目次

  1. 1. 気軽に書ける自筆証書遺言、破棄のリスクも
  2. 2. 法律のプロが作る公正証書遺言は手数料が必要
  3. 3. 自筆証書遺言はトラブルのリスクも
  4. 4. 法務局による自筆証書遺言保管制度

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遺言書のうち、財産目録以外をすべて手書きで記したのが「自筆証書遺言」です。そのメリットとしては、
・いつでも思いついたときに書ける
・どこででも書ける
・手数料がかからない
・修正や書き直しが簡単にできる

などです。気軽に書けるのが何よりのメリットです。

一方、デメリットは
・財産目録以外はすべて手書きしなければならない
・日付、署名、捺印がないと無効になる
・紛失したり、書いても見つけてもらえなかったりする可能性がある
・変造、偽造や、破棄されるリスクがある
・遺言者が亡くなったとき、家庭裁判所で「検認」を受ける必要がある

といった点です。

「公正証書遺言」は通常、公証役場へ出向いて公証人に作成してもらいます。
そのメリットとデメリットは、自筆証書遺言の反対といえます。

メリットは、
・形式上の不備で無効になることがない
・法律のプロの公証人に作成してもらえるので、書き間違える心配がない
・公証役場で保管されるので、紛失、変造、偽造、破棄などのリスクがない
・家庭裁判所の「検認」が不要で、すぐに遺産分割ができる

などです。公正証書遺言なら、安全・確実に遺言を残せます。

一方、デメリットは次のような点です。

・公証役場へ行かなければならない。あるいは、公証人に指定の場所に来てもらわなければならない
・作成するのに手間がかかる
・証人が2人必要
・手数料がかかる

このように、公正証書遺言は手間とお金がかかるので気軽に作成することはできませんが、その分、遺言の内容を真剣に考えることになるでしょう。

高齢化が進んで認知症の人が増加したことで、遺言書の作成時期が問題になるケースが増えています。法的に有効な遺言書は、判断能力がある人が書いたものでなければなりません。書かれたときに遺言者が認知症と診断されていると、遺言は無効になってしまうのです。

自筆証書遺言の場合、その内容が自分にとって不利だった相続人が、「遺言書を書いたとき遺言者はすでに認知症だった」といって遺言書の無効を訴え、他の相続人とトラブルになるケースがあります。その点、公正証書遺言は遺言者に判断能力があることを証人が確認するので、こうした心配はありません。

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民法の改正によって、自筆証書遺言は2019年の1月から「自筆」に関する要件が緩和されて、財産目録については不動産登記事項証明書や預金通帳の表紙の写しでも認められることになりました。

2020年7月には法務局が自筆証書遺言を保管する制度がスタートしました。この制度を利用すれば偽造、変造、紛失のリスクがなくなり、家庭裁判所の検認も不要になります。こうした改正によって、これまでと比べ、自筆証書遺言が使いやすくなります。

法務局の自筆証書遺言書保管制度については「自筆証書遺言書の法務局保管とは」を参照。

相続財産の種類があまり多くない場合や、相続人が少なく遺産分割でトラブルになる可能性が低い場合は、自筆証書遺言を法務局にあずかってもらう方法でもよいかもしれません。ただし、自分だけの判断で遺言書を書くと、その内容によっては、かえってトラブルになることもあります。自筆証書遺言であっても、相続に詳しい専門家のアドバイスを受けるのが望ましいといえます。

相続財産の種類や額が多い人や相続人が多い人のほか、仲の悪い相続人がいたり離婚、再婚、養子などで家族関係が複雑だったりするケースでは、公正証書遺言のほうが安心といえるでしょう。

(記事は2022年9月1日時点の情報に基づいています)

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