目次

  1. 1. 自筆証書遺言の代筆は無効になる
    1. 1-1. 遺言そのものは手書きでないといけない
    2. 1-2. 添え手による補助を受けて書いた遺言も原則として無効に
  2. 2. 手書きが難しい場合は公正証書遺言を
    1. 2-1. 公正証書遺言とは
    2. 2-2. 公正証書遺言を作成する流れ・費用
    3. 2-3. 公正証書遺言のメリット・デメリット
  3. 3. 緊急の場合に利用できる特別方式の遺言
    1. 3-1. 特別方式の遺言とは
    2. 3-2. 死亡危急者遺言とは?
    3. 3-3. 伝染病隔離者遺言とは?
    4. 3-4. 特別方式の遺言の注意点
  4. 4. 自分で遺言を書けない場合の注意点
    1. 4-1. どの方式の遺言であっても判断能力は不可欠
    2. 4-2. 公正証書遺言を残す場合
  5. 5. 遺言書作成を思い立ったら専門家に相談を

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自筆証書遺言とは、遺言者が手書きで行う遺言です。そのため、代筆で作成した遺言は、遺言者の口述をいかに正確に筆記したとしても無効になってしまいます。
なお、遺言書に添付する財産目録だけは、パソコンで作成しても良いですし、遺言者以外の人が作成しても構いません。

病気その他の原因で手が震えるなどして文字を書くことが困難な場合、文字を書くために他人に手を添えてもらうことが必要なこともあるでしょう。しかし、他人の添え手による補助を受けて書いた遺言は、裁判例で、原則として無効と判断されています。
同裁判例は、例外的に有効となる要件として①遺言者本人が遺言書作成時に自署能力を有し、②他人の添え手が、単に始筆もしくは改行にあたり、もしくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、または遺言者の手の動きが遺言者の望みに任されており、添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ③添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを挙げています。
この裁判例を踏まえると、他人が添え手をする場合には、遺言者の手を文頭などの適切な場所に導く、または軽く支える程度にとどめるべきということです。しかし、添え手を要するような場合には、遺言の有効性に疑いを残さないように公正証書遺言を作成するほうが良いでしょう。

手が震えるなどして、手書きで遺言書を作成することが難しい場合は、公正証書遺言が最も有効な方法です。
公正証書遺言とは、公証人が遺言者から聞いた内容を文章にまとめ、公正証書として作成する遺言です。公証人が文章にまとめてくれるので、遺言書が手書きをする必要はありません。

公証役場に公正証書遺言の作成を依頼し、公証人との間で遺言書の内容を調整していきます。遺言書の内容が確定したら、公証役場に行き公正証書遺言を作成します。
なお、遺言者が寝たきりや入院中などで公証役場に行けない場合には、公証人に自宅や病院まで出張してもらうこともできます。
費用(手数料)は、日本公証人連合会のホームページで案内されているので、そちらをご覧ください。

公正証書遺言のメリットは、公証人が関与して作成するため遺言が形式不備で無効になる可能性が極めて低いことや、原本が公証役場に保管されるため遺言書の紛失や隠匿、改ざん等のおそれがないことなどです。
一方、公正証書遺言のデメリットは、2人以上の証人の立会いが必要であることや費用(手数料)がかかること、第三者が関与するため気軽に作成しにくいことなどが挙げられます。

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特別方式の遺言とは、普通方式の遺言(自筆証書遺言や公正証書遺言など)によることが困難または不可能な事情がある場合に限って許される、簡易な方式の遺言です。
いくつか種類がありますが、ここでは、死亡危急者遺言と伝染病隔離者遺言を紹介します。いずれの場合も、遺言者が手書きで遺言を作成する必要はありません。

死亡危急者遺言とは、遺言者が死亡の危急に迫られた場合に許される遺言です。このような場合には、通常の遺言の方式に従うことは困難なため、口頭による遺言が許されています。要件は下記のとおりです。

  • 遺言者が死亡の危急に迫られていること
  • 証人3人以上の立会いがあること
  • 遺言者が証人の1人に遺言の趣旨を口授すること
  • 口授を受けた証人が、これを筆記すること
  • 遺言者及び他の証人に読み聞かせ、または閲覧させること
  • 各証人が、筆記が正確であることを承認した後、各自署名押印すること

死亡危急者遺言は、遺言の日から20日以内に家庭裁判所に対して確認請求をしなければなりません。この確認手続きで、家庭裁判所は遺言が遺言者の真意によるものかどうかの判断をします。

伝染病を理由とする行政処分に基づき隔離された場合に許される遺言です。自署である必要はありませんが、口頭ではできません。現在のコロナ禍において、利用が考えられる遺言の一つです。要件は下記のとおりです。

  • 伝染病を理由とする行政処分によって交通を断たれた場所にいること
  • 警察官1人及び証人1人の立会いがあること

特別方式の遺言は、遺言者が普通方式の遺言をすることができるようになった時から6カ月間生存するときは効力を生じないとされています。
そのため、特別方式の遺言をしていても、その後、自筆証書遺言や公正証書遺言の作成が可能になった場合には、速やかにこれらの遺言をするようにしましょう。

遺言をするにあたっては、遺言者に判断能力があることは不可欠です。認知症などが理由で、遺言者に判断能力がない場合には有効な遺言をすることはできません。
ただし、認知症と診断されたからといって、直ちに遺言をすることができなくなるわけではありません。認知症といっても、それぞれ症状の内容や程度は異なるためです。例えば、成年被後見人であっても、物事を理解し自ら有効な意思表示ができる能力を一時回復した場合には、医師2人以上の立会いのもと、遺言をすることができます。

上記のとおり手書きが難しい場合は、基本的には、公正証書遺言を残しましょう。そして、作成後は子どもなどの将来の相続人に対して、内容まで知らせないにしても、せめて公正証書遺言を作成した事実は知らせておくと良いでしょう。

せっかく遺言書を作成するのであれば、多少の費用はかかっても、自分の意思を確実に実現できる遺言書を作成することを第一に考えましょう。遺言書の作成を思い立ったら一度、弁護士などの専門家に相談してみてください。

(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)

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