目次

  1. 1. 相続放棄が受理される二つの要件
    1. 1-1. 熟慮期間内に申述した
    2. 1-2. 法定単純承認が成立していない
  2. 2. 熟慮期間を過ぎてしまった
    1. 2-1. 熟慮期間を延ばしてもらう方法
    2. 2-2. 例外的に相続開始後3カ月を過ぎても受理されるケース
  3. 3. 法定単純承認が成立した
  4. 4. 本人の意思に基づかない、無権利者による相続放棄
  5. 5. 書類不備があって期間を過ぎてしまった
  6. 6. 相続放棄が受理されないときは「即時抗告」を申し立てる
  7. 7. まとめ

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相続放棄するかどうかは、相続人が自由意思で決定できます。
以下の二つの要件さえ満たしていれば基本的に受理されると考えましょう。

相続放棄には「期限」があります。具体的には「自分のために相続があったことを知ってから3カ月以内」に家庭裁判所で相続放棄の申述をしなければなりません。この期間を「熟慮期間」といいます。相続放棄は熟慮期間内に申述しなければならず、期限を過ぎると基本的に受理されなくなります。必ず熟慮期間内に申し立てましょう。

遺産を使ったり処分したりすると「法定単純承認」が成立してしまいます。そうなったら相続放棄は受理してもらえません。相続放棄したいなら、法定単純承認を成立させる行為をしてはなりません。

以下で相続放棄を受理してもらえない「よくあるパターン」をご紹介します。

相続放棄は熟慮期間を過ぎると受理されません。
熟慮期間は、通常「相続開始(被相続人の死亡)を知ってから3カ月」として計算します。
ただし次順位の相続人の場合「先順位の相続人による相続放棄を知ってから3カ月」となります。

相続人が海外居住、遺産内容が複雑などの事情があってどうしても熟慮期間内に相続放棄の申述をするのが難しい場合、熟慮期間を延ばしてもらえる可能性があります。ただしそのためには家庭裁判所で「熟慮期間伸長の申立て」をして延長を認めてもらわねばなりません。また熟慮期間伸長の申立は「熟慮期間内」に行わねばならないので注意しましょう。期間内であれば、再度の熟慮期間伸長の申立ても可能です。

例外的に相続開始を知ってから3カ月を過ぎても相続放棄が受理されるケースもあります。
それは相続人が「遺産は存在しない」と信じていてそのことに過失がない場合です。

例えば、被相続人の生前、相続人との関係が疎遠で被相続人にこれといった財産がなく、相続人が「遺産はない」と信じ込んでも仕方がない状況であれば、3カ月を過ぎても相続放棄が認められやすくなるでしょう。

こういった例外はありますが基本的には「相続開始を知ってから3カ月以内」に相続放棄しなければならないので、受理してもらいたければ早めに手続きを行ってください。

相続放棄に悩んだら、判断を間違える前に、弁護士への相談も検討してみてください。

熟慮期間を過ぎなくても「法定単純承認」が成立すると相続放棄は受理してもらえません。法定単純承認とは、当然に「単純承認」が成立してしまうことです。単純承認すると条件をつけずに資産や負債を相続するので、借金が遺された場合などにもすべて相続してしまいます。

法定単純承認が成立するのは、以下のような場合です。

  • 預貯金の払い戻しや名義変更、解約
  • 不動産や株式の名義変更
  • 株主総会に参加、議決権を行使
  • 賃料振込口座を相続人名義に変更
  • 動産の処分
  • 被相続人名義の口座から被相続人の借金を返済

相続放棄したいなら上記のような行為をしてしまわないよう、くれぐれも注意してください。いったん相続放棄が受理されても、その後法定単純承認が成立すると相続放棄を取り消されてしまいます。

なお相続人が受取人に指定されている「死亡保険金」を受け取っても法定単純承認は成立しません。保険金受取人に指定されているなら遠慮なく保険会社へ申請しましょう。

【関連】相続放棄の前後にしてはいけないこと 遺品整理はダメ?葬式代は? 注意点を解説

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相続放棄は放棄者本人の意思にもとづいて行われなければなりません。
第三者が勝手に申述書を偽造して家庭裁判所に提出しても、本人の意思によるものではないと判明すれば受理されません。
本人が提出したものであっても「詐欺」や「脅迫」によって意思に反して申述されたものであれば無効となります。

また親が子どもの代理人(親権者)として相続放棄する場合にも要注意です。
親権者が相続して子どものみ相続放棄する場合、親と子どもの利益が相反するので親は子どもの代理で相続放棄できません。「特別代理人」を選任して特別代理人が相続放棄しない限り、相続放棄は受理されないと考えましょう。

相続放棄の申述をしたとき、書類不備があると受理されません。家庭裁判所から「補正(修正や追加提出)」を求められます。
すぐに補正すれば相続放棄を受けつけてもらえますが、対応が遅れて熟慮期間を過ぎてしまったら法定単純承認が成立して相続放棄を受理してもらえなくなってしまいます。
相続放棄したいなら、家庭裁判所からの補正の要請には速やかに対処しましょう。

もしも相続放棄を受理してもらなかったらどうすればよいのでしょうか?この場合、高等裁判所へ「即時抗告」の申立をして争う方法があります。家庭裁判所の判断が間違っていたと認定されれば、高等裁判所で相続放棄が認められる可能性があります。

ただし即時抗告を認めてもらうには法的根拠が必須です。本人が「借金を相続するのは困ります」などと窮状を訴えても聞いてもらえません。家庭裁判所の判断が法的に間違っていたことを的確に主張する必要があります。素人が手続きを行っても判断が覆る可能性は低いので、必ず弁護士に手続きを依頼しましょう。

また即時抗告の申立は「相続放棄不受理の決定通知を受けてから2週間以内」にしなければならないので、急いで弁護士に相談してください。

借金を相続したくない場合、相続放棄が受理されなければ大変な不利益を受ける可能性があります。自己判断で対応すると法定単純承認が成立して相続放棄できなくなるケースも少なくありません。熟慮期間内に確実に受理してもらうため、早めに弁護士に相談して万全の体制で手続きを進めましょう。

(記事は2021年5月1日現在の情報に基づいています)

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