目次

  1. 1. 自宅不動産がトラブルの原因になる
    1. 1-1. ケース1:子が相続して住む
    2. 1-2. ケース2:誰も住まない
    3. 1-3. ケース3:共有名義にする
  2. 2. 自宅不動産に関する選択肢
    1. 2-1. 住み続ける
    2. 2-2. 活用する
    3. 2-3. 売却する
    4. 2-4. 老後資金に充てる
  3. 3. 不動産の終活に必要な手続き
    1. 3-1. 不動産の評価額を調べる
    2. 3-2. 名義の変更
    3. 3-3. 境界の特定・測量
  4. 4. 不動産の終活でしておくべきこと
    1. 4-1. 自分の希望をはっきりさせる
    2. 4-2. 相続人の意思を確認する
    3. 4-3. 活用や売却を考える
    4. 4-4. 税理士に相談する
    5. 4-5. 遺言書を書く
  5. 5. まとめ

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相続の際、自宅不動産についてどんなトラブルが起こりうるのか、よくある3つのケースを見てみましょう。

親が亡くなったとき、同居していた子がその自宅を相続する、あるいは別居していた子が相続してその自宅に住む、というケースです。自宅を相続した子Aのほかに、相続しなかった子Bがいた場合、遺産を均等に分割するとしたら、子Bには自宅不動産の評価額と同程度の金融資産を相続させなければなりません。

遺産の中にそれだけの金融資産があればよいのですが、金融資産が自宅不動産の評価額より少ないと均等な遺産分割ができません。Bがどうしても均等な分割を望むなら自宅不動産を売却して現金化しAとBで分けることが考えられますが、そうするとAは住まいを失ってしまいます。

子はすでにマイホームを取得していて、遺産として残った家に住む人がおらず空き家になってしまうケースは多く、社会問題となっています。空き家でも土地・建物の固定資産税を負担しなければならず、建物の維持にもお金がかかります。ゴミの不法投棄など空き家が防犯・防災面でのトラブルにつながることもあり、空き家のまま放置しておくのは望ましくありません。

遺産となった自宅に子が住む場合も住まない場合も、均等に遺産分割するために自宅不動産の所有権を共有することはできますが、共有すると共有者の一人が単独でその不動産を貸したり売ったりできにくくなります。また、共有者が亡くなったときその相続人が所有権を相続すると共有者が次第に増え、利用・処分がますますしづらくなります。実際に、共有者が多すぎて処分できなくなっている不動産は数多くあります。

こうしたトラブルを避けるためには、事前に自宅不動産をどうするかを考えておくことが大切です。選択肢としては次のようなものがあります。

相続人が住むのであれば空き家になる心配はありませんが、リフォームや二世帯住宅への建て替えが必要になるかもしれません。また、自宅不動産を相続しない相続人がいる場合は、金融資産や生命保険などを利用した遺産分割対策も考えなければなりません。

立地条件がよければ、賃貸住宅などに建て替えておくことが考えられます。それによって賃貸料が入ってくれば老後の生活費として使うこともできます。ただし、建て替えの費用をどう手当てするかが課題になります。相続人が複数いる場合は、その賃貸住宅を含めた遺産分割対策も必要です。

誰も住まないことがわかっているなら、生前に売却して利便性の高いマンション、高齢者向けの住宅、有料老人ホームなどに住み替えることが考えられます。亡くなったあとに売却して、売却代金を相続人で分割する方法もありますが、将来の不動産市況によっては売却価格が想定より低くなったり、買い手がいなくて売るに売れない状況になってしまったりする可能性があります。

自宅不動産を相続させない、または相続させる必要がないのであれば、リバースモーゲージを利用して、自宅に住み続けながら老後資金を確保するために活用するのも選択肢となります(参考記事:「老後資金の選択肢リバースモーゲージ 生活や相続に活用する具体例や注意点を解説」)。高齢者向け住宅などへの転居までのつなぎとして、リースバックを利用することも考えられます。(参考記事:「リースバックの活用法 マイホームの売却資金を得た後も住み続けられる」

自宅不動産をどうするのかを考えるとき、あるいは実際に相続・売却するにあたってしておくべき実務的な手続きもあります。

相続税がかかるかどうかを確認したり、遺産をどのように分けるかを考えたりするには、自宅不動産の評価額を知る必要があります。
土地の相続税評価額は、路線価に敷地面積を掛けたもの(それに加算・補正がある場合がある)で、路線価は国税庁のサイトで調べられます。正確な相続税評価額を知りたい場合は、相続に詳しい税理士に依頼しましょう。売却する場合にいくらくらいで売れるかは、国土交通省のサイトなどで近隣の土地の取引価格を調べられます。個別の物件価格は不動産会社に査定してもらいます。

親から相続した土地の場合、土地の名義が亡くなった親などのままになっているケースがあるので確認しておくことが大切です。もし名義変更がされていなかったら、所有権移転登記をして現在の所有者の名義にしておきます。

代々相続してきた土地や古い住宅地にある土地などは、隣地との境界があいまいだったり、不動産の面積が登記簿の記載と違っていたりすることがあるので、土地家屋調査士に依頼して測量してもらい、境界や面積を確定しておきます。

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まず、自分自身が自宅不動産をどうしたいのかを考えましょう。例えば、自分が亡くなったあとも配偶者が住み続け配偶者亡きあとは子が相続して住んでほしい、あるいは一定の年齢になったら売却して有料老人ホームへ転居したいなど、具体的なプランを考えます。

子と同居していない場合は、子が自宅不動産を相続したいかどうかをきいておきましょう。相続するかしないかによって、相続税対策や遺産分割対策が違ってきます。配偶者や子がいない場合は、相続人となる兄弟姉妹や甥・姪などの意思を確認する必要があります。

自宅不動産を誰も相続しない、あるいは誰にも相続させないのであれば、売却や活用の仕方を考えます。そのタイミングについても検討しましょう。

自宅不動産の相続にあたって相続税がかかりそうであれば、相続に詳しい税理士に相談して相続税対策を考えておきます。

自分亡きあとに自宅不動産をどうするのかを決めたら、その内容を記した遺言書を作成します。

愛着のある自宅も、何もしないまま相続を迎えると子どもどうしの争いにつながったり、放置されて荒れてしまったりします。そうならないためには早めの準備が大切です。自分や配偶者の希望、子の意思などをしっかり確認して、ベストな選択をしたいものです。

(記事は2021年3月1日時点の情報に基づいています)

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