目次

  1. 1. 自宅を売却した場合にかかる税金
  2. 2. 親の生前に自宅を売却した場合に使える所得税の特例
    1. 2-1. 3000万円の特別控除の特例
    2. 2-2. 10年超所有していれば「軽減税率の特例」も併用可能
    3. 2-3. 特定のマイホームの買換えの特例
  3. 3. 親の死後、実家を相続する場合の相続税の特例
  4. 4. 親の死後、実家を相続してから売却する場合の所得税の特例
    1. 4-1. 空き家になってからでも使える「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」
    2. 4-2. 相続から3年10カ月以内に使える「取得費加算の特例」
  5. 5. まとめ 条件によって変わるタイミングの見極めを

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自宅に限らず、不動産を売却した場合には、譲渡所得(売却益)に対して譲渡所得税(所得税・住民税)がかかります。譲渡所得は、不動産の売却代金から、その不動産の取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。仮に、売却代金より、取得費と譲渡費用のほうが高く、譲渡所得がマイナスとなる場合には、譲渡所得税はかかりません。
不動産の取得費とは、その不動産を買った時の購入代金や購入手数料、その後のリフォーム費用などの合計額のことを言いますが、建物の場合には、減価償却相当額を差し引いて計算します。不動産を買った時の購入代金が分からなければ、売却代金の5%を取得費とすることができます。

また、譲渡所得を計算する際の所得税・住民税の税率は、その不動産の所有期間の長短によって異なります。売却した年の1月1日において所有期間が5年を超えている場合には、譲渡所得に対して20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税率、所有期間が5年以下の場合には39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)となります。

自宅を売却した場合には、譲渡所得から最高3000万円まで控除が受けられる特例があり、3000万円の特別控除の特例といいます。
(例)40年前に購入した土地・建物の売却代金が4000万円、土地・建物の取得費不明、譲渡費用が150万円のケース
4000万円-(4000万円×5%+150万円)-3000万円=650万円
この650万円に対して、譲渡所得税がかかります。

あくまでも特例の対象となるのは、自宅として使っていた家屋であって別荘には使えません。自宅であれば、仮に引っ越した後に売却する場合であっても、引っ越してから3年後の年末までの売却であれば、この特例が使えます。所有期間の長短にかかわらず使うことができる特例ですが、この特例を受けることだけを目的に入居した場合や仮住まい、一時的な目的で入居した家屋には、この特例は使えません。
なお、この特例は、その家屋に住んでいる人だけが使える特例ですので、子供が離れて暮らしている場合には、相続後に子供が売却しても使うことはできません。この特例を使うためには、生前に親が売却する必要があります。しかし、生前に親が自宅を売却した場合、売却代金は現預金などとして親の相続財産となります。現預金よりも、不動産としてそのまま自宅を所有されているほうが、相続財産の評価額が低くなるケースも多いので、ご注意ください。

自宅を売却した場合、要件を満たせば、通常の税率よりも低い税率で譲渡所得税を計算することができます。軽減税率の特例といい、上記で説明した3000万円の特別控除の特例と併用することができます。3000万円の特別控除の特例は、所有期間の長短にかかわらず使うことができましたが、軽減税率の特例は、売却した年の1月1日に所有期間が10年を超えていること、という要件が加わります。
税率は、譲渡所得6000万円以下の部分について、14.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%)、6000万円を超える部分について、通常の税率20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)となります。

自宅を売却し、代わりの自宅に買い換えた場合には、元の自宅を売却したときではなく、買い換え後の自宅を将来売却するときまで、譲渡所得に対する税金が繰り延べられるという特例があります(非課税となるわけではありません)。
主な注意点は、元の自宅の売却代金が1億円以下であること、居住期間が10年以上かつ所有期間が10年を超えていること、上記の3000万円の特別控除や軽減税率の特例との併用はできないということです。

自宅を売却した場合の所得税の特例を3つ紹介しましたが、いずれも細かい要件があります。どれを使ったほうが良いかも含めて、実際に使う際にはご確認ください。

ここでは、相続税の話をします。親が自宅を所有したまま亡くなると、その自宅は相続財産となりますが、自宅の敷地については相続税評価額を下げられる特例があります。小規模宅地等の評価減の特例といい、配偶者、同居親族、又は賃貸に住んでいる別居親族が自宅を相続し、一定の要件を満たした場合、自宅の敷地のうち330㎡までの部分について、相続税評価額を80%減額できるという制度です。

例えば、賃貸に住んでいる子供は別居親族となるため、
①亡くなった親に配偶者も同居親族もいないこと、②相続開始前3年以内に、自分やその配偶者、3親等内の親族の家屋に居住していたことがないこと、③相続税の申告期限まで所有しつづけること、などを満たす必要があります。
生前に親が自宅を売却した場合、譲渡所得税の3000万円の特別控除の特例が使えますが、この小規模宅地等の評価減の特例が使えなくなるので、ご注意ください。

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親が亡くなった後に使える譲渡所得税の特例もあります。ひとり暮らしの親が亡くなり、空き家となった自宅を子供が売却する場合に、3000万円の特別控除と同様、譲渡所得から最高3000万円まで控除が受けられるという特例です。空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。この特例の対象となる自宅は、①昭和56年5月31日以前に建築されたこと、②マンションのような区分所有建物登記がされている建物でないこと、③相続開始の直前において亡くなった親以外に住んでいた人がいなかったこと、です。
これ以外にも、相続開始から3年後の年末までに売却すること、売買代金が1億円以下であること、建物を取り壊すか又は耐震リフォームをしてから売却することなどの要件がありますので、ご確認ください。

他にも相続した財産を売却した場合に使える特例があります。不動産に限らず、相続により取得した不動産や株式などの財産を売却した場合に、その不動産や株式などにかかった相続税を、売却した財産の取得費に加算することができるという特例です。その分、譲渡所得税が減額されることとなります。この特例を使うには、相続税の申告期限(原則、相続開始後10カ月)から3年以内に売却する必要があります。

実家の売却についての税金の話をしました。売却に良いタイミングは、子が持ち家かどうか、実家の築年数などにより異なります。また、相続後の売却には期限があり、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例は相続開始から3年後の年末まで、取得費加算の特例は相続税の申告期限から3年以内です。
一方、相続税のことを考えると、現預金より不動産のほうが一般的に相続税評価額が低く、小規模宅地等の評価減の特例が使えるなど、自宅を持っていたままのほうが有利なケースもあります。
一概にいつが一番良いということは言えませんが、使える特例の条件を比べて、それぞれにあったタイミングを見つけることが大切です。

(記事は2020年8月1日時点の情報に基づいています)

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