目次

  1. 1. 相続開始後に受け取る入院給付金とは
    1. 1-1. 入院給付金とは
    2. 1-2. 死亡保険金と税務上の取り扱いが異なる
    3. 1-3. 「誰が受取人か」によって税金が変わる
  2. 2. 入院給付金の受取人が“被相続人”の場合
    1. 2-1. 「受取人=被相続人」の入院給付金は相続税の対象
    2. 2-2. 被相続人の準確定申告ではここに注意
  3. 3. 入院給付金の受取人が“被相続人以外”の場合
  4. 4. 死亡保険金と入院給付金の違いは
    1. 4-1. 死亡保険金と入院給付金は間違えやすい
    2. 4-2. 死亡保険金とは
    3. 4-3. 入院給付金との違い
  5. 5. 所得税での注意点
  6. 6. まとめ|不明点は税理士に相談を

「相続会議」の税理士検索サービス

入院給付金は、医療保険の基本的な保障の1つで、怪我や病気によって入院した場合に保険会社から支払われるお金のことをいいます。「1日あたり1万円」など、入院日数に応じて支払われる契約が一般的です。

相続が発生する際は、一定の入院期間を経てから死亡したケースが少なくありません。このような場合には、入院給付金と死亡保険金が同時期に入金されることも多いといえます。しかし、この2つは税務上の取り扱いが異なるため、注意が必要です。

税務上、入院給付金の取り扱いは、契約上の受取人が「被相続人」の場合と「被相続人以外(相続人など)」の場合で異なります。

入院給付金の受取人が「被相続人」である場合、そのお金は本来、被相続人が受け取るべきものと考えます。
そのため、仮に相続発生後に相続人の誰かが保険会社へ請求し、受け取ったとしても、あくまでも「亡くなった被相続人の代わりに入院給付金を預かったに過ぎない」とみなされるのです。
なお、ここでの受取人は「保険会社へ請求した人」や「実際に入院給付金を受け取った人」ではなく、あくまでも保険契約において設定された受取人を指しますのでご注意ください。
相続税法上、契約上の受取人が被相続人の場合には、入院給付金は相続財産として扱われ、遺産分割の対象となります。
なお、後述する「みなし相続財産」として非課税枠が設けられている死亡保険金とは異なり、入院給付金に相続税の非課税枠はありません。

相続が発生した場合には、相続税の申告だけでなく、その年の1月1日から相続発生日までの所得について、準確定申告を行います。

身体の傷害に基因して支払われるものについては、所得税では非課税とされていますので、入院給付金に関して所得税が課されることはありません。
ただし、準確定申告にて医療費控除の適用を受ける場合には注意が必要です。入院給付金として受け取る額は、医療費に「補填される金額」として、対応する入院費用から差し引いて医療費控除額を計算しなければなりません。

税理士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が
    得意な税理士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

相続の相談が出来る税理士を探す

被相続人の配偶者や子など、入院給付金の受取人が「被相続人以外」とされている場合、仮に相続発生後に入金されたとしても相続税の課税対象とはなりません。
これは、入院給付金が「死亡」に基因して支払われるものではなく、あくまでも「入院」によって支払われる受取人固有の財産であるためです。

相続発生時には、同一の保険会社から「死亡保険金」と「入院給付金」が合算されて支払われることも多いため、これらを混同し、まとめて死亡保険金として処理してしまう場合も少なくありません。
しかし、死亡保険金と入院給付金は税務上の取り扱いが異なるため、両者を正しく区分することが必要です。

被保険者の「死亡」によって支払われる死亡保険金については、相続税法上は「みなし相続財産」として取り扱われます。「みなし相続財産」とは、被相続人が有していた財産ではないものの、死亡によって発生する財産のことです。
死亡保険金には、以下の算式の通り独自の非課税枠が設けられています。

死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

たとえば法定相続人が3名の場合、500万円×3名=1500万円までであれば、死亡保険金は非課税となります。

先述の通り、入院給付金には死亡保険金のような非課税枠が設けられていません。
そのため、入院給付金の受取人が被相続人の場合、誤って死亡保険金と合算して非課税枠に当てはめてしまうと、納めるべき相続税額が過少になってしまう恐れがあります。

死亡保険金は被保険者の「死亡」に基因して支払われるものであるため、死亡保険金の受取人が被保険者本人となることはありません。
それに対し、入院給付金は「入院の事実」に基づいて支払われます。治療後に無事退院したケースでも支給され、被保険者の「死亡」は条件には当たらないことになります。

先述の通り、入院給付金について所得税では非課税となります。しかし医療費控除の際には、支払った医療費を補填する金額として、医療費控除額から差し引く必要があるのです。
契約上の受取人が「被相続人」の場合には準確定申告、「被相続人以外」の場合には通常の確定申告の際に、医療費控除の計算に反映することとなります。

故人の死後に支払われる入院給付金は死亡保険金と混同されがちですが、税務上しっかりと区分し、適切な処理を行うことが求められます。
死亡保険金との違いや、契約における受取人の違いによる税務上の取り扱いを理解し、正しい手続きを行いましょう。また、ご不明点がある場合には税理士などの専門家にご相談ください。

(記事は5月1日の情報に基づいています)

「相続会議」の税理士検索サービス