雑種地は原則としてその利用の単位となっている一団の雑種地ごとに評価することとされています。そして、具体的な雑種地の評価方法として、次の表で示すように二つの方法が定められています。同時に、倍率方式で評価できる地域は全国でも非常に限られており、実務上ほとんどの雑種地は近傍地比準方式で評価されることとなります。
財産評価基本通達が定める雑種地の評価方法
近傍地比準方式による場合、評価する雑種地が市街化区域に存する場合と市街化調整区域に存する場合では評価方法が異なります。
市街化区域における雑種地の周辺土地の利用状況としては宅地が多いので、隣接地とも呼ばれる近傍宅地の価額から比準して雑種地を評価することが一般的といえます。
具体的には、まずStep1として近傍宅地の評価額を求めます。近傍宅地が路線価地域の場合には相続税路線価を基に評価します。近傍宅地が倍率地域にある場合には相続税路線価ではなく、固定資産税路線価に宅地の評価倍率(1.1倍が多い)を乗じた価額を基に評価します。
なお、固定資産税路線価が付されていない場合には、近傍宅地の1㎡あたりの固定資産税評価額を市役所の固定資産税課等に問い合わせて確認することとなります。この際、固定資産税課税明細に記載の雑種地の固定資産税評価額に宅地の評価倍率(1.1倍が多い)を乗じて雑種地の評価額としてしまうミスが多いので注意が必要です。
次にStep2としてStep1で求めた近傍宅地の評価額から宅地造成費をマイナスすることで雑種地の評価額を求めます。雑種地に宅地造成費を投下することで宅地にすることができるので、宅地の評価額から宅地造成費をマイナスすれば雑種地の評価額が求められるというわけです。ただし、評価する雑種地が駐車場や資材置場等で特に造成が不要な場合にはStep2は不要となります。
市街化調整区域は、原則として宅地化を抑制する地域です。そのため、評価する雑種地の周辺土地の利用状況として宅地の場合もあれば、農地等の場合もあります。
周辺土地の使用状況から近傍宅地の価額から比準して雑種地を評価すると判断した場合には、上記市街化区域の雑種地と同様にStep1で近傍宅地の評価額を求めますが、Step2が市街化区域の雑種地と異なる部分があります。具体的には、市街化調整区域における建物の建築制限に伴う減価を評価に織り込むために建築制限の程度に応じたしんしゃく割合を乗じることとされています。
建築制限に基づくしんしゃく割合については、以下のとおり、50%、30%、0%の3パターンがあります。これらのうちどのしんしゃく割合を用いるかは、状況に応じます。評価する雑種地の周辺の土地利用状況を実際に現地に赴き観察し、かつ市町村の開発指導課等の部署に赴き建物建築が可能か否かを確認し、可能な場合は用途制限があるか等をヒアリングして判断することになります。
また、周辺土地の使用状況から近傍農地等の価額から比準して雑種地を評価すると判断した場合には、まずStep1として、農地等の評価額を財産評価基本通達に基づき求めます。次にStep2としてStep1で求めた農地等の評価額に造成費をプラスすることで雑種地の評価額を求めます。
以上、雑種地の評価方法について解説しましたが、宅地比準か農地等比準かという周辺土地の利用状況の判断、市街化調整区域の場合の建築制限に基づくしんしゃく割合の判定等、雑種地の評価は相続税の土地評価の中でも難易度が非常に高いです。したがって、相続税申告が必要で、相続財産に市街化調整区域の雑種地が含まれているような場合には特に相続税申告に強い税理士に依頼したほうが良いでしょう。
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相続の相談が出来る税理士を探す雑種地に住宅が建てられるかどうかは都市計画法や建築基準法等の各種法規制をクリアする必要があります。市街化区域の雑種地の場合は、接道状況や間口、奥行、形状などにもよりますが住宅を建てるハードルは市街化区域の雑種地よりも低いといえます。
市街化調整区域の雑種地に建物を建てるには、図書館や公民館等の建築許可を要しないものを除き、原則として都道府県知事の許可を受ける必要があります。許可基準としては都市計画法34条の各号や各自治体の条例の要件をクリアする必要があります。建物が建てられる場合でも、その用途制限があり、住宅は建てられない場合もあります。
市街化区域であれ市街化調整区域であれ、実際に住宅を建てられるか否かを検討する際にはまず建物建築を依頼する予定の不動産業者に確認するのが賢明です。
(記事は2021年4月1日時点の情報に基づいています)
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